男女平等を成し遂げた ~パターン:誰も傷つかない~
人間が卵を産んだ、何が起きたのか
とある科学者が素晴らしい発見をした。
人間を卵胎生にする技術である。
性行為をした結果として受精した卵子は、分厚いゲル状の殻に包まれた状態で胚盤胞まで成長し、おおよそ直径2cmの状態で排出される。
この時、科学者が発明した栄養豊富な液体の中に漬け込まなければ、以降この卵は発育しない。これまでは、女性が望まぬ妊娠をした場合に女性側に負担をかける方法ばかりであった。例えば子宮内掻把、これは子宮内が癒着し不妊症の原因となりうる。例えばピル、これは女性の体内のホルモンのバランスを崩し妊娠を防いでいた。しかし、この技術により、この手術を受けた女性は排出された卵を液体に漬け込むか否かで妊娠を継続するか否かを決めることができた。そして、液体に漬け込みながら液体を補充し、10月10日放置すると赤子が出来上がるのである。
この技術は、いわば体外受精の生物の卵に近いものを人間に作らせる技術だ。
人間を卵胎生にする技術により、女性は出産による死の危険から解放された。妊娠出産という、社会キャリアを止める事象から解放された。
真の男女平等は成り立ち、人々は歓喜した。
が、結論から先に述べるとこの世界は結局破綻した。
何とも不思議なことに、生命の本能か、いつしか人は子供を産まなくなりついにこの技術が生まれてから500年ほどしたら人は緩やかに絶滅した。
「なぜですか、博士」
助手はこの並行世界の未来を観測し、博士に問う。
「簡単なことだ、助手くん」
博士は髭を撫でながらこの質問に答える。
「人間というものは、腹を痛めた子供だからこそ母親としての責任感が生まれる。愛する女が腹を痛めたからこそ、父親としての責任感が生まれる。自然の摂理に逆らってしまったことで、何かが狂ってしまったのだろう」
それを聞いて、助手は悲しそうな顔で答える。
「理想が成り立ったと思ったら、その実滅びへの階段だった。人間とはままならないものですね」
その言葉に対し、博士は肩を竦めて言う。
「生物とは精緻なる芸術、根本をいじるとろくなことにはならぬのだ」
生物とはかくも不思議な物なるか、博士はそう思いながらコーヒーを飲んだ。
貴方に問いかけよう、もしあなたが卵胎生なら何を望むか




