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第一話-町会対抗アニソン紅白☆

7月4日(土)、25度、曇り


今日は夏だが過ごしやすい一日だった。夏休みの部活動の為に休日に登校するという面倒極まりない行動をした。いやーしかし、とんぼの趣味には驚いた。まさか、みさきゅんの事が好きだなんて……。

「よ、どーした小日向。そんな婆さんみたいな顔して。運が逃げるぞ?」

「うっさいなぁ。余計なお世話だっつの」

「おー怖い怖い。……あ、おはよーさん、とんぼ」

とんぼ、と呼ばれた男子は私のクラスの阿木赤根という名前の男子。絶対親ふざけて付けたろ!っていう名前と、どこまでも見える(らしい。本人談)彼の目から、あだ名がとんぼになった。

「あ、おはよう、ひなたの二人さん」

「おはよー!……って、どうしたのとんぼ、そのストラップ!!!!」

「あ、小日向も気になる?えへへー、これ、いいでしょ!数量限定グッズなんだ~」

とんぼが自慢げに披露したそのストラップは、ピンクの髪の毛の女の子がデフォルメで描かれた、とても可愛らしいものである。……と同時にとても見覚えがある。

「はあ?なんじゃそりゃ。つか誰だよそれ」

「し、知らないのぉ!?これは、今人気急上昇中のネットアイドルみさきゅんのストラップだよ!」

とんぼが鬼の形相で日向に詰め寄る。

「あ……なあ、小日向?」

「……ん……?」

「みさきゅんって……おい、まさか……小日向?おい?」

「は、はははっ、なんか……ね……」

「ん?どうしたの?……あ、これはあげないからねーっ?」

魂が半分口から出ていたのでそれを回収してから口を開く。

「う、うん、まあ欲しかったら余ってるから言ってよ……」

「本当!?ありがとう!」

ここでみさきゅんについての説明を。

みさきゅんとは、今この地域一帯で人気急上昇中の、正式名称を美央とみなかみさきというネットアイドルの事である。みさきゅんとは、もう気付いているかもしれないが私のことである。

「うん、あげるからその話はもうやめよう……?」

「そ、そうだな。ってか、遅刻だ!」

「きゃあ、大変!」

「え?って、わわわ、待ってよぉ……」


「ったくよぉ……休日に部活とかさ、青春させる気あんのかね?」

「青春も何も、あんた彼女いないくせに」

「好きな人ならいるんだけどな」

「え、誰!?」

「内緒」

「言うと思ったよぉ。日向の事だからねぇ」

机を運ぶ私たち。教室に三人、机を端から端まで運び、雑談をし、笑いあう。これって一応青春の部類に入るのではないだろうか?

「っていうか、とんぼ知ってるの!?」

「うん。てか気付くよ?普通。言わないけど」

「ってお前、机運べよ!」

私は二人を応援していただけである。

「こーゆーのは男子がやんの。昨日家でこーゆーのやって筋肉痛なんだもん」

「ん?なんだもん、ってもう一回言って!」

「え……?な、なんだもん」

「凄い!みさきゅんの声にそっくりだ!」

「え、だってみさきゅんだもん」

あえてサラッと言ってみる。

「やっぱり?なんかそんな気してたー」

妙に平静を保つとんぼの背後にあるドアから、白衣と赤いポロシャツを着た教師がひょっこりと顔を出した。

「やっほーぅ。部活頑張ってる?」

「あ、リコピン先生!」

上野うえの里子さとこ先生、里子さとこ里子りこと読み間違える生徒が半数だったり、赤色が好きなのであだ名はリコピン。

「先生!聞いてよ!みさきゅんが小日向だったんだよ!」

「あ、知ってる」

先生はニカッと笑うと、私だけ作業が違うことに気が付いた。

「なんで運ばないの?まあいいけど」

「いいんかい先生!」

日向がずっこける。

「あー、昨日、うちの馬鹿兄貴にコキ使われて。筋肉痛なんです」

「あれ?小日向って兄貴いたんだ」

「あー、向坂悠太」

日向が床を見ながらポツリと呟く。

「合ってるけど、なんで呼び捨てにするかなあ。てか先生、覚えてないんですかもしかして。二年前先生のクラスで卒業したし、部活の顧問だったし、三年間クラス委員会一緒だったし」

「あ、思い出したよ、思い出した」

疑わしい。

「何部でしょーか」

「サッカー部」

「先生顧問した事ないでしょ!?漫研ですからぁー」

先生の記憶力が嘆かわしい。絶対教師とか無理だと思う。もうそろそろ解雇とか言われちゃいそうで怖い。

「兄は超絶運動音痴なんですが」

二年前先生のクラスで卒業したんだし、部活の顧問だったし、三年間クラスも委員会も一緒だったにも関わらず忘れられているとは。

「……悪い子ではなかった」

そう呟く先生の背中は、まるで知り合いが逮捕され、「そんな人じゃなかったのに……」とTVのインタビューに答える中学時代の同級生のようだった。

「いい子でもなかったから忘れてるんですよね?先生」

「せ、成績は優秀だった。……よな?」

「それ聞いちゃ駄目じゃん、先生」

とんぼが呆れる。日向はさっきからカバンをごそごそやっている。やがて一枚のチラシを取り出した。そのチラシには。

「ち、町会対抗アニソン紅白ぅぅ!?」

「うん。明日ね。俺ら4人さ、同じ町会じゃん。町会の人みんなに許可とってくるじゃん。はい小日向、意味分かる?」

「分かんない」

三人が声を揃えて発言する。

「「「だーかーらー、小日向=みさきゅんが出るの!」」」

……やっぱり!まじか!!!!!!


……まじか……。すっげぇ嫌な予感。

ゆるは歌うの大好きー!

あったら出てみたいなww

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