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男子校を恋愛で  作者: It
18/23

第18話〜交錯する時間、ココロ〜

あらすじ。久保は神出鬼没。

それでは、どうぞ。

4日目、15時28分。正面玄関。

「ふゅぅ…。やりすぎたよ」

私、藤本優はいきなりの豪雪でスキーが中止になったので用具を片付け、とぼとぼと一人で歩きながらちょっと後悔していた。セーちゃんのためとは言え、あそこまで言ってしまったから。

「ふぅーじっ子!何してんのー?」

ばん!

力いっぱいの衝撃。私はちょっと、よろける。

犯人は言わずもがな、岡部麻衣その人だった。

「何ぃ?おっちゃん。いきなり後ろから叩いてぇ…。痛いよぉ〜」

「ん〜?元気なくとぼとぼ死人のように歩いていたから元気付けてやろーかなと思ったのさ。不必要だった?余計なお世話って奴でした?」

おどけてみせる彼女。う〜ん、今はちょっとした反省タイムなんだけどなぁ…。

「ん〜にゃ、全然だよ?どこが死人?」

「元気がない!」

コンマ単位で否定されたんだけど…。

「さ、どうしたの?田中がボコされたことで?何なら私があのオヤジぶっ飛ばしてくるけど?」

「あ、あぁ〜!そんなんじゃないの!大丈夫だから、ほら。ね?ね?」

頬に指を当て、にっこりと笑顔を作る。嘘っぽいなぁ…この行動…。

「…。うそ臭いなぁ…。まぁ、そういうことにしといてやるけど…ね!」

どんっ

「元気出せ若者ぉっ!」

私の背中を思い切り叩き、きゃっきゃと笑いながら、走り去っていく。・・・。と、くるっと、こっちを向いた。

「そういえば、田中は医務室にいたよん。ま、私の独り言だけど、さ。んじゃーねー」

彼女は大声でそう叫ぶと、ぐっとこっちに親指を立て、健闘を祈る!と、元気いっぱいの笑顔で私に向かって笑う。

「そーんなんじゃないってばー!」

私も大声で叫ぶように返答する。彼女の姿が見えなくなってから、私の足は自然と医務室へ向かっていった。

同時刻、医務室。

「ま、あんなに脅した割にはたいしたことじゃないんですけどね」

高見さんの拍子抜けする一言。

思わず、その場でちょっとこけそうになる。

「それじゃ、まぁ、言いますよ」

「は、はぁ…」

一度狂った調子というものは戻りにくい。お世辞でも格好いいとは言えない間の抜けた返事。

「理由イチに対する私の見解ですが、まぁ、これだと比較的楽勝でしょうね。と、いいますか、一番楽でしょう」

「と、いうとどういう事っすか?」

いまいち、ピンとこないわけだが。

「つまり、です。これの場合、解決法を挙げるとしたら…。信頼取り戻せばいいわけです。うん、単純」

「・・・」

確かに単純だが、時間がかかるんじゃないのか?かなり。

「理由ニに関しては、厳しいですね…。こっちが愛情を向けると向こうの決心がどんどん固まっていってしまいますから」

「そうですか…。で、それでその場合はどうすればっ!」

「ニャッ!だから、がっつくのやめてくださいってぇ!」

ついついあせって、大声になる。高見さんが声だけで半泣きになる。

「そうですね…。向こうの覚悟が固まる前に、ぶち壊すしかないでしょう」

ぽこ、高見さんは壁を殴り、壊すジェスチャーをする。

「・・・」

別に高見さんの凄まじい超・幼稚園児級のハードパンチャーぶりに驚いているわけではなく、高見さんの持論が凄いことになってるからだ。

正直、そんな単純にいけるとは思わない。が、俺にはそんなことを気にしている権利すらない。やらなければいけない。どんなに可能性が低くても、だ。

「しかし、どうやってぶち壊すんですか?」

方法が思いつかない。

「人に頼るのはいいことだけど頼りすぎはためになりませんよ?」

それでも…聞いておきたい。

「私なら告白です!」

ビッ!右の人差し指をピシッと立てる。

「・・・。なるほど…ねぇ…」

あいまいな返事だが、気持ちは固まっている。やるしかない。

「私は、ここまでですよ?あとは田中君がどうにかしなきゃいけないんですから」

高見さんからの激励を受ける。

「・・・。俺、自信…ないですよ」

つい、漏れる弱音。

「そうやって、いつまでも甘えるんですか?」

ちくり。胸に、刺さる一言。

「でもっ!でも!俺は…こんなに自信がないのって!そんなの、初めてなんですよ…。ホント」

自分で言っていて、情けないと感じる。自分で言っていて、腹が立ってくる。何て情けない奴だ。俺は。

「…。なら、私に何を求めるんですか?正直、私がこれ以上何かできそうにはないんですけど…。嫌味とか抜きで」

・・・確かに。そうだよなぁ…。情けないなぁ、俺。

「それなら、せめて練習とか…」

「練習?ですか?」

はてな、という顔をする。自分で言っておいてだが、俺もちょっとはてな、なのだが。

「その…ですね。少しでいいから自信が…欲しいんです。ですから、ちょっと高見さんに向かって、言わせて頂けないでしょうか?」

人間、弱気になると言葉遣いまで弱くなるものだ。ちなみに、こんな台詞、自分で言っていて吐き気がする。

「そんなことしなきゃ告白も出来ないなんて、それなら止めてしまいなさい!って、言いたいところですが…。つくづく、甘いです。私は」

「それじゃあ…」

了承してくれるとは思わなかった。

「何を隠そう、私は告白したこともされたこともないですから、どんな感じか気になるというのもあります」

くすっと笑ってみせる、可愛くも優美な大人と子供の中間の笑み。

「そ、それでは…」

ごくっと生唾を飲み込む。どくん、どくん。徐々に心拍数が上がっていく。

「そ、その…俺は…君が、好き、です。だから、付き合ってくれま…せんか?」

がしゃっ

ぱたっ

パタパタパタッ!

ドアが閉まり、外で走り抜けるスリッパの音がした。恥ずかしくて俯いていた顔を上げてみると、高見さんがしまったという顔をしていた。

「ど…どうしたんですか?」

声が震える。想像出来得る最悪の展開を頭に思い描く。ぞっとした。まさか…

「聞かれて、しまいました」

最悪の展開、その色がどんどん濃くなっていく。

「だ、だれ…に?」

呼吸が…止まる。数秒間。彼女の答えを聞くまで。

「その…藤本、さんです」

俺の中の、何かが…決定的にクルった音がした…。

如何でしたか?ホントね、私の迷走が止まらないわけですが…。

次回『第19話〜始動。プロジェクトK〜』もどうか、貴方様の時間の都合の許す限り…。

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