第17話〜はじめの一歩〜
あらすじ。高見さんは鍋に嫌われている。
それでは、どうぞ。
ある程度、話のネタも尽きたところで
「ところで…」
俺は、話を切り出した。
「…」
言葉に詰まる。一度、事情は説明したのでこれ以上やるというのも何か…と、言う感じなのだ。
「ところで?」
高見さんが俺が言いやすいような展開を用意する。これは有難いような有難くないような…なのだが。
「その…何で、彼女は…藤本は、あんなことを言ったんでしょうか。高見さんは…わかりますか?どうしてか」
「・・・そう…ですねぇ」
彼女はそう言ってちょっと間を空ける。
「今ぱっと浮かんだ希望的な可能性は、2つあります」
「それで!どんな奴ですか!」
思わず、彼女の両肩を力いっぱい掴む。
「わわわ!ちょっとがっつかないで下さいよぉ!」
「どぁっ!すみません!」
パッと手を離す。高見さんは少し涙目になっていた。すみません、ホント…。
「グスッ。うぇ、うぇと…気を取り直して…。理由ですよ、想像される理由の中から希望が持てる可能性のある理由を述べるんですよ!今から!」
何か、ちょっと壊れ気味だ。この人。
「ムカついた。つい、カッとなったから」
「はえ?」
いきなりわけの分からない単語を述べた彼女に意表をつかれ、何か変な声を上げてしまう。
「理由.イチ、です」
「ん?」
ちょっとわけが分からない。
「だ!か!ら!私が考えうる理由のひとつですって!自分と付き合ってるはずの田中君が先生に質問された途端いきなり付き合ってないなんていったからちょっとムッとしたのかな、ってことですよぶべ!」
彼女はあまりにもイライラしすぎてか、舌を思いっ切り噛んだ。
「でも!俺は自分の保身だけのために嘘をついたんじゃあっ…」
「んにゃにゃっ!分かっていても腹立つ時ってありますよ!ベロ痛い…グスッ」
「それで、理由2は?」
涙目で舌を口からデローっと出す高見さん。
「そうそう!理由.ニ、です!こいつが本命と思います。では行ってみようです!ジャカジャン!」
適当な効果音まで加わった。
「田中君に、これ以上被害が及ばないように。です」
いきなり、神妙な顔になり、高見さんはそういう。
「それは…どういう…」
「田中君は、ぼこぼこにされましたね?その…先生に。自分が無意味にべたべたしていたから、自分があんな大勢の目の前で告白したから、だから自分が田中君のもとを去った。とか」
「何でそんなことをっ!」
あまりの驚きで医務室のガラスをぶち割るような大声を上げる。
「うぅ〜!私に言われても〜なんですよ。そうかもな〜って思ってるだけなんですよぉ」
はっと、我に返る。俺は、ちょっと話題を切り替える。過ぎたことはこれで解決としていい。今は、今後のことだ。
「それで…どういった…感じになりますか?」
彼女に、高見さんに、聞いてみる。彼女なら優しく、にこやかに答えてくれるだろうと思いながら。
「田中君は、私にどういう答えを望みますか?曖昧な慰めを私に求めますか?それとも…私の考えていることを一字一句違わず言って欲しいですか?」
彼女の口から出たのは、予想外の台詞だった。
俺が選ぶのは決まっている!決まっているじゃあないか!何を、躊躇する必要があるか。
「っ…」
固まる。喉元まで返事が出てるのに…。それ以上、言えない。俺は、どこまでも弱い奴だ。
「ほんじゃ、前者のほうで頼もか。こいつ、見た目はこうやけど肝は相当小さいからな」
真横から、声が聞こえる。男の声、中途半端な関西弁。
横を見ると、久保貴洋。彼がそこにいた。
「何でお前がここに!」
月並みだが、思わず出てしまうこの台詞。
「ん?助っ人。助っ人や」
にっと笑ってみせる久保。こいつ、世話焼きなのはいいとして、優しいのか自分が楽しみたいだけなのか分からないぞ…。
「んじゃ、俺は出るわ。部屋に戻っとくから」
「ん?お前、スキーは?」
「外見てみ。雪や雪。大雪」
今まで、全然気づかなかった。あいつが言うまで。
ガラッ ピシャン
戸を自分の体分だけ開け、通り過ぎ、戸を閉める。
「それで…田中君は、どっちを選びますか?」
「後の、ほうでお願いします」
久保のおかげで、あいつが乱入してくれたおかげで多少気分が軽くなった。計算してるとしたらあいつは凄いやつだよなぁ…。
「いいんですね?それで」
「はい、構いません」
俺は即答した。彼女の問いに。
今の俺なら、どんな言葉にでも、態度にでも耐えられる。藤本との関係を、元に戻すためになら。彼女の心の底からの笑顔をもう一度みたい。彼女の心の底から恥ずかしがる顔をもう一度みたい。
いや、もう一度、じゃない。二度と切らしたくない。何億回何兆回と見てやる。だから、これはそのための第一歩だ。
如何でしたか?やっぱり、私は暗い・シリアスなものは書けないので、こういう馬鹿みたいな展開になるのですが…。
次回『第18話〜交錯する時間、ココロ〜』もどうか、貴方様の時間の都合が許す限りお願いします。