第3話〜【何の因果か】ホテル・希望閣【こんなボロ旅館に】〜
読者の皆様、いましたら本当にありがとうございます。Itです。
今後もこいつらの怪しいお喋りを楽しんでいただけましたら最高です。それでは、第3話をどうぞ。
バスが止まり、俺たちが4泊5日お世話になる『希望閣』とか言うところに到着。
久保とバスケの話や、音楽の話などを話していると、案外早くついた。
「うぁっちゃぁ〜。希望もクソもあったもんやないな。おい」
バスから降りて、開口一番に久保が俺にだけに聞こえるように小さい声で言う。
「まぁ、俺ら450人と、もうひとつの学校も泊めるんだし、そんなに高い旅館なワケないだろ。大部屋ばっかのボロ旅館だって想像つくだろ。」
「そらそうやけど…。コレはヤバすぎんか?」
確かに…。と、喉元まででかかったが、お世話になる旅館に早速文句をぶっ放していてはいけない、と思い
「ってか、高見さんとはここでお別れか…」
話を逸らしてみる。こいつが食いつきそうなネタを出して。
「いや、安心しろセーダイ。帰りのバスっちゅうチャンスがあるやろが、諦めんのはまだ早いで」
「帰りも同じガイドさんとは限らんぞ?」
疑問をぶつける。
「大丈夫、そんときゃ帰りのインターで猛攻撃や!」
この手の話になると、妙にうきうきしながら話すよな、こいつ。
「って、ほら、高見さんが注目してくださいって言ってるぞ」
このままだと、収拾つかなそうだから、また話を逸らす。
「えぇ〜っと、この旅館が皆さんが4泊5日間お世話になる『希望閣』で、こちらの人たちがその旅館の人たちです。
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スタッフの紹介やら何やらが次々に進み、俺たちを乗せてきたバスが去る。
「あれ?結衣ちゃんは何で乗らないんですか?」
松永が、バスを見送る彼女に問う。
「ん?言ってませんでしたっけ?私はこの5日間バスガイド兼看護師の役割で来てるって」
「な、なんだってー!」
俺のクラスメイト全員が一斉にMMRの隊員になった。
「んで、兼メイドさんやな…」
ボソリと横で久保が怪しいことをつぶやく。・・・こいつ、コスプレ趣味あったのか?ガイドにナースって、確かにメイドさんでもプラスされたら相当おいしいけど…。
まぁ、あえて聞かなかった事にするとしよう。
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「なぁ、具合悪くないんか?」
何回目だろう、久保からこの言葉をかけられたのは。いい加減頭が痛くなってくるぞ。
「あぁ、お前のたゆまぬ努力のおかけで頭が痛いよ」
「何!そいつは大変やな!早速医務室に…」
嫌味たっぷりに返してやったつもりだが、こいつ…。
「ほら、俺が担いだるから医務室行くで?」
「いや、いい。さっきのは冗談だから」
「なんや、詰まらん。張り切って損したやないか、ボケ」
こんなやり取りを夕食の時間までタイマンで続ける。同室の友人に助けを求めても無理無茶無駄無謀その類で一蹴される。
『上之保学園・前橋高校の皆々様、夕食の準備が整いました。宴会室までお越しください。繰り返します。上之保学園・前橋高校の…』
「お、メシやな。続きは食事中にな。ってか、前橋高校ってどこやろ」
「多分、俺の実家の近くの高校だと思う。つまり、群馬な」
久保の問いに、確かではないが自分が考えた答えを返す。
「そうか!じゃ、幼馴染とかいるかもな。何かの恋シュミみたいな展開で」
「セーダイ、知り合いに可愛い娘いたら紹介しろよ」
友人達が一斉に俺の言葉に反応した。こいつら、相当溜まってるな…。
俺が久保に攻撃されてたときは何も反応しなかったくせに、こういうときだけ…。まったくこいつらは…。
「あぁ、分かった分かった。でも、いないと思うぞ。多分。いても共学だから付き合ってる可能性大だ」
「いや、大丈夫!いるはずだ。可愛くて、彼氏がいない奴!」
どこからその自信は湧き出てくるのやら…。でも、今の俺はそんなことに構っていられない。
『幼馴染とかいるかもな』
この言葉が頭に引っかかってしょうがないのだ。今朝見た夢とも見事にリンクして、何度も何度も頭の中をぐるぐると回る。
「どーしたん?セーダイ。ボーッとしとらんで早よ行かんと置いてってまうぞ」
「ん?あぁ、すまん。久保」
さっきから頭に引っかかっているこの言葉の意味がこの後10分後に簡単に分かるとは、このころの俺には思ってもみなかった。
如何でしたか?
次回『第4話〜宿敵魔女と、初恋幼馴染とダブルで再見〜』も、貴方様に時間の都合のつく限り、宜しくお願いします。