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欲望を脱ぎ捨てた果て

作者: 天川裕司

初めまして、天川裕司です。

ここではシリーズでやってます『夢時代』と『思記』の原稿を投稿して居ります。

また、YouTubeドラマ用に仕上げたシナリオ等も別枠で投稿して行きます。

どうぞよろしくお願い致します。

少しでも楽しんで頂き、読んだ方の心の糧になれば幸いです。

サクッと読める幻想小説です(^^♪

お暇な時にでもぜひどうぞ♬


【アメーバブログ】

https://blog.ameba.jp/ucs/top.do


【男山教会ホームページ】

https://otokoyamakyoukai.jimdofree.com/


【YouTube】(不思議のパルプンテ)

https://www.youtube.com/@user-vh3fk4nl7i/videos


【ノート】

https://note.com/unique_panda3782


【カクヨム】

https://kakuyomu.jp/my/works


【YouTubeドラマにつきまして】

無課金でやっておりますので、これで精一杯…と言うところもあり、

お見苦しい点はすみません。 なので音声も無しです(BGMのみ)。

基本的に【ライトノベル感覚のイメージストーリー】です。

創造力・空想力・独創力を思いっきり働かせて見て頂けると嬉しいです(^^♪

出来れば心の声で聴いて頂けると幸いです♬

でもこの条件から出来るだけ面白く工夫してみようと思ってますので、

どうぞよろしくお願いします(^^♪




タイトル:(仮)欲望を脱ぎ捨てた果て



▼登場人物

九部世くぶよ 佳奈子かなこ:女性。26歳。在宅ワーカー(のちにOLとして働きに出る)。アトピーで悩み続ける。

瀬川せがわルリ子:女性。26歳。佳奈子の大学の時の友達。でも結局、佳奈子を馬鹿にしてしまう。

●男性社員1~2:20~30代。佳奈子が働くようになった会社の社員。一般的なイメージで。

●女性社員1~2:20~30代。佳奈子が働くようになった会社の社員。一般的なイメージで。

畑野根はたのね 華菜かな:女性。27歳。絶世の美女。ルアから貰った薬で美しくなれていた。

片野かたの 百合絵ゆりえ:女性。27歳。佳奈子に彼氏を奪われる。一般的なOLのイメージで。本編では「百合絵」と記載。

香川隆史かがわ たかし:男性。30歳。変身後の佳奈子に結婚を申し込む(でもその後は自然消滅で離れる形で)。本編では「隆史」と記載。

●父親:56歳。佳奈子の父親。一般的なイメージでお願いします。

●母親:56歳。佳奈子の母親。一般的なイメージでお願いします。

影絵手かげえてルア:女性。20代。佳奈子の理想と欲望から生まれた生霊。


▼場所設定

●佳奈子の自宅:初めは実家住みでその後アパートへ(ラストでは少しのあいだ実家に戻る形)。

●Shedding:都内にあるお洒落なカクテルバー。ルアの行きつけ。

●会社:途中から佳奈子が働き始める。一般的な商社のイメージでOKです。

●街中:こちらも必要ならで一般的なイメージでお願いします。


▼アイテム

●Reborn Beauty:ルアが佳奈子に勧める特製の瓶入りの錠剤。これを飲むとその人の体質に見合った形で美を引き出せる。特に副作用もない。

●Molted Remains:ルアが佳奈子に勧める特製の瓶入りの錠剤。これを飲むとその人が本来持つ以上の美しさを引き出す。でも肌に問題がある場合は副作用で肌が剥がれ落ちる(この辺りはルアのセリフで匂わす上ややニュアンスで描いてます)。


NAは九部世 佳奈子でよろしくお願い致します。



イントロ〜


あなたは自分の皮膚の事について悩んだ事はありますか?

