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望むはただ平穏なる日々  作者: 素人Lv1
学院 編
17/90

17 ギルド職員リューネの野望

「あーあ、もう。ノーラ姉に騙されたー」


 周囲に誰も居ない事を確認し、カウンターに突っ伏し嘆く女性がいた。

 名前は『リューネ・イルファス』

 冒険者ギルド『フェルディール支部』の職員だ。


「何が『ギルドの職員になれば良い男との出会いの毎日』よ。良い男なんてほとんど居ないじゃない」


 ギルドに勤めていた従姉妹のノーラが結婚した。

 相手は背が高く精悍な顔つきの30過ぎのAランクの冒険者だった。

 旦那を紹介された際に聞いた話では、出会ったのはギルドで、依頼の相談に乗ったり、武勇伝を聞いているうちに仲良くなり、Aランクに昇格した際にプロポーズされたらしい。

 満面の笑顔で惚気たノーラが言ったのが

「ギルドの職員になったら良い男と出会えるかもよ?」

 だった。

 微妙に言葉尻は違うが、実際に良い男を捕まえたノーラの言葉を信じギルドの職員になった。


「居るのは汗臭くて、小汚くて、ガサツで、デリカシーの無いマッチョ男ばっかりで、たまに居るカッコイイのは既にコブ付きだったり、パーティ内で出来てたりしてるし」


 実際はカッコイイと思える冒険者は少なくは無い。

 ただし、ほとんどはリューネの好みよりも年上なのだ。


「はー、良い男いないかなー」

 支部長にでも見つかれば「お前は何してるんだ?」と怒られそうだが、彼女の評判は高い。

 心中はともかく、彼女の仕事ぶりは真面目で有能。このギルドの看板娘とも言える。

 若く美人である彼女には、多くの冒険者からアプローチが有るのだが、完璧とも言えるブロックと営業トークでシャットアウトされているのだ。


 今もギルド内にいる数人の冒険者達がリューネに声をかけようと、互いを牽制し合っている。

 一人の冒険者が意を決し動こうとした、その時。


 ガシャッ


 建物のドアが開き誰かが入って来た。

 

 その人物を見てリューネの瞳が輝く。

(来たじゃない。カッコイイのが!

 初めて見る顔ね。新人かしら?これは私が面倒見なければ)


 その人物と目が合うと「どうかしましたか?」と小首を傾げ自分のカウンターへと誘導する。

 近づいてきた彼を観察すると、まだ10代半ばにも見えた。

(うーん、まだちょっと若いかな?でもうまく育てれば。グフフ)

 そんな心中を外に一切漏らすことなく、営業用ではない笑顔で

「おはようございます。今日はどんなご用件でしょうか?」

 お仕事にかかるのだった。



>サイド ヒロ


 結論から言えば「色気のないデート」にすらならなかった。


 あの後、正門で待つ俺の下に来たアリシアは

「すまない、実家から手紙が来ていて、直ぐに返事を出さなければならない

 申し訳ないが、先に行っていてくれ」

 との事で、結局一人でギルドに向かう事になった。

 

 まぁ、元々一人で行くつもりだったんだから良いんだ。

 寂しくなんかないんだからね。


 

 『盾と三本の剣』これがギルドの紋章だ。

 その紋章を掲げる建物。

「これがギルドか。さて、鬼が出るか蛇が出るか」

 

 ガチャッ

 

 扉を開き中に入ってみると、予想とは違いなんというか。

(田舎の役場みたいだな)

 ギルドといえば薄汚れた建物でゴツイオッサンが昼間から酒を飲んでいるイメージだったが、ここはそんな所ではなかった。

 内部はキレイでゴツイオッサンはいるが、酒は飲んでなさそうだ。


 これからどうしようかと見回していると、受付カウンター(?)の女性の一人と目が合う。

 『どうかしたの?』とでも言うかのように首を傾げている。

 (あの人に話してみるか)

