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男子校を恋愛で  作者: It
20/23

第20話〜最悪のカタチ〜

あらすじ。高見さんはドジッ娘スキルを身につけた。元から?

そういうわけで…第20話どうぞ。

4日目。午後9時28分。3/2階段。

俺、田中聖大はお土産を買いに、売店のある1階へ下る最中、何か、嫌な感じを受けた。

虫の報せ、という奴だろうか?何か、ゾッとした。

3階といえば、藤本の部屋のあるところだ。気になる…が、俺には…行く資格はない…だろう。

高見さんに謝りはしたものの、それは心からではなかったし、もしかしたらすまないという気持ちより藤本のご機嫌伺いのほうが強かったかもしれない。

その高見さんは、ちょっと意地悪な顔をしたものの、ニッコリ笑って気にしてないですよ、そう言って俺の肩を軽くぽんと叩いた。

俺は、3階から2階の丁度中間で立ち尽くした。

同時刻、305号室。

私、藤本優は自分の部屋で一人、泣いていた。声を殺し、泣いていた。

自分から、ぶっ放しでフッておいて泣くなんて身勝手極まりない、かもしれない。でも、泣くのは仕方ない…。涙が出るのは仕方がない。


トン…トン


ドアを、ノックする音。

誰?おっちゃんたちなら、普通に入ってくるだろうし…。

なら、誰?セー…ちゃん?

そんなわけ、ないよね。でも、その可能性に…すがりたい。やっぱり仲直りしたいよ…私。

カチャ…リ

ゆっくり、ドアを開ける。誰だろう。セーちゃんだったら、いいな。

ドアの向こうには、男の人が…3人いた。

セーちゃんじゃ…なかった…。

知ってる。顔も、名前も。同じクラスだから…。何しに、来たんだろ?

「上之保の奴と別れたんだって?昨日告白したばかりなのに早いねぇ、何があったの?」

男子の一人がニヤニヤした顔で馴れ馴れしく、私に聞いてきた。正直、本当に腹が立つ。

「別に、関係ないでしょ…。君には。冷やかしなら…」

私はそう言いながらドアを閉めようとノブを握り、こちらに引き寄せようとする。

ガッ

しかし、大きな手が閉まりかけのドアを押さえる。男子たちはドアを閉めることを許さなかった。

「傷ついてるねぇ…。俺たちが、慰めてやろうか?」

男子全員がニヤッと、いやらしい笑みを浮かべる。私の本能はアブナイと警報を鳴らした。だが、もう、遅かった。

ドカッ

彼の前蹴りがみぞおちあたりに響く。私は思い切りしりもちをつき、腹を押さえうずくまる。

彼らはドアを思い切り開き、ドカドカと部屋に入る。

「おい、金田。お前は外見張ってろ」

「あ?俺にもヤらせろよ」

「お前にはあとでヤらせてやるって」

「ちっ、早くしろよ」

私の耳がおかしくなったようだ、ゾッとするような単語が聞こえた。自然と…カチカチカチ…歯が鳴る。

本当の恐怖に直面すると、恐怖もある一線を越えると、口元が歪み、笑みがこぼれる。

馬鹿らしい…馬鹿らしい…何が?ナニモカモガ

もう無理だ…もう無理だ…何が?ナニモカモガ

目から涙、口には笑みを。声は出ず、呼吸も意識しないと出来ない。

セーちゃんに酷いこといったからかな…罰が当たったのかな…ごめん、ごめんね…セーちゃん。

また、ゾッとする感覚が俺の体を襲う。

それと同時に、思い出す。久保の台詞を。

『幸せな恋人たち。怒り、叫ぶ黒髪の長身の青年。泣き崩れ、格好もボロボロの少女』

それを思い出して、更にゾッとした。もしかしたら、今か?今、その状況なのか?

くそっ!

勘違いならそれに越したことはない、だが、もし…もし、勘違いじゃないのなら…。とにかく、行かなければ!

パタパタパタパタッ

バタッ

スリッパが脱げて、よろけて、階段ですねを勢いよく打つ。スリッパを拾う時間も惜しい。

痛い、だが、今は気にしていい場合じゃない。気にするな。今はすべての痛覚神経を断ち切れッ!

ハァッハァッ

階段を上り、階段側から比較的奥側にある305号室が見えた。

男が一人、立っている。何だ、何だ。キサマはッ!