まぁいわゆるお肌の悩みですが、

これは女性にかなり多い傾向で、少しでも美しく、

瑞々しく若さを保っていたい…そう思うのは当然の上、

更に美貌を手に入れたい・今より少しでも美しくなりたい…

そう言った欲望がその人を支配してしまう事もあるようです。

しかしそんな純粋な欲望でもずっと生活を続けていれば

傲慢な欲望とリンクするもの。

今回は、そんな事に悩み続けた

ある女性にまつわる不思議なお話。



メインシナリオ〜


ト書き〈自宅〉


私の名前は九部世 佳奈子。

今年、26歳になる在宅ワーカー。


私には外で働く事ができない理由がある。

それは…


佳奈子「…ヤダ、また荒れがひどくなってるわ…」


アトピー。

それも普通の人が悩むようなアトピーではなく

その10倍も…いや私から言わせれば100倍も200倍も悩まされ

心を苛み続けるひどすぎるアトピーなのだ。


大学の時…


ルリ子「佳奈子さぁ、これから恋愛とか結婚とかどうするのぉ?そんなんでまともにやっていけるかしらね?」


それまで心の友だと思っていた唯一優しかったルリ子から

そんなふうに言われた時をきっかけに、

私の唯一保っていた生活への覇気というか力というか

そんな土台が一気に崩れ落ちてしまい、

それから大学へはもう行かなくなり、世間にも出なくなったのだ。


そう、私はそのせいで大学を中退している。

唯一の友達も無くしてしまった私は一人きり。


佳奈子「ルリ子なんか…あんなのもう友達でもなんでもないわ!」


そう心に固く誓いながら自暴自棄な生活を繰り返す内、

自分なりの生活の道を見出していた。

結婚も恋愛も諦めて、

自分だけの心休まるテリトリーを持つ事ができればそれで良い。


そう考えれば比較的心が楽になり、私もやっと今になって、

自分なりの居場所を確保する事ができた。


それがこの在宅ワークで生計を立てる生活法。

幸い両親は健在で私に対して優しくて、

実家にずっと住んでいれば部屋代もご飯代も要らず、

それなりに幸せに仲睦まじく平安にやっていける。


世間で女性が持つような一般的な夢は全部捨てて、

ただ自分の牙城だけを守って居ればそれで良い。


だから今はこんな状態にあっても、

言うほど不幸ではなく、それなりの幸せを手にして

私は私なりにやっていたのだ。


ト書き〈カクテルバー〉


私は元々お酒が好きで、

アトピーながら量は控えていたけど、その日、

どうしてもまた新しいお店を探してそこで飲みたくなってしまい

いつも通っていた行きつけの飲み屋街とは別の飲み屋街へ足を向けた。


そうして歩いていると…


佳奈子「ん?あ、ここイイかも」


『Shedding』と言う名の結構キレイなカクテルバーがあり、

中も落ち着いていたので私はそこに入り飲む事にした。

そしてカウンターで1人飲んでいると…


ルア「こんにちは♪お1人ですか?よかったらご一緒しません?」


と1人の女性が声をかけてきた。


彼女の名前は影絵手ルアさんと言い、

都内でスピリチュアルコーチや

ライフヒーラーのような仕事をしていると言う。


佳奈子「へぇ、ヒーラーさんなんですか?変わったお名前ですね」


ルア「フフ♪まぁそれっぽく付けてみただけですの。ペンネームのようなものですわ」


佳奈子「ふぅん、なるほどね」


私も少し寂しかったのもあり、隣の席をあけ、

話し相手になってくれるなら一緒に飲もう…

なんて気持ちで暫く彼女と談笑していた。


でもそうして一緒に居ると少し不思議な事に気づき始める。


対人恐怖症のもあった私が

彼女とこうして喋ってても全く苦にならない。

それどころかもっと喋りたい気持ちにさせられて、

気づけば今の自分のこの悩みを全部彼女に打ち明けていた。


彼女は不思議なオーラを持っている。

「昔から一緒に居てくれた人」のような気配を漂わせ、

心を和ませた上、とても身近な存在に思わせてくる。

私はルリ子に対していた時とは全く違った、

暖かで、大きな安らぎのようなものを彼女に感じていた。


ルア「なるほど。ではお肌の事で今悩まれているんですね?」


佳奈子「え、ええ。今はもう世間での自分の夢なんか全部投げ捨てて、女性が持つような一般的な夢も捨てて、自分だけの牙城に寄りすがって、それなりに幸せにはやってるんですけど…」


また不思議と彼女の前では体裁を繕う事なく、

他の人に対する時とは全く違った素直な自分を告白できる。


彼女は親身になって悩みを聴いてくれた後、

幾つかのアドバイスをくれ、私を励ましてくれた。


ルア「まぁ女性にとってお肌の悩みというのは深刻なこと。ちょっとした事で落ち込んで、人生を全て諦めてしまう…そんな人も、確かに私がやっておりますヒーラー教室にも来られてました」


ルア「良いでしょう。ここでこうしてお会いできたのも何かのご縁です。私が少し、あなたの力になって差し上げましょう」


佳奈子「え?」


そう言って彼女は持っていたバッグから

瓶入りの錠剤のような物を取り出し、

それを私に勧めてこう言った。


ルア「それは『Reborn Beauty』と言うまぁ特製の栄養剤でして、特にアトピー持ちの女性のお肌に最適に効くお薬です。でもそんじょそこらにあるような普通の市販薬ではありません。私がお勧めするのは全て絶対的な効果を持つものばかりで、その効果はその人にとって最適な夢をもたらす程の確かな力を得させます」