 その受付カウンターに近づくと『椅子に座れ』と指し示される。

「おはようございます。今日はどんなご用件でしょうか?」

「ギルドに登録したいんですが」


「登録ですね。ギルドへの登録は初めてですか?」

「はい、初めてです」

「確認ですが、犯罪の前歴はありませんか?」

「ありません」

「失礼いたしました。登録料は銀貨10枚ですが、よろしいですか?」

「問題ありません」

「では、こちらの登録用紙にご記入下さい。代筆も承りますが?」

「大丈夫です」

 こっちの世界は識字率低めなんだよな。


「内容を確認させていただきます」

 登録用紙に内容を書き込み、お姉さんに渡す。

「問題ありません。ギルドへの登録ありがとうございます。ヒロ様」

 登録料の銀貨10枚を払う。


 ちなみにこの世界の通貨は銅貨、銀貨、金貨だ。

 銅貨100枚で銀貨。銀貨100枚で金貨になる。

 貨幣価値としては銀貨1枚で学院の食堂なら2食は食べられる。

 銀貨10枚は感覚的には15,000円ってところかな。


「ありがとうございます。ギルドカードを発行しますので、こちらに血を一滴垂らしていただけますか?」

 示された水晶球に血を一滴垂らすと、水晶球が淡く発光ししばらくすると光は消えた。


「これでギルドカードの発行は完了です」

 一枚のカードを渡される。

「このギルドカードはヒロ様が持たれた時だけ反応します」


 カードを見るとそこには

 『氏名 ヒロ

  個人ランク F

  パーティ    

  発行 フェルディール支部』

 と記載されていた。


「ギルドカードは公式な身分証明として使用可能です。

 専用の読み取り機にて様々な内容の表示が出来ます。

 初回は発行無料ですが、再発行には銀貨50枚が必要となりますので、お気をつけて下さい」

「分かりました。大事にします」


「では、依頼についてご説明しますが、必要ですか?」

 まぁ、必要だよな、面倒だろうが教えてもらおう。

「お願いします」

「かしこまりました。依頼は大別すると『常時』と『期限付き』に別れます。

 『常時』は常に依頼が出されていて基本的に失敗はありませんし、依頼の受諾処理もございません。

 依頼の達成条件を満たした場合に達成処理をしていただければ、依頼達成となります。

 『期限付き』は達成期限が存在し、期限内に達成処理がされない場合失敗とされます。

 また、受諾処理時に達成の可能性が低いと判断され受諾できない場合がありますのでご了承下さい」

「はい、分かりました」


「続いて、ランクについて説明いたします」

「宜しくお願いします」

「ヒロ様のランクは今『F』となっています。

 登録直後は皆このランクからとなります。

 依頼にもランクがあり、達成した依頼のランクや数、達成率などで判断され、

 時機を見てギルドから出される『昇格依頼』を達成する事で昇格となります」

「じゃあ、依頼をいくつ受けたとかじゃないんですね?」

「そうですね。同じ依頼を達成していても内容によっては昇格の時期は違ってきます」



 その後もしばらく説明を受け

「それではまず何か依頼を受けてみますか?」

「今日1日で終わりそうなものって在りますか?」

「はい、ありますよ。近くの森で『薬草の採取』『野うさぎの肉の調達』等がいいと思います。

 どちらも常時依頼なので、数が足りなくても、また後日に不足分を補えば達成となります」

「そうですか、やってみます。ちなみに薬草がどんな草なのか図鑑とかありますか?」

「はい、ありますよ。えーと、こちらです」

「あ~、結構似ているものも多いいですね」

「そうですね。初心者には見分けは難しいかもしれませんね。

 分からなかったら、とりあえず持ってきてもらえば、ギルドの職員が『鑑定』しますから」

「鑑定?」

「はい。物の真贋を見極めたり、種類の見極めを行えるスキルです」

「へ~、そんな便利なスキルがあるんですね」

「はい、習得できる人は少ないらしく、パーティに一人いると重宝します」

「そうですか。そういうスキルは欲しいですね」

「そうですよ。『鑑定』持ちは冒険者以外でも重宝されますし」

「わかりました。とりあえずそれっぽいものは持ってきます」

「お気をつけて。無事をお祈りしています」

 そう言われ、俺は最初の冒険に送り出された。


「あっ、ちょっと待って下さい」

「ん?」

 出口に向かいかけていた俺にコイコイっと手招きをするお姉さん。


「ここだけの話なんですけど、ギルドはどの職員でも受諾・達成処理をしますが、特定の職員に決めておいた方が良いですよ」

 そんな裏情報を小声で耳打ちしてくる。


「え?何でですか?」

「あー、えーと、ほら、そう!特定の職員に決めておけば、職員のほうも『この人はこれが得意でこれが不得意だ』って分かってるんでサポートし易いし、ある程度便宜を図ってくれるようにもなりますし」

「あ~。なるほど。じゃあ、お姉さんに俺のサポートお任せして良いですか?」

「はい!がんばります!」

「ッ!?」

 突然のがんばります宣言にちょっと驚いたが、悪い人じゃないさそうだし、美人だし、何より美人だ。

「じゃあ、宜しくお願いします」

「ええ、今日からヒロ様の選任は私リューネ・イルファスです。浮気はダメですよ?」

「分かりました。じゃあ行ってきます」


 背後で笑顔で見送るリューネが

「フフフ、逃がさないんだから」

 妖しくつぶやいたのが、誰にも聞こえなかったのは、ヒロにとって幸か不幸かはまだ分からない。

新キャラ登場の回です


リューネさんがヤンデレ化するかは展開次第で

アリシアさんがデレるのか?

ナタリアさんは絡んでくるのか?


余り先の展開考えずに、その場しのぎで進んでいます


見捨てずお付き合い下さい

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