10 坊ちゃまの侍女 その2
こんにちは、皆様。
ロザリア・シフォンです。
坊ちゃまの専属侍女となり、早5年となりました。
日々逞しく元気に成長していかれるお姿に、感動もひとしおです。
成長といえば、一昨年のことですが、坊ちゃまも『お兄様』になられました。
王都にて、旦那様と奥様の間に第4子『ミリアリア』様がお生まれになられました。
初めて見る妹様に感動し、宝物のように抱かれている姿はとても微笑ましく、皆の心が温かくなったものです。
最近の坊ちゃまは、バートレット様に剣術を教わり始めました。
一見すると、荒事とは無関係そうなバートレット様ですが、意外なことに腕利きの冒険者だったらしく、噂ではAAランクだったとか。
以前、王都よりの帰路にてハウンドドックの群れに遭遇いたしました。
『王国最強』とも言われた大旦那様が一緒だったため、危険性は皆無だったのですが。
(かく言う私もハウンドドックごとき10匹が30匹でも殲滅できますが)
大旦那様は、坊ちゃま達のお傍に居たかったらしく
「バートン。任せる」
っと丸投げされ、バートレット様が見事に撃退されました。
(坊ちゃま達の「バートン凄げー、カッコイイ」との発言と、尊敬の眼差しに
大旦那様は「何で闘わなかったんだ?儂!?」と後悔されたようですが)
以来、剣術を教わっておられるようです。
なぜバートレット様になのか?っと言いますと
旦那様は奥様と共に王都にお住まいなので不可能で、
大旦那様は、事が剣となりますと、そこに一切の私情を挟まれないようで
(かつて、王太子様をボッコボコにした前科が有るそうです)
熱が入りすぎ、厳しくし過ぎて「お祖父様なんか、きらいだー」となる可能性が高いと、ご本人もが理解されているようで、その結果常識人で細やかな配慮の出来るバートレット様に白羽の矢が立ったようです。
バートレット様も、大旦那様に配慮され「私がお教えするのは、基礎のみです」とおっしゃられ
「今は剣に慣れる為の素振りのみにしましょう。体作りも時機を見て行っていきましょう、まずは毎日、野山を駆け回られるのが良いでしょう」と
今現在は体作りの下地準備をしておられる様です。
そんな訳で、今日も坊ちゃまは町外れの森に行かれております。
その森は『神霊の森』と呼ばれ、多くの精霊が住み着く、一種の神域で、人に害なす魔物は居らず、子供たちの安全な遊び場となっているようです。
毎日土だらけ泥だらけになって帰ってこられます。
時にはキズだらけな事も御座いますが、大旦那様は「グリフ家の男子だ。この位でなければ」と笑い、リズ侍女長は「大旦那様の子供の頃に比べれば、まだ『おとなしい』方だ」と気にする事も無いご様子でした。いったいどんな子供だったのかでしょうか?
そんな、遊んでばかりの坊ちゃまですが実に聡明でございます。
どこでお知りになられたのか『七太神の教え』や『大陸の略歴』をご存知だったり
複雑な『計算術』を理解されているだけでなく、『天候学』なのか嵐の到来を予告されたりいたします。
流石で御座います。
その一方で、相変わらず私の尻尾に御執心なご様子はお変わりなく、隙を見ては掴まえようと狙っておいでです。
最近では、私の反応速度を上回ることもしばしばで、中々気を抜くことが出来ません。
以前不覚にも掴まえられてしまい、揉みしだかれた事が御座いました。
危うく腰くだけにされるところでした。
いずれ坊ちゃまは『獣人ゴロシ』になられるのでしょう。
楽しみ。あー、いえ、末恐ろしいです
しかし、最近の坊ちゃまに少し不安な点が有られます。
それは『独り言』が多いい事です。
坊ちゃましか居ない筈の部屋の中から声が聞こえるのです。
「へ~そうなの?」とか「なるほど、それでか」とか「それは、無理だろ」等です。
不思議に思い入室させて頂くと他に誰かが居られる訳でもないのです。
妙な事になる前に、しかるべきところに相談するべきなのでしょうか?
私の坊ちゃまを守らねば
そう決意を新たにすると共に背後から忍び寄る誰かに気が付かない振りをしたまま、気配を読みながら洗濯物を干すのでした。
ロザリアさんの回でした
次回いよいよ、坊ちゃまが旅立つ予定です
問題はロザリアさんをどうするかです
ちなみにサラリと生まれた妹は閑話要員の予定です




