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男子校を恋愛で  作者: It
10/23

第10話〜教訓・軽率な発言は慎んだほうが良いでしょう〜

すみません!本当はもっと早く更新する予定だったのに…。本当にすみません。それでは…どうぞorz

「…。どーしたの、ソレ」

岡部が俺の体のいたるところについている痣について疑問を投げかける。

「あぁ、新手のボディペイント。格好良いだろ?」

別に事実を隠す必要もないのだが、ここはあえておどけて真実を言わないことにしてみる。そっちのほうが楽しそうだし。

「…。藤っ子、あんた、何があったの?」

「別にぃ?何で私に聞くの?セーちゃんが勝手に階段でも落ちたんじゃない?ねぇ、セーちゃん?」

ギロッ!

普段からはぜんぜん想像つかないすさまじい迫力を宿した目線。う〜ん、目で人を殺せるなら俺は何回殺されるかな。すごく怖いぜ、こいつは。

「あ、あぁ…。そうだったかな…」

藤本の視線に圧倒され、歯切れは悪いがどうにか口裏を合わせる。

「ふーん…。で、あんた、藤っ子に何した?」

岡部の鋭い質問。こいつ、見抜いてやがる。って、別にばれたところで何もないけど。

「いや、だから階段でコケt」

「藤っ子に何した?」

こっちの台詞を両断して、もう一回、同じ質問を俺に投げかける。

「…。別に、何もやってない。ただ、あいつが誤解しただけだろ」

「何を?どういう風に?」

岡部の詰問。相当な迫力。朝っぱらからなんて気迫してんだ、この魔女は。

「その…だな、まぁ、何というか…。ほら、あのちっこいのいただろ?小柳とか言う」

「いや、知らんが…。まぁ、ソレについては後々聞くとして、ソレがどうかしたのか?」

「ん、そうしてくれると助かる。えっとな…。朝起きたらソレが俺に添い寝してた」

かなり短い説明だが、まぁ、間違ってはいないし、特に隠している部分もないので、要約するとこんなもんだろう。俺的採点では75点はいけるな、100点満点中。

「ふぅん…。ソレをみて藤っ子が『セーちゃんの不潔ー!』とか言って、お前をボコしたわけだ」

「まぁ、そんなとこだな」

一通り説明を終え、岡部の怖い視線からも逃れ、やっとで飯にありつこうとすると

「セーちゃん、今度は何?おっちゃんにまで手をつけるの?」

思い切り不機嫌な声で藤本が俺の箸を止める。

「…。ただ、朝のことを魔女に話していただけだ、馬鹿。勘違いするな」

「そうそう、別に藤っ子から田中をとろうなんて思ってないよ、私はこいつに興味ないし。今のところ」

岡部が援護する。こうもきっぱり『興味ない』って言われると少し寂しいものもあるが…。普段は敵のこいつが援護してくれただけでも、よしとしよう。

「おっちゃんは関係ないの!セーちゃんに聞いてるのっ!」

「…。いや、さっきも言ったけどさ…。つまるところ、右に同じ」

「セーちゃんの嘘つきーっ!浮気者っ!女たらしっ!好色魔っ!究極変態仮面っ!」

「全面否定する!特に最後の奴!俺はパンツかぶらんぞっ!網タイツも履かん!」

「えーい!問答無用!」

「ドンマイ!田中!重症は免れんだろうが、死ぬなよっ!」

岡部が不吉な台詞と、食べかけのベーコンエッグを残し、猛スピードで席から離脱する。この状況で助けてくれる人がいるかを明確に証明せよ。

可能性その一・久保含む同室の連中、3名。殺伐とした雰囲気をいち早く察知し、藤本の班員達(岡部・藤本を除く)と共に離脱。よって、不適…(1)

可能性その二・岡部。先ほど撤退。よって不適…(2)

