君の隣にいた幽霊は私はでした。
私は気づいたら、おばけになっていた。
どこかの町の静かな裏通り。風の音も、人の気配もない場所に、私は立っていた。
けれど足音は地面に響かないし、通り過ぎる人に声をかけても、誰も私を見ない。
……どうして?
そんな疑問が胸に浮かんだとき、ふと、あの日の景色がよみがえった。
——3年前の夏。
蝉が鳴いて、空がまぶしくて。
私は、自転車で坂道を下っていた。速度を落とすこともなく、無邪気な笑顔で。
そして、トラックのクラクション。
そこで、記憶が途切れた。
「……あ、私、死んじゃったんだ。」
その事実に気づいた瞬間、胸が締めつけられるように苦しくなった。
でも、泣くことはできなかった。ただ、風のように、その場所にとどまっていた。
私の名前はゆな。
ここにいる意味も、生まれ変わることもできず、ずっとこの世界を漂っている。
そんな私の前に、ある日ひとりの青年が現れた。
——彼の名前は、蒼真。
そして彼は、幽霊が「大の苦手」だった。
なのに彼だけが、私を見た。
その瞬間から、私の止まっていた時間が、少しずつ動き始めた——。
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