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男子校を恋愛で  作者: It
19/23

第19話〜始動。プロジェクトK〜

あらすじ。雲行きが怪しくなってきた。作者の。

そういうわけで、どうぞ。

マズイ。マズイ。マズイマズイマズイ…。

汗が止まらない。冷や汗が。だらりだらりと、だくだくと。滝のように。バケツいっぱいの水をひっくり返したように。

思考回路強制終了、ダウン、エマージエンシー、緊急事態。WARNING、危険、DANGER…。

頭が回らない。

似たような意味の単語ばかりが頭をよぎる。しかも、くだらない。必要のない単語ばかり。

ピーッ脳内アナウンス、この脳は応答していません。深刻なエラーが発生しています。一度、人生をリセットすることをオススメシマス。

ドウシヨウドウシヨウ

「と、田中君!早く、行って下さい!」

ドウシヨウドウシヨウ

「田中君!」

高見さんの声でハッ、とする。

そうだ、混乱する前にやらなきゃいけないことが…ある。ありすぎる。

混乱なんてくだらないことは余裕のあるときにでもやってろ。今は何が第一か。決まっている。

「さぁ、早く彼女のところに行って、誤解を解いてきてください。あと、迫力ありましたよ♪」

ニッコリ笑う高見さん。ありがとう、その笑みで少し、救われる。少し、冷静になれる。

まず、彼女の、藤本のところへ行って誤解を解こう。すべてはそれからだ。決着を始めなければ。

「迫力あれど、心ここにあらず…失恋っぽいなぁ…」

誰にも聞こえない声で、高見さんはそういった。走り去った俺にはもちろんのこと聞こえない。

コンコン

戸をノックする。その部屋は5人部屋。

小学校からの知り合いの藤本優、岡部麻衣のいる部屋。残り三人は小学校のころは知らなかった人たち。

ガチャッ

戸が、少し開いた。そのわずかに開いた隙間から見えるものは…ドアと壁を結ぶチェーンと、大きな瞳。その瞳には覚えがある。まず間違いなく藤本のそれだ。

「何の用ですか?」

他人行儀な口調、不快感を露骨に表している声のトーン。ピリ、と空気が張り詰める。

「その…さっきのは…」

「さっきって、いつ?」

俺がコンマ単位でもどもると彼女がすかさず口を挟む。

「その、医務室で…」

「…。で、それが?それで?」

二度の疑問系が俺の心に強く刺さる。

「その、お前に言いたかったんだよ。高見さんにはその練習として付き合ってもらって…」

「知ってたよ」

彼女は俺の台詞の途中に割り込み言う。

「だから、ムカつく」

「…」

何も、いえない。知っていたのなら、知っていてこうして怒っているのなら俺はもう手詰まりだ。

「馬鹿じゃないの?ホントさ」

「ッ!…?」

彼女の発言にびくッとしたものの、いまいち意味が分からなかった。

「セーちゃんさ、酷い。ホント。考えなかったの?高見さんの気持ち」

「高見さんの…?」

俺の呼び名が『セーちゃん』に戻っているあたり、普通の藤本になったのだろうか。

「高見さんね、セーちゃんのことを好きだったと思うよ。きっと。…いや、絶対」

彼女は続ける。

「そんな人に、告白の練習とかわけの分からないことしてさ…。ホント、信じられないよ…。気づかなかったとかそういう問題じゃないよ」

・・・。何もいえなかった。確かに、俺は何て馬鹿だ。なんて無神経だ。信じられない。本当に。

「私にさ、謝りに来る前に高見さんに少しは謝っといた?感謝しといた?してないでしょ?最低だよ。そんな人に何言われても何にも感じないから。じゃ」

バタン

ガチャッ

ドアが閉まり、鍵がかかる。

俺はいっとき、その場から一歩も動けなかった。

同日、午後6時20分。宴会場。

カチャカチャカチャッ

食器が鳴る。プラスチック製の箸が当たり、カチャカチャッと鳴る。和気藹々とした話し声も所々から聞こえ、集まって大声の雑音と化す。

そんな中、あるひとつの空間は静かだった。

カチャッカチャッ

食器の音だけ。たまに聞こえる妙な関西弁と、乱暴な女性の声。その二つとも空気に呑まれ、消えていく。

「ゴボッ!」

隣で大声。この変な関西弁は…。

「いやぁ、あまりに退屈やったから食べながらうとうとしてしもうたわ。な、喋ろで。セーダイ」

「・・・」

ごめん、お前のしたいことは分かるしそれに対してありがとうとも思うけど、答えることは出来ない…。

「・・・ふぅ」

久保はこっちの顔を見て、ため息をつき重症やなとつぶやき、食事に戻る。本当にすまない。

同日、午後9時12分。406号室。集合人数、久保貴洋・川口明彦・松永大輔・岡部麻衣。総勢4名。

俺、久保貴洋はある事を考えた。どうすればこの腐った空間を打破できるか。

ガチャッ

ドアが開く。

ドドドッと勢いよく走ってくる浴衣で湯気の出ているの女性。風呂上りやろうか?

「すみません!遅れましたぁッ!」

彼女の正体は、高見結衣。その人だった。

ドゴッ

脳天から床に豪快にダイブ。

彼女は走ってきた勢いでくりっと頭で逆立ちし、首がスプリング代わりに体を押し出し、ばよーんと空中をさ迷った挙句、胴体着陸をした。

ドジッ娘とかそういう問題じゃない。レベルじゃない。最早人間の域を超えてる気がする。

「痛くないですしッ!!」

瞬時に飛び起き、何故かムキになるバス子ちゃん。おもろいしかわえぇけど、何やろか、この意味不明さは。

「誰にムキになってんですか。バス子ちゃん」

川口がちょっと冷ややかな目で聞く。

「ムキになってないですしッ!!わけわかんないしッ!!」

何か新手のクスリでもキメてしもうたんやろか?テンションがいつもとはまったく別モンなんやけど…。

「おっと、それはそうと…これで全員か?」

川口が俺に聞く。

「あぁ…メインがおらんが…。まぁ、支障はない。あいつは状況に流されるタイプやから。ついでにぶっつけ本番にやたら強い」

「「「確かに」」」

岡部ちゃん・川口・松永が同意する。

「藤本さんもいないけど?」

今度は松永が俺に聞く。

「あの人入れたら意味ない計画なんやって」

「?」

いまいちピンと来とらんな、松永の奴。ほかの奴は大体判っているって言うのに…このド低脳め。

あ、バス子ちゃんわかってるんやろか?…うわ、びみょ〜やな、考えてみれば。わかっとらんかも知れん。

「ま、えぇわ。とにかく…始めよっか」

久保貴洋、友人のための一世一代のプチ計画を始めるとするか。

如何でしたか?相も変わらずおちゃらけ体質が抜けないのですが…。

それでは次回『第20話〜最悪のカタチ〜』も貴方様の時間の都合の許す限り…。

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