14 剣皇その名は
これから食事に行こうっという所でアリシア・レイアスに声をかけられた。
「ちょっと良いか?聞きたいことが有るのだが?」
ちょっ、なんか目が怖いんですけど、マジで。
「え~と。なんの用件ですか?レイアスさん」
「ここで立ち話というのもなんだ、場所を移そう」
「じゃあ、これから食事に行くんだけどそこで良いか?」
「ああ、かまわない」
二人で連れ立って食堂に向かう。
「どこの食堂だ?」
この学院には総数一万人にも及ぶ生徒と職員の為に、8つの食堂が在る。
肉、野菜、麺、米など種類も豊富だ。
「いや、特に決めてなかったんだけど」
「なら、運動の後だ。肉が良いと思うのだが?」
運動の後には良質なタンパク質の摂取が体作りには良いが、女の子が「肉が良い」て。
『満腹亭』は安く、量の多いい肉料理メインの食堂で、多くの学生(武芸科が半数以上)に愛されているらしい。
その『満腹亭』おススメの日替わり定食を食べながらアリシアを観察する。
(まぁ、普通に美少女だよな)
整った目鼻立ち、赤と言うよりは桃色に近い髪を後ろでまとめている。
(目つきが怖いのと、無表情なのと、雰囲気が尖ってるのが惜しいよな)
傍目からは美少女との昼食なのに、いまいちテンションが上がらない。
「なんだ?」
俺の視線に気づいたのか、ジロリっと睨まれる。
「いや、用事があったのはそっちだろ」
「そうだ。だが、今は食事中だ。後にしろ」
自分から声をかけておいて?
えらくマイペースな言動に呆れつつも、互いに黙々と食事を続ける。
「ふ~、まぁこれであの値段なら十分かな?」
「そうだな、私はもう少し食べたかったがな。次回は大盛にするべきかな」
どうやら彼女は『細身の大食い』らしい。俺には若干多いぐらいだったが。
「っで?そろそろ何の用なのか聞いていいか?」
「ん?ああ。先程の授業の件だ」
やっぱりか、まぁそれ以外の話なんて無いだろうけどな。
「あれが貴様の本気か?」
「は?何だよいきなり?」
「私にはあれが貴様の全力だったとは思えない。っと言っているんだ」
「確かに全力ではないけど…」
まずい、勢いに押されつい本音が出てしまった。
「だろうな、まだまだ余力十分っといった感じがあったしな」
「いや、そんなに余裕が在ったわけじゃ…」
俺の言葉を片手で遮り
「それは良いんだ。私が聞きたいのは『誰に』教わったのかという事だ。
貴様の動きは、私の目標でもある『剣皇』に良く似ている」
剣皇?誰だ?初めて聞く。
「誰に?って祖父にだけど」
「祖父?名前を聞いても良いか?」
「ああ、エルスリードって「エルスリード!?」いうだけ・・ど」
アリシアが椅子を跳ね飛ばし立ち上がり、俺の胸倉を掴むと引き寄せる。
「エルスリード!?エルスリード・グリフか!?」
「ち、近い。顔が近い」
「エルスリード・グリフの孫なのかと聞いている?」
「そうだけど。声が大きい。あと、顔が近い。落ち着け」
「そ、そうか。いや、すまない。取り乱した」
手を放すと何処か呆けたまま椅子に腰を下ろす。
アリシアの大声に周囲から注目の的となってしまった。
こちらをチラチラ見ながらヒソヒソと話す声が聞こえる「エルスリードの孫だってよ」「マジかよ、剣皇の孫かよ」とかやたらと『剣皇』という単語が聞こえる。
「レイアス。ちょっと聞いてもいいか?」
「ん?あ、ああ。何だ?」
「剣皇って何だ?祖父はそんなに有名なのか?」
「何を言っているんだ貴方は?剣皇を知らないのか?」
「ああ。初耳だ」
「ハアー。いいか剣皇というのはな・・・」
長い長い講義をまとめると、大陸の南西部に武芸の盛んな『エジリア』という国が在り、そこで3年に1度開かれる『剣王祭』と呼ばれる武芸大会があり、その優勝者に与えられるのが『剣王』の称号で五回の優勝を成し遂げた者に与えられるのが『剣皇』の称号なのだとか。
「いいか、100年を超えるの剣王祭の歴史で剣皇を名乗れるのは僅か三人。
その中で五大会連続での優勝を成し遂げたのはエルスリード様。唯一人なんだ」
「へぇ。そうなんだ。強い強いとは思っていたけど、そこまでだったんだ」
「貴方は何を言っている?剣の道を志す者にとって『剣皇』は正に極みなんだぞ?いいか・・・
その後も延々と如何に剣皇が凄いのか、どれ程エルスリードの名が知れ渡っているか等を聞かされた。
祖父さんが歴史に名を刻む程の有名人なのを知り、日々平然と生活しているあの家の恐ろしさを再確認した。
あれ?『剣皇』を正座させ説教する侍女が居なかったけ?リズあんた何者だ?
その夜の事だった。
『そろそろ起きて欲しいんだよ』
「もうちょっと、寝かせてくれ」
『でも、そろそろ起きてもらわないと話をする時間がなくなるんだよ』
「ん~。は~あぁ」
欠伸と共に目を開けると、白く高い天井が見えた。
「あれ?ここって・・・」
『ふふっ♪見た事のある天井でしょ?』
声のほうに目をやると、エライ美人さんがいた。
「誰?どこ?何?」
『あっ。そこを繰り返すんだね』
そこには自称『世界の管理責任者』のクソ女神が居た。
大旦那様賛美の回でした
女神様再登場で更なるチート能力取得の予定です
「剣王」のくだりは単なる設定です
主人公達が取得する予定はありません




