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7章 キーナ高等学校

皐月は伊織を少し見つめて。

「……よろしく先生」そう言った。その声は寝起きの少し甘い声と何かを確認して経過している声だった。

「……」

伊織は皐月を見る。そう何かに気付いたかのように。それを察した皐月も、伊織の方を見て左右のオッドアイの目で伊織を睨んでいる。それはかつてのあの子と同じ目をしていた。それが何かはまだわからない。彼女がなにを考えているのか。そして、伊織の時間はそこで止まった。


彼女は何かを警戒している。少なくともそれは私に向けられた敵意だった。確かに、行き成りやって来て、先生だと名乗る男を初めから信じることが

「どうかされましたか?」

未来に聞かれて伊織は、

「うんん、何でもない」

未来に声を掛けられたことによって伊織の時間は進み始める。ただまだ伊織は皐月の事が気になるようだ。それは置いといて伊織は部屋全体を見渡した。よく見るとその部屋には大きな机5つの椅子、3つ引き出し、そしてホワイトボードだけが置かれていた。そこは会議室というよりは仮教室、緊急時に使用する場所のようにも感じる。


(なんでこんなと所があるんだろうか?)ここは、元からあるより場所よりも、後に増築された場所に感じる。それもかなり最近に、そんな事を考えている実に

「もしかして、皐月先輩に一目惚れしましかた?」

実はニヤ、ニヤとした笑顔で伊織に聞いた。それは悪戯顔をしている。

「それより、なんでさっき私を偽物だと思ったの?」


このままでは何かいけない方向に進んでしまう。そう感じて伊織は話を切り替えることにした。それは先ほどの苗に言われたことから出てくる、伊織の純粋な疑問だった。

「そうですね、先生が来ていただいたことで私達も動きやすくなりますし、一から説明します」

そう苗は言い、机の上に大きな地図を広げた。


「まず、100年前、栄華極めていたキーナ高等学校を中心とするキーナ自治区。

現在の三大校のイーストン・サイエンススクールとグイドニア・インビオラタ学園の現在の自治区の土地に一部を支配していたことがありました。しかし、ここ50年に北の方にあったキーナ砂丘を中心に砂漠化が進行しました」苗はファイルから10年ごとの経過写真を

ホワイトボードに貼った。

「この写真は昔の先輩方が撮ってこられたものです」

「それだけじゃないでしょ?」


伊織はここまでの道中で見たものに幾つかの疑問点がった。湿地帯、銃撃戦の後のようなもの、それらがただ砂漠化によるものではないことくらい検討できる。

「先生の言う通り、20年前からはここキーナ全体に定期的に嵐が起きるようになった。その雨のせいでこの辺は湿地帯と砂漠が入り混じる場所になっているんだ」

皐月はそう言い、私に一つの動画を見せた。それはキーナ砂丘北部から少しも動かない雨雲の衛星画像である。これを見る限りここ4年間同じ場所に雨雲が停滞していることがわかる。明らかに自然現象で片付けるのは良くないだろうと伊織は考えた。


「そしてここ2、3年前に学校率いるキーナ生徒会とキーナ自治区の大規模会社シーザー民間軍事会社『ⅭPMC』を筆頭としてクーデターが起こりました」


実は先程、伊織をいじる時のような態度とは違い沈んだ声でそれを伝えた。これは伊織に説明するためだけではなく伊織に助けを求めるためであることに伊織は直ぐに気が付いた。伊織はそれ程、鈍感ではない親に先生になるには相手の言葉の真意を見つける必要があるとよく言われていたからだ。

「ちなみにクーデター軍の人数は?」

クーデターの人数によってこれからの伊織の動きが変わってくる。

「分かりませんが恐らく万は超えています」苗は沈んだ声でそう言った。

「じゃあ生徒会は」

「私達だけ」


結実がそう言い先程まで表情とは違っていた。それは悔しさと悲しさと苦しさから来ていることがよくわかる。そう彼女達はたった6人で万を超える、それも軍と戦っていたのだ。

「そうか……」

伊織はここでどう応えるのが正解なのか考えた。今この学校には教師がいない。それは校内で未来に引っ張られた際に気付いていた。それに大人である自分であったとしてもこの状態を解決できるとは思えない。それなのに彼女達はたった6人で約3年間も学校を守り続けた。自然災害にあいながら。

「もしかしてだけど……」

「はい。全校生とこの6人。元は100人ちょっといましたが、クーデターの影響で」

「全員転校した」

実に続いて佳子が答える。それは伊織がここまで、来る途中で予想していたことである。


『愛華……。ここキーナについて出来るだけ詳しく調べてほしい』

キーナ駅を出て直ぐに伊織は愛華にお願いをする。姉から聞いた話だとキーナ高等学校はいつ廃校になってもおかしくないと言っていたことを思い出す。それなのに15年たっても未だにキーナ高等学校がある。それは偶然とは思えない。だから伊織は【AAGA】と【AFD】の情報兼アクセス権利を貰うと同時にそれを愛華に付与させた。

『わかりました』

そして愛華は【AFD】が管理するデータベースに飛んだ。

(これは……探すのに手こずりそうですね)愛華が潜り込んだデータベースには四角い箱に何本ものコードで繋がっている。それらの箱は空中に浮いていてデータベースは無重力空間のようになっている。(これは一日以上かかりますね)そもそも15年間のデータを全て解析する事は無謀である。愛華は初めに過去15年間のキーナ自治区の報告書を集めそれから調べ始めた。そして、そこから必要な情報だけを見ていったのだ。


「……しかし先生が来ていただいたことで私達も動きやすくなりました」

「それは本当にそう」

苗は目を瞑り自分の手を胸に当てそう言った。それに続けて佳子も伊織という存在に大きな可能性を感じている。

「先生はこれからキーナ自治区を中心に行動されるんですか?」実は助けが必要だからと立ち上がり伊織に聞いた。そして、そのまま伊織に近づき伊織の真正面に立った。伊織は実達の真意を読み取り初めから決めていた答えを発する。伊織の答えはキーナに来る前から既に決まっている。

「うん。流石にこの状態で放っておくことは出来ないから」質問にそう答える。

それに結実と苗は飛びながら喜び、佳子はガッツポーズをしている。

「そうだ。折角ですし先生学校案内しますね」

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