1 望まぬ転生
初作品・初投稿です
よろしくお願いします
王都の王城に程近い屋敷の一室を忙しなく歩き回る一人の壮年の男性。
名を「エルスリード・ラウンド・グリフ」
この名を聞けば、多くの者が『王国一の騎士』又は『大陸最高の剣士』その人の名だと思うだろう。
しかし、今部屋の中を歩き回る彼を見て、そんな二つ名の持ち主と思うものは少ないだろう。
「まだか、まだなのか?」
落ち着かず部屋のドアに視線を送りながら歩き回る。
「落ち着いてください。旦那様
何かありましたら、連絡が来ますから」
言っても無駄なことを理解しながらも、そう声をかける老齢の女性。
「だがな、リズ。もう1刻は経つぞ!」
「まだ四半刻も経っていません」
タメ息混じりにたしなめる。
「そうか、しかし、落ち着かん。どうにかならんのか?」
落ち着かない主の姿に苦笑いを浮かべながら、部屋の片隅においてある木刀を持って近づき、それを差し出す。
「することが無いのなら、振り回してきては如何ですか?
いつもの様に、お腹が空くまで」
エルスリードは皮肉めいた発言に少しムッとしながらも、それも良いかっと思いそれを受け取った。
その直後だった。
コンコ「どうした!?」ン
ドアをノックする音に神速の反応を見せるエルスリード。
神速の歩法でドアに近づき開け、驚く侍女に構わず肩を揺さぶりもう一度聞く。
「どうした?何があった?」
「お、お生まれになりました」
「っし!!」
待ちに待った言葉にガッツポーズを決めると、さらに聞く。
「どっちだ?」
「男児に御座います」
「よし、会いに行って良いか?良いな。行くぞ」
リズは、40年以上の付き合いから、何を言っても会いに行くであろう事が分かっているので、止める事はせずに、ただ一言指摘した。
「木刀は置いていって下さい」
ゴンゴン
ノックと呼ぶには荒々しい音に、来訪者が誰かを察したのだろう。笑いを含んだ声が返ってきた。
「どうぞ、お入りください」
エルスリードは室内に入るとベッドの上で優しく微笑む女性に声をかける。
「おめでとう御座います。よく頑張られましたな。メルディナ様」
「また敬語になっていますよ。お義父様」
いつまで経っても娘として扱ってくれないとたしなめられるが、気にする様子など無い。
「顔を見てあげてください」
傍らのベビーベッドで眠る息子が紹介される。
「名前はロイが帰ってきてから一緒に考えます」
「そうか、そうか。抱き上げても良いですかな?」
すでに祖父馬鹿全開の笑顔に断れるはずも無く
「ええ、抱いてあげてください」
母親の了承を得て、孫を抱き上げる。
「ほー、やはり軽いのう、ふふ、儂が先に抱き上げたと知ったら、また怒るだろうな」
初孫での経験を思い出し周囲からも笑みが漏れる。
「陛下主催の会食だ。文句は陛下にっと言えば黙るだろうさ」
断っても良いと言われた仕事に真面目に出向いた息子の運の悪さに苦笑いする。
「しかし、少し元気が無いか?目は開いているのだから起きているのだろう?」
先程から泣き声ひとつ上げない孫に少し心配になる。
「ほれ、少しは元気に声を上げてみろ」
顔を覗き込みながら声をかけてみる。
っとその瞬間
「♯$@*□☆ΨξτλÅ、бヾз&∮ё!!」
怒鳴り声とも言える叫びが発せられた。
サイド????
また見知らぬ天井だ。
どこだ此処?
体も動かないし
ん~思い出せ、思い出すんだ俺。
あ~『転生』だ。
そう言っていたっけあの『女神』
ってことは、このおっちゃんが父親か?
あっちの美人のお姉いさんが母親か?
ん?何でそんなことが分かるんだ?
赤子ってこんなに思考能力があるのか?
ん~あ~、あ『ギフト』がどうのって言ってたやつか?
あれ?でも俺断ったよな。『前世の記憶の引継ぎ』とかって。
ん~でも『女神』『転生』『ギフト』とか覚えてるってことは・・・
「いらねえ事しやがったな、あのクソ女神!!」
約280日前
「ん~、あ~、起きたくね~。休んじゃおうかな~」
毎朝の儀式のような軽い出社拒否(本当に休む気はまるで無い)。
枕もとの時計を手探りで探すが見つからない。
目を開け目視で探そうとするが、別のものが気になった。
「天井が白い。ってか高け~」
無意識に高い天井が気になり声が出る。
『そこは『知らない天井だ』じゃないの?』
突然かけられた声のほうに目をやると、エライ美人さんがいた。
「誰?どこ?何?」
『なるほど、それが知りたい?』
「ああ、教えてくれる?」
『もちろん。良いわよ
私はこの世界の管理責任者。いわゆる『神』ね
で、ここは、いわゆる『あの世』
用件は、簡単に言「神?あの世?」 最後まで聞きなさいよ』
「俺、死んだの?」
『死んだんだよ』
「いつ?」
『ちょっと前かな。1時間くらい。覚えてないの?』
「いや、知らない」
『まー、たしかに後ろから来たトラックに跳ねられて即死。知る間もないか
苦しまずに済んだのがせめてもの救いかな?』
「・・・」
『あれ?リアクションは?んー『反応が無い、ただの死体のようだ』』
「・・・」
『ゴメンちょっとシャレにならなかったよ』
「え~と、カメラは?ドッキリでしょ?」
『いや、マジでリアルでノンフィクションなドキュメンタリーをお送りしているんだよ。ちなみに生放送なんだよ』
「・・・」
『じゃ、そろそろ話し続けて良い?貴方をここに呼んだ理由』
「生き返らせてくれるのか?」
『ん?何でさ?たしかに、時間巻き戻して生まれた直後からやり直させるぐらい楽勝だけど、こっちに落ち度が有る訳でもないのに、そんな面倒くさ、あー、ルール違反は出来ないんだよ』
「面倒臭いって」
『言ってない。いや、言い切ってない。ともかく、生き返らせる為では無いんだよ』
「・・・はぁ、じゃあ何だよ?」
『私は世界の『管理責任者』だよ?その私が直接出てきたんだよ?『重要』かつ『重大』で『インポータント』な問題なんだよ』
「で?だから何?」
『決まっている。いわゆる『暇つぶし』なんだよ』