13 VSアリシア
『フェルディール学院』
大陸でも最大級の学校で入学から卒業まで3年間のカリキュラムで入学金・授業料共に無料。
周辺の3カ国の支援と卒業生の寄付金によって運営されている。
『自分の授業料は払わんで良いから、後輩の授業料を払ってやれ』と言う変わった学院だ。
基本理念は『求めよさらば与えられん、叩けよさらば開かれん』だ。分かりやすく言えば『欲しいだったら取りに来い』ってことだ。
この学院の基本は『自由』だ。授業に出ようが出まいが試験で一定以上の成績が取れれば終了証が取得できる。
サボる人間を咎めないのは、そんな奴が合格点に届くことは無いっという考えからだろう。
まぁ『欲しい物があるなら、その為に努力するのは当然だろ?』ってところだな。
俺は専攻を『武芸』にした。『教養』では真面目にやらないと落第の可能性があるし、『魔法』は上位精霊の指導おかげで超一級(エアル曰く『人外』)になった為、手加減しても学院生レベルを超えており、目立ってしまいそうなので止めた。
『武芸』ならば、程よく手を抜けば目立つ事も無いだろう。
そんな思惑があった。そう、あったんだ。先程までは。
第一回目の授業は生徒の実力を知る為に模擬戦を行う事になった。
登録番号によりランダムに選出された俺の相手は、赤髪の『美少女』だった。
「アリシア・レイアスだ。宜しく頼む」
「ヒロだ。こちらこそ宜しく」
簡単に挨拶を交わし向かい合う。
審判役兼務の指導教員が合図を出す。
「互いに準備は良いか?では、始め!」
瞬間、アリシアの姿が霞んだ。
爆発的な加速で踏み込み、俺の胴を薙ぎに来る。
ギャッリ!!
(下手に受ければ木刀が砕ける!?)
咄嗟にそう判断し、力に逆らわず受け流す。
アリシアは突進の勢いのまま駆け抜け、砂煙をあげ急停止する。
その表情には軽い驚きが有る。
僅かな溜めの後再び突進してくる。
今度は間合いの僅か手前で体を左右に振り、利き手とは逆の側面に回りこむ。
それに対し俺は左半身を引き牽制の突きを入れる。
彼女は突きを払い、そのまま懐に飛び込み、近距離で数合打ち合う。
鍔迫り合いから距離をとり木刀を構え直す。
彼女の顔には、深い笑みがあった。例えるなら狩り甲斐の有る獲物を見つけた狩人のような。
ゾクリ
瞬間、肌が粟立つ。背筋が凍りつくような感覚に、無意識に背後を薙ぎ払う。
そして、その反動を利用し距離をとる。
そこには驚愕に目を開く彼女が居た。いつの間にか背後を取られていた。
(何て身体強化を使いやがる!)
一瞬で背後を取る身体強化の性能より、それを無詠唱で魔力を一切外に漏らさずに使ってきた事に驚く。
下手な手加減は大怪我になる予感がした。
(早めにケリをつけよう)
半身の姿勢のまま右肩に木刀を担ぐ、地面を蹴り一足飛びで間合いを詰める。
(無詠唱の身体強化が自分だけの技と思うなよ)
それまでとは一線を画く速さに反応が一瞬遅れる。避けられないタイミングだ。
(もらった)
上段から振り下ろされる袈裟切りを何とか受けようと木刀を傾ける。
(無駄だ)
ピッタ!
受けに来た木刀を断ち切り、彼女の首筋直前で、俺は木刀を止める。
彼女は刀身半ばから先を失った木刀を眺め、そのまま視線を俺の木刀へと移す。
自身の敗北を認めたのか木刀を下ろす。
「・・・参りました」
「ありがとうございました」
互いに礼をすると、その場を離れる。
「何?こいつ等?俺が何を教えんだよ?」
(コエ~。何だよアレ。あんなのがゴロゴロしてんのか?ここは?)
(自惚れが過ぎたか。私より強い者などいくらでも居るっという事か)
自信を失う教員のつぶやきも聞こえず、唯一理解できた学友の実力が、自分の想定を遥かに上回っていた事に愕然とし、今後の予定を練り直す二人だった。
「あ~やらかした」
何で俺は、あんなに頑張ったんだろう。
適当に木刀砕かれて転がっておけば良かった。
あの後、他の人間の試合を見て、『アリシア・レイアス』が別格なのだと分かった。
勿論その彼女に勝った俺も別格だと分かられてしまった。
周囲の俺を見る目にウンザリとしながら運動着から制服に着替える。
「何で、よりによってあんなのと当たるかな~?」
自分の不運さを嘆きながら、食堂に向かう。
「やっと来たか」
「あっ」
そんな俺を待っていた女性がいた。
今、俺の心中を占める、気になる女性No1だった。
アリシア・レイアス
「ちょっと良いか?聞きたいことが有るのだが?」
無表情のまま、聞いてくる。
だがその目は物語る。
『逃がす気は無い』と。
戦闘の描写が上手く書けません
迫力ある戦闘シーンが書けると良いのに
ナタリアさん・アリシアさんはレギュラー化の予定です