「おい、お前、何…やってるんだ」

パタパタ

片足スリッパを履いていないから、床のべたつきに少し引っかかる。

「お前こそ、何だよ。元彼君?」

向こうは、余裕っぽくニヤっと笑ってみせる。しかし、その後ろにある動揺が今の俺には見える。

「っ!…っ」

声が聞こえた。聞き間違うはずがない。あの声は、藤本優。もう一回言うが、聞き間違うはずがないのだ。

今の俺は、ニュータイプか名探偵かのどちらかのようだ。

「中で、何やってるんだ」

「別に?さっさと自分の部屋にもどれよ。元彼はさ」

ブチッ

完全に何かが切れた。

「埒があかん…」

俺のつぶやきに、向こうは変な顔をする。

スウッと息を吸い込み、時間を確認する。

「上之保学園高等部2年H組!!出席番号16番!田中聖大!!11月24日!!午後9時31分をもって上之保学園高等部バスケットボール部を退部いたします!!」

一生でもう二度と出せない大声を放つ。

「バスケ部顧問佐竹浩二、ただ今田中聖大の退部を了承したぁッ!!思う存分暴れて来いッ!!」

向こうも俺に匹敵する大声で答える。…暴れて来いって…ことは、わかってるのか。ケッ、ふざけた奴だ。分かってるなら止めにきやがれ。

有難う、先生。

「そういうことで、暴力行為がばれても出場停止はないわけだ」

トトッ

軽く駆ける俺。

「ちょっ…俺を殴ったら退がk…」

ゴッ

容赦なしに一撃を加える。人中に一発。相手は思い切り305号室のドアに頭をぶつけた。

周りの部屋がざわざわしだした。中の奴も恐らくあわてているだろう。だが、逃すか。俺が退学になろうとかまわない。

ガコォン!!

閉まっているドアを思い切り蹴りあける。古いドアなので壊れることなくドアは開いた。

ドアを開けると、ジャージを肩辺りまで裂かれた藤本と、男が三人いた。

「「「何だお前はぁ!!」」」

男が三人、声をそろえて月並みな台詞をはく。

「正義の味方だッ!!」

ドッ

ドア前にいた男に一発。こいつも一撃で倒す。

藤本の目の前にいるのは中々にガタイのよろしい奴だ。

だが、今の俺は殊更に無敵な自信がある。

ガギッ

相手のあごに正確に一撃を加える。

よろけた相手の腹を思い切り蹴飛ばし、床にしりもちをつかせる。

「て、ってっめっ!!」

男は慌てて反撃をしようとするが、今の俺にはそんなものは赤子の抵抗に等しい。

俺はその男にあっという間に馬乗りになり、まず一発、顔面にぶち込む。

彼はひっとおびえた声、おびえた表情をするが、俺には全然気にならない。

ドッドッドッドッドッ

執拗に顔を殴りつける。ほかの二人の男は唖然としていまいちこの状況を理解していないようだ。

「も、もう…やめ」

血と涙でぐちゃぐちゃになりながら彼は必死に許しを請う。

「お前が死んだらやめてやるよ」

無意識に無感動な声が漏れる。

とどめ、俺はそんな感じで拳を振りかざす

と、そこへ前橋高校の教師が305号室に入ってくる。

久保たちもコンマ遅れで入ってくる。状況をいち早く察知した久保は真っ先に俺の振りかぶった右手を押さえる。

「これ以上やったら病院送りやぞ!やめろ!」

「うるせぇ!こんな奴ら来世が訪れないように殺すべきだ!離せッ!離せ久保ぉぉおぉっ!!」

俺の叫びがこだまする。

午後11時丁度。406号室。

不思議と、大して咎められることはなかった。

多分、佐竹先生がカバーしてくれたんだろうが。

「夢どおりに…なっちまったか…」

ドン

久保が思い切り壁に頭をぶつける。

「あぁ…そうだな」

俺は心底落ち込んでいた。怒りを通り越して、落ち込んでいた。

「それじゃ…私は部屋に戻るわ」

「え、私も…」

藤本が岡部につられて立ち上がる。

「あんたは、来なくて…いい」

ぐっと、藤本の方を抑え、座りなおさせる。

「でも…」

藤本がぐずる。

「そうだ!藤本さん!私と寝よッ!!」

そう切り出したのは高見さんだった。

「いや〜、私一人でいるとあまり眠れないのよ〜。今夜だけ、お願い!ね?」

高見さんはそう提案する。

藤本には事件現場の岡部たちの部屋はもちろん、男しかいないこの部屋も恐怖だろうから、その点を考えるとかなりベストな提案だと思う。

「…うん。高見さん、ありがと」

藤本はぽろぽろと涙を流しながら立ち上がる。

「いえいえ、むしろ私が感謝したいくらいですから♪それじゃあ、田中君たちも、お休みなさい」

4日目の夜は、こうして終わる。

明日に、希望はあるのだろうか…。そんな変なことを呟きながら俺は瞳を閉じた。

如何でしたか?とうとう20話到達です。

次回『第21話〜作戦決行〜』も貴方様の時間の都合の許す限り…。

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