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速報

作者: 雉白書屋

『速報です!』


 ――ん、なんだ?


 鋭い声に、男は動きを止め、目を細めた。テレビの画面ではアナウンサーが硬い表情で原稿を握りしめている。


『先日のWHOによるパンデミック宣言を受け、政府は本日、ついに国家非常事態を宣言しました!』


 ――パンデミック……ああ、そういえば、マスクしてる人が多いな。


『この新型ウイルスは、今年の春頃に初めて集団感染が確認され、現在も国内の感染者数は増加の一途を――』


 ――今年の春……何かあったような……なんだったっけ。


『感染すると高い熱が出るほか、次のような後遺症が確認されています。記憶障害、見当識障害、実行機能障害、言語障害、人格の変化、行動の変化――』


 ――まあ、いいか……。


『これらの症状は認知症に類似しており――』


 ――さて、そろそろ……。


『また、WHOの最新調査によると、このウイルスは認知症先進治療研究開発センターから発生した可能性が高いとのことです』


 ――そろそろ…………何をするんだったかな……。


『――博士は認知症医療の第一人者と知られ、以前の取材で「あるウイルスが認知症の改善に役立つ可能性がある」と語っていました。しかし、その研究過程でウイルスが外部に漏れ出した可能性が指摘されています』


 ――この写真の男……どこかで見たような……。


『博士は現在、行方がわかっておらず、警察が捜索にあたっています。視聴者の皆様も、もし何か情報がございましたら、番組までご連絡ください』


 ――あ、ここにいるじゃないか。


 電気屋の前で足を止めてテレビを見ていた男は、ショーウィンドウを指で突いた。

 男がニヤリと笑うと、ガラスに映る博士もまた、同じように口角を上げて笑った。

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