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望むはただ平穏なる日々  作者: 素人Lv1
学院 編
12/90

12 それは春の風物詩

6/18 誤字修正いたしました

 ドアを開けたら、そこには着替え中の女性がいた。

 そして飛んできた枕にダウンを奪われた。

 

「な、ななな、何ですか? 変態ですか? 変態サンですね?」


「勝手に決め「こっち見ないで!」るな・・・」


 上体を起こした俺の目に写るのは、服をかき寄せしゃがみ込む女性の姿。

 そして、俺目掛けて飛んでくる分厚い本。


「やめっ、危ね」

「出てって下さい」


 服で前を隠す彼女の右手には「それ投げれるの?」というサイズのチェスト。

 危険な凶器に

「落ち着け、出て行くから。なっ。落ち着け、早まるな」

 座ったまま廊下まで後退るった俺は、ドアを足で閉めると、大きく溜息をついた。

 

 何なんだ、いったい?


 部屋番号は?『307』

 鍵の番号は?『307』


 間違っていないよな。


「ふ~。よし」

 大丈夫だ。俺はクールだ。怒ってなどいない。間違いは誰にでもある。誤りを広い心で許せる紳士だ。


 コンコン。

「すいません。ちょっと良いですか?」

 シーン。


 返事が無い、シカトされたようだ。

 いいだろう。そっちがその気なら、俺もその気だ。


「お話があります。開けますよ。良いですね?」

 ノックはした。声もかけた。念押しもした。

 これでまだ、下着姿なら露出狂みせたがりだろう。

 変態はどっちだ。


 ドアを開けると、既に服を着終わった女性が、杖を構えていた。


「ッチ。ちょっといいか?」

 別に残念がってなんかいないんだからね。


「イヤです。出て行ってください」

「話ぐらい聞けよ」

「変態サンと話すことなんて有りません」

「いや、変態じゃないから」

「ウソです。女の人の着替えを覗く人は変態です」

「事故だろ。それに一瞬の事でほとんど見てないよ」

 そう、一瞬だった。覚えているのは精々が

 『スラリと伸びた白い足』『キュッとくびれた腰』『青い下着に隠された神秘の双丘』

 アレ?意外と覚えてるな?


「やっぱり変態サンです」

「わざとじゃないって。っというか、そんな話じゃなくて、ここ307だよね?」

「そうですよ。307です。私の部屋です」

「いや、ちょっと待てって。だって」

 俺は、自分の名前と部屋番号の書かれた許可証を出す。

 

 『ヒロ・ラウンド・グリフ 殿

  貴殿の入学に際し 

   第4寮棟 307号室 

  の使用を認めます


      フェルディール学院長 エバン・ルドアス』


「ほら。ここは俺の部屋だよ」

「ちょっと待って下さい。私も有ります」

 机の上に置いてあった封筒から一枚の紙がを取り出し、掲げてくる。


 『ナタリア・ラスベル 殿

  貴殿の入学に際し 

   第4寮棟 307号室 

  の使用(以下略)     』


「「え?」」

 目前に突き付けた紙をお互いに見比べた結果。

「「同じ?」」

 同じ結論を得た。


 え~と。どういうことだ?

 名前意外同じ内容、むしろ、名前だけ変えた同じ許可証を机に並べ、二人でクエッションマークを浮かべ、お前分かるか?と互いを見合う。


「どういうことですかね?これ?」

「もしかして。相部屋って事か?」


 それは無いだろう。軍隊じゃないんだ。学院で『男女同室』ってことは無いだろう。

 そう、冗談のつもりだったんだ。


「え?そ、そんな、いきなり言われても、心の準備が・・・」

 本気マジか?顔を赤らめモジモジし始めたぞ。

 もう少しからかってみるか?


「そうだよな。ベットも一つしかないしな」

「困ります。私ベットでなければ寝られません。床で寝てもらって良いですか?」

 もう、同室自体はOKみたいだ。


「じゃあ、シャワーの優先権は俺だな」

「むぅ、しょうがないです。あ、でも着替えるときは外に出ててもらいたいです」

「着替えの度に?それは面倒だよ」

「じゃあ、後ろを向いていて欲しいです。さすがに恥ずかしいです」

「まぁ、その位なら良いけど」

「ハイ、絶対守って下さいよ?」

 もうこのまま相部屋生活に入っちまうか?


 しばらくして、相部屋のルールが大方決まった。


「じゃあ、そろそろ事務局に行こうか?」

「え?何しに行くんですか?」

「いや、ホントの部屋割りを聞きに行くんだよ」

「え?ホントの部屋割り?え?じゃあ、相部屋は?」

「もちろん冗談だよ。ベットもクローゼットも一つのこの部屋で二人は無理だろ?」

「え??からかったんですね!?」

 今頃か?ド天然だな。

 


「さて、じゃあ、入学式で。お互い良い学院生活にしよう」

「本当に良いんですか?」

 あの後、むくれたナタリアを連れ、事務局に行くと、手違いであった事が分かった。


 本当のナタリアの部屋は第3寮棟226号室だったらしい。

 そこで俺は、自分がそっちに移ると告げた。

 なぜなら

「もう一回荷造りし直して、移動するのは面倒だろ?」


「それは助かりますけど」

「いいさ、それに良い物(・・・)も見せてもらったし」

「やっぱり変態サンです」


 真っ赤になって睨むナタリアと笑って別れ、第3寮棟の226号室に向かう。



 第3寮棟の226号室に行くと、そこには、今まさに部屋に入ろうとする男がいた。

「あれ?」

「ん?」

「226号室?」

「そうだが?」


「またかよ!」


 部屋のダブルブッキング。

 3000人を超える入学生の訪れと共に起きる、学院の春の風物詩の事を知ったのは入学式の後日だった。


「何やってんだ事務局は!?」

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