15 暇つぶし その2
『お久しぶり、だね』
そこに居たのは、自称『世界の管理責任者』の女神様だった。
「え?なに?まさか俺また死んだ?」
ここに来るってことは…。
『それは大丈夫だよ、君の夢の中にお邪魔しているだけだから』
「なんだ驚かすなよ。また気が付かないうちに死んだのかと思ったじゃねぇか」
『あははは!ゴメンゴメン。でもこれ以外の方法は、君の方からアクセスしなくちゃいけないから』
「そうかよ。それで何の用だ?」
『うん。まぁ、ちょっと教えておいた方が良いかなーって事が有るんだよ』
「ん?だからなんだよ?」
『それは『良い話』と『悪い話』と『どちらなのかは微妙な話』があるんだよ。どれから聞きたい?』
なんだよ、いきなりどれが良い?とか言われてもな。
『まぁ、話の流れ上『良い話』から話さないといけないんだけどね』
「なら聞くなよ。っで?どんな話だ?」
『君の世界に『魔王』が生まれたんだよ』
「は~あ?魔王ってあれか?勇者の対になる者とか云々って奴か?」
『いや、彼は転生者じゃないよ。あー、厳密に言えば転生者なんだけど、普通に輪廻転生の輪の中で転生しただけで、自ら望んで『魔王』に転生したわけじゃないんだよ』
「あ~、まぁよく分からんが分かった。全然良い話じゃないって事がな」
魔王誕生とか人類の危機じゃねぇか。
『大丈夫。ここまでは『良い話』じゃなくてただの連絡事項だよ』
「なっ、ただの連絡事項って人類の危機をそんな簡単に終わらすなよ」
『しょうがないよ。もう生まれちゃってるし、前もって教えても止めようが無かったんだよ?』
は~なんかもう色々と疲れるよなコイツ。
「んで、じゃあそろそろ『良い話』を聞かせてもらってもいいかな?」
『いいトモー』
こいつは何で、こうまで無駄に俺の前世ネタを挟みたがるんだろ?
『簡単に言えば、魔王が生まれた事で魔族による人間領域への侵攻が激減するんだよ』
「は?なんで?魔王が生まれたんなら逆に勢いづくんじゃないのか?」
『今世の魔王は本気で魔族による世界制覇を考えるようになるんだよ。
その為には、ます魔族の多種多様な勢力を一つにまとめなければいけないと考えるんだよ。
まずは魔族勢力の統一。その魔族領統一戦争のために人間領への侵攻をする余裕がなくなるんだよ』
そいつは素晴らしい。だがそれは魔族の総攻撃がいずれ来るって事だよね?
「んで、『悪い話』ってのは、その統一戦争が終われば魔族の総攻撃が始まるって事か?」
『ん?違うよ』
「え?だって魔族を統一できるから『魔王』なんだろ?」
『ああ。違う違う。魔族の総侵攻は始まるけど、君がそれを気にする必要は無いんだよ』
「なんでさ?」
『その頃には君はもう死んでるんだよ』
「はぁ?ええっと?えっ?それはいつの話?」
『魔族の総侵攻?それなら大体350年程先の話だよ。
君はどんなに頑張っても、あと150年ぐらいしか生きられないんだよ』
俺が生きてる間には魔族間のゴタゴタはケリが着かないのか。
ってか、俺160歳ぐらいまで生きられるのか?頑張れば。
「つまり魔王が生まれたおかげで300年は平和に暮らせると?」
『ところがそこで『悪い話』なんだよ。
魔族が勢力統合をはかっている事に気づいた国が「なら人間勢力も統一せねば」て言って大陸統一のための戦争を始めてしまうんだよ』
「そ、それは、いつ頃始まるんだ?」
『もう始まってるよ?』
突然の女神様の話に混乱し始める。
もう戦争が始まっているだと?