(1),(2)より、俺を助けてくれる人は皆無。俺様、ご臨終ケテーイ。ドンマイ、俺。以上で証明終了。

鈍い音、脳が揺れる感覚、顎に鈍痛、そして、暗転。俺の朝の記憶はここで途切れる。

明るい日差し。そこは…一度ばかり寝たことのある、ベッドだった。白い空間、雪が反射して、なお眩しく、白を強調する空間。ここは、医務室。

「ん?目、覚めましたかぁ?」

のんびりとした甘い声。その声の主が誰かはわかっている。高見結衣、その人だ。

しかし、俺はその言葉には反応しない。何となく。

「起きてるのは分かってるんですよ〜。目、開けてくださ〜い」

カッカッカッカッ

彼女が履いていると思われるハイヒールの音が近づいてくる。

音は俺の寝ているベッドの前で止まり、布団を捲り上げる。それでも俺は反応しない。

「あら?起きてないですか?うぅ〜ん…」

彼女が不思議そうな声を上げ、カッとベッドから一歩離れた場所に足を置いた瞬間

「わーっ!」

後ろから思い切りおどかしてみた。

「きゃーっ!な、何何々ぃ?」

彼女は凄く動転する、いまどきあれくらいでここまで驚いてくれる人も珍しい。

さっきまで寝ていたため、視界が薄ぼんやりのグチャグチャで見えにくい。

「俺ですよ、俺俺」

「な、何?私はオレオレ詐欺にかかるほど歳を取ってませんよ?って、あぁ!やっぱり起きているじゃないですか〜。田中君の嘘つきぃ」

彼女は頬を少し膨らませ、子供っぽい仕草で俺を不機嫌そうに睨み付ける。残念ながら睨み付けられても全然怖くないが。

「ところで…。どうしたんですか?体中こんなに痣だらけで…。田中君を連れてきてくれた久保君たちも口を濁すばかりで…」

「階段で転んだだけですよ、あと、ボディペイント」

ベタな言い訳と、さっきも使った言い訳をミックス。さて、彼女はどう反応するか…。流石に後者はシカトだろうとたかをくくっていると

「へぇ…。ぼでぃぺいんとっていうのは凄くリアルなんですね〜。本物をわざと作るんですか?」

あ、騙された。あっさりと。つーか、階段のほうをシカトしやがった。

「まぁ、する人はします。コアな人とか」

そんな世界に足を踏み入れたことないから本当のことは分からないが、適当に言ってみる。

「へぇ…物知りなんですね。田中君」

感心された。もう少し人を疑いましょう、高見さん。

「ところで、今何時ですか?」

この部屋には…時計が見当たらないので、彼女に聞いてみる。一応医務室だから携帯はないかもしれないが腕時計くらいは持ってるだろう。

「ん〜と、日の傾き具合と空腹度から計算するに…だいたい午後5時あたりですねっ」

「・・・」

開いた口が塞がらない。なんつー時間の計り方してるんだ、この人は。

「ん?どうしたんですか?」

「あ、いや…。ちょっとトイレに…」

こんな意味不明な時計なんかに時間を任せておけない。そう思い、俺はトイレを口実に外に出る。

「…。午後…5時52分。すげぇ、あってるよ。腹時計+日時計」

人類の神秘を目の当たりにし、俺は医務室へと戻る。

「え〜と、今から…スキー講習行ったら駄目ですか?」

とりあえず、聞いてみる。

「駄目ですっ!昨日だって抜け出したでしょっ!めっです!めっ!」

指を一本俺の目の前に突き出し、禁止をジェスチャーする。なんか古臭いというか、幼稚というか…。まぁ、似合っていて可愛らしいからいいのだけども。

「とにかく…。今日は絶対安静です!いいですね?」

「・・・。へぇ〜い。わかりやしたよ。旦那」

俺は半ばやさぐれて返事。

「旦那じゃないですっ!って…そんなこといって…。また抜け出す気じゃないんでしょうね?」

おぉ、彼女にしては珍しく的を得ている。

「抜け出す気です」

俺はソレに自信満々に答える。

「ひ…ひどい…こんなに私が静止しているというのに…よよよ…グシュン」

馬鹿みたいにベタな泣き真似を見せる高見さんと、ソレに呆れる俺。突っ込もうかと口を開けた瞬間

ガラッと、扉が開く。

「こぉーんちゃーっす!」

「し、失礼します…」

「失礼シマァーッス!」

