Ep.3ーハクー
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『私は人を復活させることができる』
果たして世の中の何人がリューの話を信じれるだろう。そんなことがこの世にあっていいのだろうか。
そんなことを思いながら、私は真っ暗な夜空を見上げてから、隣を歩く彼女、リューへ視線を戻した。
「私の顔に何かついているかしら?」
「なにもないよ」
死体を捨ててきたというのに、平然とした顔をしている。社会の闇を知り尽くしているようだ。
「綺麗な夜空ねー」
「そう?」
夜空なんていつの時代も同じだ。ちっぽけな人間など関係なく毎日のように訪れる、そんなものだ。何かと特別な夜にしたがる人たちの気持ちは本当によくわからない。
「そういえばもうすぐ星祭りね」
「一週間後だよ」
天星祭。人呼んで星祭り。
伝承によれば、聖人ソラニテと聖女ソラニアは星の降る新月の夜に成婚したと言われている。それを祝って、毎年の十回目の新月の日から一週間、盛大な祭りが行われる。新月の夜に日を跨いだその瞬間から、人々夜も眠らずに騒ぎ、遊びにくれるのだ。そして三日間、祭り後の休息をとってから、みんな日常に戻る。
星祭りというのは、そんな一大イベントなのだ。
「じゃあもう宿もいっぱいかしら」
「当然」
「やっぱりそうよね・・・」
少しちゃんとしたところはすでに商人たちが占拠しているし、民宿なども、地方や他国から祭りに参加しに来た人たちでいっぱいだ。ちゃんとした宿を取りたいのなら、一ヶ月前には来ないといけない。
「ねえ、しばらくあなたの家に住ませてくれないかしら?」
「・・・なんで」
「だって住む場所がないもの・・・」
ああ、そうか。
「しかも私はあの人たちから逃げ出してきたのよ。いつまた襲ってくるかわからない相手に対して、宿なんて危険なところには住めないわ」
確かにそうだ。一理ある。
「・・・わかった。ベッドは一つしかないよ」
「構わないわ」
そんな話をしながら我が家に帰ってきた。我が家と言っても、ボロい小さな旅館を改造しただけのところだ。
時間はすでに夜中四時を回っている。まだ季節は秋、あと一時間もすれば、空が薄ら白くなり出すだろう。
今から寝ても長くは寝れないとわかっていても、無性に休みたい気分だった。
「あれ、あなたがソファーで寝るの?」
「ここで暮らすって言ったのはそっちだよ」
「だからって、なにもあなたがソファーで寝ることないじゃない。私がそっちで寝るわ」
「・・・・・・」
「あなたがベッドで寝ないなら、私も床で寝るわ」
「・・・・・・」
「あーもう!わかったわよ!ベッドで寝ればいいんでしょ、ベッドで!」
「・・・嫌ならこの家から出ていっていいよ」
「寝ます寝ます!」
全く、と呟きながら布団を被ったリューを見てから、私も目を閉じた。遠くない夜明けを待ちながら。