Ep.11ーハクー
お読みいただきありがとうございます。
そろそろのはずだけど・・・。
カサ、ガサ・・・。
きた!
「リュー」
「わかってるわ」
呼びかけると、彼女はすでに背負った大剣に手をかけている。さすが。まあ、これぐらいはできるか。
「ベアボア、いけるでしょ」
イノシシのような見た目をした定番魔獣。さすがに行けてもらわないと困る。
全部で七頭。群れか。
「そっちの三頭よろしく」
「任せてちょうだい」
リューがその大きな剣を引き抜いたのを見て、私もベルトから二本の短剣を引き抜く。あの大剣と比べれば見栄えは地味だ。
突進してくる四頭の間を駆け抜ける。剣を仕舞うと同時に、どっと血を噴いたベアボアが倒れ込んだ。素早く動脈を斬れば、これくらいは朝飯前だ。
後ろでもザシュッと音が聞こえ振り向くと、後ろではベアボアの頭部と胴体がきれいに二分割されていた。
あとの二頭もざっくりと分割されていて、なかなか凄惨だ。リューのやり方と比べれば外傷があまり目立たない私の方がきれいに見える。
「あんまり雑にしないで。素材価値が落ちるから」
「あら、ごめんなさい。できるだけ一太刀で仕留めるわ」
傷をなるべく少なくって意味なんだけど、まあザクザクされるよりはましか。
「インベントリでいいかしら?」
「うん、入れといて」
彼女が手を広げると、そこに空間の裂け目が現れた。インベントリ、収納魔法、アイテムボックス、ストレージ、さまざまな呼び方があるが、全部ほぼ同じだ。亜空間を作って物を放り込めるようにするだけ。その人がどれくらいの亜空間を作れるかで内容量は変わるから、実力試験に使われていた時代もある。魔法を学ぶ人、特に空間系を専門にする人にとっては初級中の初級魔法だ。
「まだするの?」
「門が閉まる前には帰りたいから、あと二時間ぐらい。釣れるかは分からないけど」
「わかったわ」
一時間半後。
結局今日の戦果はベアボア七匹とレッドラガー一匹。そして角ウサギが五匹。思った以上に早く日が暮れそうだったので、早めに切り上げることにしたのだ。
「おかえりなさい、今日はどうだった?」
「ラガーが一匹」
「ラガー?もしかして赤いやつ?」
「レッドラガーです」
「本当!?助かったわ!どうやら薬草地帯の近くに住み着いちゃったみたいで、下位ランクの人たちが困っていたのよ。ちょうど討伐依頼を出そうか迷ってたところだったの」
「そうだったんですね」
私たちが今日張っていた場所からちょっと離れたところに、いろんな薬草が自生している薬草地帯と呼ばれる一帯がある。実はもともと魔女の家の跡地だったりするんだけど。薬草採取がたくさん回ってくる低ランク、特に駆け出しが多く集まる。そこにBランクレベルのラガーが出るのはかなりまずい。
たまたまとはいえ、倒しておいて良かった。
「解体料は?」
「この数なら三十イラよ」
「じゃあいつも通りで」
「わかったわ。じゃあちょっと時間をもらうわね」
「いつもの?」
「魔石と毛皮を種類ごとに一頭分ずつ」
「ああ、あの店たちに卸すのね」
そういうこと。