三者三様の挨拶。一発で、どれが誰だかわかる。上から、久保・藤本・小柳だ。

「…何しにきた」

わざと露骨に不機嫌そうな態度を取ってみる。実際、そんなに不機嫌じゃないのだけど。

「いや、お前がどうしてるんかなーって、思うてる奴を代表して俺ら3人のお見舞い。って、おぉ!」

わざとらしく驚いてみせる久保。んで、にんまり。こっちをみる。

「セーダイ、お前、やることやってんやな…。お前は漢やなぁ…」

感心したように、過去を懐かしむように、目を細めしみじみとして久保がこっちを見る。何だ、こいつ。

「この状況を、どう思はります?まず藤本さんから」

久保がどこかのリポーター風に藤本に問う。

「今朝のこと、謝ろうと思って来たのに…。セーちゃんの…女たらしー!やっぱり女たらしだー!」

タンッ

藤本がその場から軽く跳躍。半身起こしている状態の俺に、ひざから落下してくる。

ドボッ

鈍い音、股間にクリーンヒット。どんな報いを受けようが、平然としているつもりだったがソレは反則だ。

「んま、仕方ないやんか。セーダイが女たらしやもん。実際、バス子ちゃん泣かせとるし」

「泣き真似に決まってるだろ!ねぇ?高見さん」

俺は必死に援軍を求める。

「女たらしの田中君にいぢめられましたぁ…」

援軍は、敵につきました。戦況最悪。

「まぁ、それも聖大の人柄だからね〜」

これは、俺を擁護しているのだろうか…。そうなのだろうけど(小柳の性格上)、絶対に擁護されてないと思う。

この状況を打破するには、とりあえず俺の上に馬乗りになっている藤本をどかさなければ始まらない。

「あー、そのだな…。藤本」

「何さ」

うわー、すっげぇ不機嫌…。奥の手やるか、小坊以来だから今でも効くか分からないが。

「どかないと、キスするぞ」

勿論、ハッタリ。

「え、あ…。えぇ!?」

さっきまで馬乗りになっていた藤本は俺のスネから腰を浮かす。効いた!スキ有りッ!この隙に離脱する!

グイッ

「んがぁ…?」

顎を掴まれ、藤本に引き寄せられる。予想外の展開に挙動不審していると…

チュッ、と唇を奪われた。

「…な、何すんダよっ!?」

動揺で声が裏返る。動悸が激しくなる。ドクンッドクンッ!心が熱く、燃え尽きてしまいそうに。

「・・・もん」

藤本の声が小さいのと動揺がプラスされ、何を言っているのか聞き取れない。

「今、何て言った?」

俺は、彼女に聞く。

「キス、相手からされるくらいなら、自分からするもんっ!」

「んが…」

俺があっけにとられていると…。

「まぁ…♪」

「うわぉっ♪」

「何してるーっ!!?」

これまた、ソレを見ていた3人の三者三様の返事。上から高見さん・久保・小柳。

「大ッ胆やなぁ…自分ら」

いや、俺は何もやっていない。

「若いっていいですねぇ〜、私もあと五年若かったらなぁ…」

高見さん、そんなこと言ったら22歳以上の人たちに失礼です。

「聖大はボクのモノなのに〜ッ!!」

わけわからん、こいつは。

「あ、そうそう。セーダイ、飯やぞ。皆待ちくたびれとるぞ」

久保が思い出したように、重要なことをさらっと言う。

「そういうことは早く言えよ!」

「うん…っと」

藤本がベットから降りて、こっちを見る。頬がまだ赤いっての。まぁ、俺もだけど。

「じゃ、ご飯食べに行こうか…」

「あぁ、そうだな…」

お互い頬を赤らめながら、それでも、言葉だけは平静を保って歩き出す。

「あ、ちょっとボクも行くー!」

「ちょっと、私を見捨てるのですか〜?私もお腹すいたのに〜!一緒に行きましょうよ〜!私、ひとりにすると死んでしまうんですよー!」

久保・藤本・そして、俺の3人の後ろを少し早歩きで小柳と高見さんの二人が追いかける。俺たちはこんな状態で宴会場へと向かうのだった。

いやぁ、本当になんと申したら…。

あ、如何でしたか?どうにか、二桁です。話数が。

これも皆様のおかげです。

次回『第十一話〜美しきかな、人生〜』も、どうか、貴方様の時間の都合の許す限り…。

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