Ep.8ーリューー
お読みいただきありがとうございます。
「ではこちらがギルドカードと、規則手帳になっております。この二つはギルドでの身分証明書になりますので、肌見放さずお持ちください。ギルド支給の装備は必要なしと、伺っていますので、初心者支援金として五千イラ、お渡しさせて頂きます。次にこのギルドについてですが、あちらが通常依頼、そして反対側が高リスク依頼や緊急依頼の張り出し板となっています。受注する場合はボードから剥がして受付へお持ちください。あそこは食堂ですが、冒険者割引がございますので、もしよろしければご利用ください。また、ギルド内、及び冒険者間・パーティー内での暴力沙汰は固く禁じられております。最も軽い罰則で冒険者資格の期限付き停止となっておりますので、ご注意ください。最後に最重要事項として、冒険者業務中の怪我や死亡に関して、事件性などといった特別な事情がない限り、ギルドは一切の責任を負いません。規則手帳の最初にも記されている項目ですが、改めてご了承ください。何か質問はございますか?」
「いえ、特にないです」
「良かったです。では以上で説明は終わりとなります。これからよろしくお願いしますね! 」
「はい」
長い長い説明がようやく終わり、受付の人はさっきまでの冷たい表情を一転させて手を差し出してくれた。
「ごめんなさいね、怖そうにしちゃって。この説明が終わった瞬間から仲間よってことを示す、一種の伝統みたいなものなの。ミアって呼んでちょうだい」
「大丈夫ですよ。ミアさん」
「それなら良かったわ」
差し出された彼女の手を握り返すと、手のひらにけんだこがあるのがわかった。ふわふわとした雰囲気を纏っているが、動きに隙がない。
受付として働く前は相当腕の立つ冒険者だったのかもしれないわね。
「あなた、ハクちゃんの知り合いなの?」
「いえ、昨夜知り合ったばかりです」
「あらそうだったのね。不思議な子でしょう、ハクちゃん」
「不思議な子?」
「ええ。ソロでワイバーンを持って帰ってこれるだけの実力があるのよ」
ワイバーンというのは、飛行型魔獣の上位種で別名「ドラゴンもどき」。少しダサいネーミングだとは思う・・・。
「あの年でよ?私に分かるのは、相当研鑽を積んできたのだろうっていうことだけだけど、本当、いったいどんな人生を歩んできたのかしら。でも良かったわ、ハクちゃんに仲間ができるみたいで。パーティーを組むのでしょう?」
「ええ、まあ」
「ハクちゃん、人間関係には用心深い子なのよ。それこそ直ぐに人の言葉の裏を読もうとしたりね。でもそんなハクちゃんが、出会って一日でパーティーを組めると思えるまでに信頼されているのね」
「・・・そうだといいですね」
信頼。
『これでも結構あなたのことを信頼してるのよ?』
『あら、天下の大将軍様にそう言ってもらえるなんて、嬉しいわね』
かつて、そう言いながら共に酒を飲んだ戦友がいた。
『・・・なるほど、そういうことだったのね』
『ごめん・・・、ごめんね・・・』
・・・もう何百年も前の記憶。
「そうですね、本当に信頼してくれてたらいいですね・・・」
「・・・ハクちゃんもだけど、リューちゃんも、不思議な子ね」
「そうですか?」
「ええ。でも意外と似たもの同士、そんな気がするわ」
「意外と鋭いんですね、ミアさん」
「あら、これでも人事部長なのよ」
「なるほど」