Ep.12ーリューー
お読みいただきありがとうございます。
「ここで食べるの?」
素材の引き取り時間まで夜ご飯を食べると言ったハクに着いてきたけど、ここは明らかに食べ放題、バイキングだ。
「うん、いつもここ。この帝都では一番品揃えがいいんだよ」
「ふーん、そうなの」
これはいい話を聞いたわね。
ハクについて店内に入っていくと、すぐさま店員が近寄ってきた。
「お久しぶりですね。本日は二人ですか?」
「うん」
「わかりましたー」
手慣れた動作で店員が案内してくれ、聞きもせずに注文用紙に書き込む。
「こちらのお客様はいつものでいいですね?どうなさいますか?」
「あ、えっと」
「メニューはあちらに」
「えっとじゃあ、このスタンダードコースで」
「スタンダードコースで、かしこまりました。ではどうぞ楽しんでください」
バイキングねー、久々だわ。
「どうしようかしら・・・」
数分後。私達の卓だけ、周りとは明らかに格の違う光景が広がっていた。
「いきなりそれを食べるの?」
「うん」
ハクの前にはありとあらゆるデザートが。まだ一周目なのにだ。
「プリン、チーズケーキ、ミルクレープ、パンケーキ、それは・・・?」
「ラズベリームースケーキ」
「すごいわね」
「そっちこそ、多過ぎない? カルボナーラ、レモンクリームパスタ、ミートスパゲッティ、ペペロンチーノ、あとジェノベーゼって・・・。しかも全部大盛り」
「お腹が空くんだもの」
仕方ないじゃない。別に残しはしないのだから。
「食べ切れるんだ」
「ええ、もちろん。じゃあ取ってくるわね」
「ここを破産させる気?」
「あなたにだけは言われたくないわ」
私が一周目を食べている間に、ハクはすでに三周回っているのだ。人のことを言えないでだろう。店側もいつものことなのか、「あの子、今日はどれぐらい行けると思う?」とちっちゃな賭けまでしていた。
「まだ行くんだ」
「それはこっちのセリフよ」
「あっちのビーフシチューおすすめ」
「あら本当?ありがとう」
「さっき新しいのが追加されてたわよ」
「すぐ行く」
そんなこんなで二時間食べに食べた。
個人的にはまだまだ行けるのだけど、さすがにこれ以上店側に迷惑をかけるわけにはいかないわ。
「・・・どの口が言ってんだか」
「聞こえてるわよ」
スイーツ少女が大食い少女を連れてきたと恐れ慄いていた店員に支払いをして、冒険者ギルドに戻る。
「おかえりなさーい! はいこれ、いつも通り魔石と毛皮。それと千五百イラよ」
「ありがとう」
「そういえば、公募クエストがあるのだけど、どう?」
「いつ?」
「急なのだけど、明々後日の日帰り。依頼主は第二騎士団よ」
騎士団ねえ、懐かしい響きね。私がいた時期はまだ騎士というのは国民の誇りであり、騎士としての矜持も高かったけど、今はどうなっているのかしら。
「人身売買拠点の摘発って書いてあったわ」
「!?」
人身売買って・・・!
「ねえハク」
「わかってる。参加するよ」
「わかったわ。じゃあ明後日朝十時に東門集合よ」
どうやら考えていることは同じみたいね。
まさかまだ近くに残っているとは思わなかったわ。
「待ってなさいよ、百発ぐらい殴りに行ってあげるわ」