第7話〜今回のご注文はどの娘?〜
ここまでへタレな小説に感想頂けるのはまことに嬉しい限りなのですが、返信したいんでアドレスは書いて欲しいですねぇ…。独り言だけども。
それでは、今回も貴方様の暇つぶしになりますように…。
「んぐ…つーか、何だったんだ、さっきの娘は…」
松永が昼食のカレーを飲み込みながら話題をさっきの娘…すなわち小柳美穂にもってくる。
「顔だけ見るとそこそこ可愛いよな。何歳くらいだろ?あ、葉っぱ入ってら…」
川口が口からカレールーまみれの葉っぱを取り出し、すかさずその話題に食いつく。
「まったくやな。いつの間にあんな可愛い子捕まえたんや、セーダイ」
「うわっ、カレー飛ばすな、馬鹿」
ピッと、カレーのついたスプーンを勢い良く俺に向ける。当然のことながら、カレーがこちらに向かって飛んでくる。
「この御時世イキナリ『結婚しよう』はないぜ。小学生でも言うかどうか際どいもんがあるで。ま、そういう意味でも可愛い子やな。ありゃ、処女やで」
最後に変な言葉をつけ、久保はけらけら笑う。人の気も知らないで、こいつは…。
「あのさ…隣、いい?」
その甲高い声の主は済まなそうに肩をすくませ、短めの髪を右手で掻き撫でる。
「藤本か…。あぁ、別にいいけど?」
俺には別段断る理由もないし、こいつらも構わないだろうと踏んで、俺なりにどうぞといってみる。
「えぇよなぁ、セーダイは。この修学旅行、始まってまだ1日半やってのに、すでに3人も可愛い娘引き連れてな〜。この女たらしめが」
久保はわざと藤本に聞こえる位の声の大きさで言う。これで藤本が俺のことをどう思っているかを見極めることができる、と、言う表情でニヤニヤしている。
「・・・」
彼女は黙ってしまった。顔を真っ赤っ赤にして。あぁ、目は口ほどにものを言うというか、顔は口以上に物を言うというか…。でも、正直、かなり嬉しい。少なくとも、誤解されても仕方ないくらいの好意は持っているということなのだから。
「久保君、藤っ子あんまりいじめないでね〜。こいつ、切れると暴走するからさ」
久保の横から顔をにゅっと出す。そいつは魔女こと、岡部だ。
「へぇ〜、そいつぁ逆に見てみたいわ。どんなんなるん?」
「うぅ〜ん、ちっちゃい子のヒステリックみたいな感じかな?」
久保と岡部が会話をしていると、藤本の顔は見る見るうちに赤みを増していく。彼女は風船みたいに頬を膨らませ
「ふにゅ…ふにゅ…ぶみゃー!」
破裂した。いや、これはこれで可愛いんだけど、何というか…幼稚だ。
「ふみっふみっぶみー!」
ビュンビュンビュン、近くにあった爪楊枝をご丁寧に一本一本俺たちにブン投げる。
「いや、俺たち関係ねぇし!魔女と久保だろ、原因は!俺たち巻き込むなって、おい!止めろって!」
「うにゅにゅー!」
駄目だ、聞いちゃいない。
「ね、こんなになるんだよ。怒らせないほうがいいでしょ?」
「コレはコレで魅力はあるんやけど、確かに怒らせんほうが吉かも…」
この期に及んで久保と岡部はひそひそ話を続ける。俺が止めるしかないのか…駄目モトで。
「おい、止めろって言ってんのが聞こえんのか?藤本」
静かに、それでいて、確実に相手に届くように俺は彼女の目を見て静止を求める。精一杯威厳を込めて。
「…ふみ?」
彼女は涙の溜まった目を俺のほうに向ける。
「爪楊枝なんか投げて、怪我したらどうするんだよ。落ち着け、俺たちが悪かったから、な?」
ぽんぽん、と彼女の肩を二回叩く。すると、彼女はさっきまでの行動が嘘のように静まった。
「おぉ、流石は上之保学園が生んだ女たらし。うまく取り押さえたな」
松永が茶々を入れる。松永の隣で川口がまた噴火するから今はそういう冗談は止めとけよ、と彼を口止めする。
「ごめん!藤っ子、私が悪かった。この通り、な?」
自分の顔の前で両手を合わせてごめんなさい、とお辞儀する。
「むむ〜、今回は許すよ。久保君とかもいるし…。でもね、次ぃ茶化したら許さないからね?」
「突っ込んでくださいって表情したあんたが原因でしょう」
「何ぃ?何か言ったぁ?」
「あぁ、いやいやいや。なんでもないなんでもない」
岡部がすごい勢いで顔を横に振る。今は怒らせないほうが吉と踏んだか。に、しても、こんなに強い立場の藤本を見るのは初めてだ。
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昼食を終え、集合時間になったので俺たちはスキー場に戻る。
「お前、大丈夫なんか?」
久保が、柄にもなく俺を気遣って優しく声をかける。まぁ、あそこまで派手に轢かれたら誰だって俺に優しくしてくれるかな?