「いつ?どこで?どの国とどの国が?」
『そういう話じゃないんだよ。戦争はいつでも起こってる。
そして、魔族の統一戦争は『人間勢力の統一』という大義名分なんだよ。
大義名文を得れば直ぐにでも戦争を始める国がいくつか有るよね?』
「ああ、『グリトラ帝国』『神聖ランドリア王国』なんかは始めそうだな」
前者は周辺を虎視眈々と狙っている軍事国家で、後者は魔族殲滅の為なら何でもしそうな宗教国家だ。
『今の戦争はただの小競り合いや国家の威光がどうちゃらってだけだけど、魔族の動向が分かるにつれて、戦争の本気度が変わってくるんだよ』
「勘弁してくれよ。普通に対魔族同盟ってことで戦力を結集すれば良いじゃねぇか」
『そうなんだよ。私もそう思うんだよ。でもそうなると「盟主は?」とか始まるんだよね』
「そんなのどこでも良いじゃねぇかよ」
『そして、そこで『良いのか悪いのか微妙な話』なんだよ。
数年後には君の今いる『ミスラ』が『グリトラ』に侵攻されるんだよ』
地理的にはミスラとグリトラの間には別の国があるが落とされてしまったのだろうか?
『君の母国『ロギナス』も同盟国の『ミスラ』に援軍の派遣をする事になるんだよ』
まぁ、そうだろうな国王陛下ならそうするだろうな。
『そこで問題なのは、君の事なんだよ。
君が参戦すれば、まず確実に『グリトラ』を撃退できるんだよ。
その結果、単一国家による大陸統一から対魔族同盟への流れが出来るんだよね。
ただし、君は英雄に祭り上げられ『平穏無事な日々』からは遠ざかってしまうんだよ。
戦争の無い世界にはなるけど、君の望んだ平穏な日々は無くなってしまうんだよ』
「おいおい、ちょっと待てよなんでそうなる?他に色々道はあるだろ?」
『有るけど、ここで『グリトラ』を叩いておかないと戦乱の世に突入しちゃうよ?』
「俺が活躍せずにグリトラに勝つ方法は?」
『正攻法ではまず勝てないんだよ。
開戦時の戦力的は『グリトラ』が85万。『ミスラ』連合軍が50万。
第一陣を追い返しても60万の援軍が来て、計100万の軍に潰されるんだよ』
戦力差がありすぎるだろ。そんなもん勝てねえよ。
『まぁ、確定していない未来はどう変わるかは分からないんだけどね。
ただ、君の選択しだいで未来が大きく変わる可能性が有るんだよ』
「まぁ、詳細が分かってれば、その情報で有利に事を進められるだろう。
詳しく話してくれよ?」
『良いけど、無駄だと思うんだよ?』
「は?何でだよ?そんなにコロコロ未来が変わるのか?」
『そうじゃなくて、この夢の中で聞いた事は目が覚めたら忘れるよんだよ』
「はあ?じゃあここまでの話は?起きたら忘れるのか?」
『うん。きれいさっぱり♪』
満面の笑顔で肯定しやがったよコイツは。
「じゃあ、お前何しに来たんだ?忠告しに来てくれたんじゃないのか?」
『私は女神様なんだよ?『重要』かつ『重大』で『インポータント』な用件に決まってるんだよ♪』
「なんか聞いたことの有るセリフなんだな?」
『そうかもしれないね。今回の用件は、いわゆる『暇つぶし♪』なんだよ』
「またっかよ!どんだけ暇なんだよ!?」
『いわゆる『天丼』なんだよ』
「そんな説明いらねぇよ!」
『まあまあ、落ち着きなよ。怒ってばかりだと体に悪いんだよ?』
「お前の存在が俺の体に悪い最大の要因だよ!」
『しょうがないなー。ノ○タ君は』
「だから、そういうネタは止めろって」
『ふふ、じゃあ可哀想な君にささやかな贈り物をしてあげよう』
「いらねーよ。そういう余計なものを貰ったら、さらに追い込まれていきそうだからな」
『相変わらず、君は遠慮深いんだね。
だが、断る♪
すでに君には新たなスキルを実装済みなのだよ』
「おまっ、何勝手な事してんだ?」
『ふふふ、取得したスキルは『ステータス閲覧』『スキル着脱』なんだよ♪』
「だっ、そんなチートくさいスキルはいらねえって。外せ」
『さて、そろそろ時間かな?』
「おい、話を聞『それでは、さらばだ明智君♪』けって!」
ガバッ!
「人の話し聞けって!」
目が覚めると、なぜか誰かにツッコミを入れていた。
なんとなくだが、重大な事があった気がするが、どんな夢だったのか思い出せない。
「ハア~、なんかモヤモヤするが、まぁいいや。今日はギルドに行ってみなきゃな~」
女神様再登場&再退場の回でした
新しく取得したスキルですが
女神「よし♪このスキルは着脱不可だ。
その上、昔から使えたように錯覚させてしまおう♪」
ッとなっております




