第21話〜作戦決行〜
あらすじ。4日目終了。
それでは、どうぞ。
ワッという歓声が聞こえたかと思うと…
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目が…覚めた。
ただ今、11月25日。修学旅行5日目。すなわち最終日。
昨日アレだけ暴れたのに、外は静かで、拳の痛みもない。
だが、この部屋は…騒がしかった。
「マジでやるって言っとるやろうが!!何度も言わせんなこのハゲ!」
「禿げるかぁッ!この似非関西人!」
「何やとぉ!?てめぇ俺の『あいでんててー』にいちゃもん付ける気か!」
「何が『あいでんててー』だ!いちいち『 』つけて強調してんじゃねぇ!!」
久保と松永が朝っぱらから弾けていた。お前ら何やってるんだ。
「ん、あ、セーダイ。起きたか」
川口がいち早く反応。
「この騒ぎで起きないはずもないけどな」
苦笑で返す。
「ま、それもそうか」
川口も苦笑で返す。あぁ、こいつはまともな奴だ。
「セーダイ、起きたんか。早よ準備しとったほうがいいぞ。2時に出るらしいから」
スケジュールが俺にゆっくりする暇を与えない。横からの似非関西弁でスケジュールを思い出す。
「結局スキーほとんどやってないんだが…気のせいか?」
ちょっと、自分の不幸さを嘆いてみる。
「気のせい気のせい。ほら、布団たため。さっさと朝食行くぞ」
久保がさらりと流す。くそ、なんて嫌な奴だ。と、そこで気づく。
「アレ?久保、お前その髪型…」
いつもの適当な髪型じゃなく、ワックスでしっかり手入れされてあった。その髪型は何度か見たことがある。確か、小さいころに。
「ま、ちょっとしたジンクスや。この髪型にして負けたことってないんやって」
ぼさぼさの髪を触りながら自慢してみせる。
「ちょっと待て、この前の大会、決勝まで行ったのに何でそのジンクス使わなかったんだ?」
松永のちょっとした疑問。
「セットする時間、なかってん♪」
「死ねッ!」
そして、松永の蹴り。
「ジンクスに頼んなや、ボケが!」
久保が逆切れした。
それにしても、あの歓声は…夢だったのか現実だったのか。
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「結局、小柳ちゃんが話にほとんど絡んでこなかった件」
朝食中に久保がそんなことを言ってくる。
「人気がなかったからだろ」
「坊やだからさ」
二つの異なった意見が飛び出る。
「いや、坊やじゃないやろ」
「認めたくないものだな、若さゆえの過ちというのは」
久保の突込みにもさらりと対応するシャア…じゃなくて、川口。
朝一に思ったことを撤回しよう。川口もまともじゃなかった。ここ5年間近く、こいつと俺はまともだと思っていたんだがなぁ…。
久保は第一印象から終わってたけど。
それはそうと、今日は俺たちの班だけで食事をしている。何故か、それはやはり俺を気遣っての行動だろう。
朝食・昼食は何事もなく終わり、事実上、俺の強制結婚のタイムリミットも刻一刻と近づいていった…。
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スキーの閉校式もあっさり終わり、最後に旅館への挨拶は放送部員が勝手に終わらせてくれた。
バスに乗り込むとき、小柳とふと、目が合った。
「また来てねー♪」
元気な言葉、それから一息置いて
「最後まで諦めるなよー!ちくしょーッ!!」
彼女の声が一段と大きくなった。その言葉は、俺たち全員に言ったことだろうか、それとも…。
俺はニッコリ笑い返し、バスに乗り込む。
どたばたした4泊5日の修学旅行も…もう、終わり。
やはり、従兄弟との結婚は運命なのか…。そいつは何とも…残念なことだ。
そう思う気持ちとはまったく別の意味で
ため息が出る。
そのため息の意味は知っている。知っているのだけども…行動には…無理だ。
バスに乗り込み、窓を開け、真っ白の雪が覆いつくす雪面に、白い息を…吐く。
久保に冷たいから閉めろと言われるが、あっさりシカトして雪面を眺める。
ふと、意識を持って首を少し上に向ける。そこには…前橋高校2年6組のバスがあった。
藤本を見つけようと努力するが、向こうの窓に水蒸気が張っていて分からない。
バスを見ていると精神的にちょっと辛くなってきたので、ぴしゃんと窓を閉める。久保から閉めるのが遅すぎると軽く殴られた。
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今、C組を乗せたバスが出発した。
前橋高校のバスは一台もまだ動かないところを見ると、俺たちが全部出てから出発するようだ。
メルメルメル
横からメール独自の効果音。久保が携帯でメールを打っていた。携帯の持込は校則で禁止されているはずだが…。勇気のある奴だ。
画面を何となく見てしまった。
画面に映った文面はたった四文字
『 作 戦 決 行 』
如何でしたか?どうにかもうすぐ終わりそうです…。
ただ、結末を急いだ分色々と…。
次回『第22話〜乾坤一擲〜』も貴方様の時間の都合の許す限り…。