「あぁ、大丈夫大丈夫。気にするなよ。この貴重な女性とのふれあいの時間を一秒たりとも無駄にしたくないんでな…」
「目ぇめっちゃギラギラしてるな。セーダイ」
松永がやばいものを見るような目つきで俺を直視する。
「…。セーダイ、我がの命が惜しかったら誰かの影に顔だけでも隠してろ」
川口が何かに気づき、ひっそりとそう呟く。
「あぁ?何言ってんだおま…」
そこまで言って俺は口をふさぐ。なるほどね、そういうことか。確かに、不味いな。すすすっと、この中で一番大きい久保の後ろに隠れる。
彼女はこっちを見た途端、走りよってくる。いかん、バレたか…。
「あ!ねぇねぇ、聖大どこ?」
いや、バレてはいないようだ。良かった良かった。この言葉に川口が対応する。
「さ、さぁ?医務室にでもいるんじゃないのk…」
「ん?ここに居るやん。ほら、セーダイ可愛いお客さんやぞ」
川口が折角嘘をついてまで接触を避けようとしてくれたのに…。久保、お前という奴は…。
「あ、いたいた!ねぇねぇ聖大〜、一緒に滑ろー?ねぇ、良いでしょ?」
彼女はくいっ、くいっと俺のスキーウェアをを引っ張る。
「いや、スキー講習があるから駄目だ。ま、また今度な…」
こういうことはしっかりと断ることが基本だ。相手がいくら可愛くても…。
「えぇ〜?今度っていつ〜?ツマンナイつまんないぃ〜!」
彼女はその答えに地団太を踏む。ホント、こいつ何歳だろうか…。
「なぁ、美穂ちゃんって何歳なん?」
久保が中腰に構え、彼女と同じ目線で聞き出す。あぁ、そういえば小さい子には同じ目線で話すと良いって何かで言ってたっけ…。
「え?えーとね…いち、にぃ、さん…」
彼女はこともあろうことか指折りで数え始めた。幼稚園児か?こいつは。
「ボクはね…。15歳なのだっ!ぶいぶいっ!」
失礼かもしれないが、とてもそうは見えない。バスに小学生料金で乗ってもばれそうにない。
「ってかさ、聖大〜。一緒に滑ろうよぉ〜」
あぁ、もう、言い出したら聞かない駄々っ子め。そういうのが好きな人にはタマラン存在だろうな、こういうのは。
「俺はスキー講習に参加するの!」
俺は誘惑に負けそうな自分に喝を入れる意味も込めて、大声で断る。
「ってか、そうそう…お前、今日はスキー講習受けれんぞ?」
「え?何で?」
「いや、ほら、ゼッケンを医務室のバス子ちゃんに取られとるやろ?ゼッケンなかったら上之保の生徒ってわからんやん。スキーウェアはレンタルもんやし」
…何か、不吉な予感がする。
「つーわけや、思う存分美穂ちゃんと楽しんで来い。な?」
うっそーん。
「わーい、ありがとー!久保」
小柳は久保ににっこり微笑みかけると、それじゃあ行こーよ。と、俺の袖を引っ張る。
もう、何ていうかね…。今日一日はこの娘のお守り役みたいなもんか…。
今日はとことん厄日かもな…。
如何でしたでしょうか?まぁ、相も変わらずアレな出来といえばそうなのですが…。稚拙なんだよなぁ…。
次回『第8話〜電波少女・小柳美穂。爆裂〜』も、貴方様の時間の都合の許す限り…読んで頂けたら嬉しいです。