Ep.1ーハクー
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「う~ん、ううッ・・・」
黒装束の男の剣が自分の体を斜めに切り裂き、血が噴き出る。
「ッは!?はあ、はあ、、、」
また嫌な夢を見た。
汗だくになった顔を洗おうと、洗面所へ向かう。パシャパシャと水に濡れた顔を上げた。鏡の中には、白銀の長い髪に灰色の目を持った少女がいる。これが私、ハクだ。
突然、ドンドン!ドンドン!と扉を叩く音がした。
「こんな時間になに・・・。!」
外に出てみると、そこには一人の少女が座り込んでいた。年齢は私とあまり変わず、壁にもたれかかっている。少女の髪は珍しい白金。
「ごめん、少し匿ってくれない?」
顔色が真っ青で、よく見たら手で押さえている脇腹から血が流れている。
「早く入って!」
急いでその子を家の奥に入れ、玄関のドアを閉めようとしたそのとき。
「!?」
いつの間にかいた黒装束の人が、斜めに剣を振り下ろそうとしていた。自分に向かって。
慌てて体を捻って回避し、その人の腕に触った瞬間、
「!?あ・・・」
糸が切れたように、突然その人が倒れ込んだ。手に持った剣がカランと音を立てて落ちる。
「ッ、はあ・・・。もう大丈夫だよ」
「ありがとう。・・・大丈夫だった?」
「うん、怪我はしてない」
さっきの光景については何も聞かないのだろうか。手が触れただけで人が倒れたのだ。
「死んでるわね」
「うん。殺した」
倒れている男の首に触れた彼女は淡々としていて、私もそれに淡々と返す。
「この近くに人を捨てられる場所ってあるかしら?」
「少し行った先に裏通りがある。酒でもかけときゃばれないよ」
「そうしましょうか」
彼女は慣れた手付きで男の外套を剥がし、私はキッチンから質の悪い安物の酒を取ってくる。ついでにベッドの側にあるサイドラックから救急箱も取り出した。
「ちょうど衛兵が巡回してる時間だから、もう少し待ってから行ったほういい」
「わかったわ、ありがとう」
「それにまずその怪我を手当しないと」
「ああ、忘れてたわ」
随分と血が出ているところをみると、抉られたのだろう。ろくに止血をしなかったのか、まだ血が流れ出ている。
「随分と用意がいいのね、止血剤まで入ってるなんて」
「まあね。この怪我、放っておいてたら死んでたよ」
「大丈夫よ」
止血剤を塗った上に止血帯をぐるぐると巻き、傷口を圧迫した状態で固定したらハサミで切って縛る。
「はい。急所は逸れてるから、とりあえずはこれで大丈夫」
「ありがとう。・・・何も聞かないの?」
「何を?お互い様だよ」
「そう。・・・じゃあ聞いてもいい?」
やっぱり何もなしでは通らないか。
「・・・答えられる範囲でなら」
「あら、さっきの力は答えられる範囲内かしら?」
「見た通りだよ。私は触れるだけで人を殺せる」
もちろん、自分でコントロールすることができる。無差別に触った人全員が死ぬなんてことはない。