佳奈子「…は?」


ルア「フフ、まぁ信じて飲んでごらんなさい。きっとその効果はすぐに分かるでしょう。私が言った通りだと、あなたは必ず感謝する事になる筈です」


やはり彼女は不思議な人だ。

普通ならそんなこと言われたって絶対信じないのに、

彼女に言われると信じてしまう。


そして私は錠剤を手に取り1粒飲んだ。


ルア「その錠剤は1瓶30粒です。つまり1ヵ月分で、今日から毎日1錠ずつ飲み続ければ、1ヵ月後にあなたは必ず生まれ変わる事になるでしょう」


佳奈子「ほ、ほんとですかそれ…」


ルア「ええ♪ただし、1つだけ約束して下さい。その薬の効果が出始めた頃、あなたは別人のように美しくなっています。その美しさにかまけて他人を蔑んだり、誰かの幸せを奪い取るような事だけはしないように。良いですね?それだけは必ず約束して下さい」


佳奈子「は、はぁ?いや私、そんなこと絶対しませんから…」


今までの私の人生で、そんな事ただの1度もした事は無い。

つまり彼女がこのとき言っていたのは、

その自分の美しさにより誰かを誘惑し、

誘惑したその相手に恋人が居て、

その恋人にとって幸せを奪う形になってしまう。


またその美にかまけて自分を他人より優位に立たせ、

自分のその美しさを誰かに見せながら

その誰かを自分の美により馬鹿にし蹴り落とし、

欲望の思うままに振る舞う事。


そんな事が出来る身分なら私はこんな事で悩んでない。

確かに私はずっとこれまで自分の肌の事で悩んできたが、

実は密かに自分の器量の事でも悩んでいた。

私は綺麗じゃないし可愛くもない。

どちらかと言うとブスの部類に入るんじゃないか?

なんて自分なりに思い悩んだ事もあったのだ。


その私がそんな事をするなんて…


ルア「そうですか、それなら大丈夫ですね。あ、あともう1つだけ。そのお薬は1ヵ月分だけです。と言っても1ヵ月後には必ずその効果が出ますので、それ以上差し上げる必要もないでしょうし、おそらくその事で悩まれる必要もないでしょう」


ト書き〈1ヵ月後〉


そして1ヵ月後。


佳奈子「うそ…こ、これ、あたし…?」(鏡を見ながら)


朝起きて、洗面台の前に立ち、鏡を覗き込んだら、

それまで全く見た事のない絶世の美女がそこに立っていた。


でもそれは紛れもなく自分。

信じられない程の変身だった。


アトピーはすっかり消えて全身が瑞々しく美しく、

まるで若返ったかのような光のオーラに包まれている?

そんな印象がまず私の目の前にやってきた。

両親もすっかり驚いていた。


ト書き〈第2の生活からトラブルへ〉


それから私の生活は変わった。

まず家を出てアパートに住むようになり、

それから在宅ワークはやめてハローワークへ通いつめ、

そこで見つけた新しい職場で働くようになっていた。


男性社員「おぉ、なんて綺麗な人なんだ…」


女子社員1「なにあの人、メチャクチャ綺麗じゃない…?」

女子社員2「イイなぁ、私もあんなに美しくなりたいわ…」


入社早々、そこでも私の評判は凄かった。

見る人見る人全員が私のほうを振り返り、

「絶世の美女」なんて陰で本当に言われた事もあった程。


佳奈子「フフ…これよ♪これが私の長年求めてきた理想の人生なのよ!♪」


これまでずっと自分で押し殺してきた美への理想。

その美しさが自分の人生を本当に彩るようになってから、

私の生活のあり方も少しずつ変わってきたのだ。


(トラブルのオンパレード)


百合絵「あなた私の彼、誘惑したでしょう!?返して!私の彼を返してよ!」


佳奈子「はあ?何のこと?夢でも見てんじゃないの?」


隆史「佳奈子さん、僕と結婚してくれないか?」


佳奈子「フフ♪ええ別にイイけど、あたし貧乏な生活するのはイヤよ。そうねぇ、あなたがそれなりに今から出世して、私の夢をちゃんと叶えられる身分になったら結婚したげる。それまではデートに付き合ったげるわ♪もちろんランチもディナーもブティックも全部あなたの奢りでね♪」


周りはいつしか私の事を美魔女と呼ぶようになり、

また私に幸せを奪われたような彼女達からは

「悪魔の女」と言われた事もある。


でも不思議な事に、そんな言葉が全部

私への褒め言葉のように思えてくるのだ。


これまでずっと悩み続けてきたぶん

「ちょっとぐらい我儘な人生を送ったって良い…」

そう言う正直が私の中にやはり芽生えていたのか。


ト書き〈カクテルバー〉


でもそんな生活を繰り返していたある日の事。

第2の人生を送るようになって初めての挫折、

いや無性むしょうに心が焦らされるトラブルが起きたのだ。


男性社員1「おぉ!すごい美人だ…」

男性社員2「今まで見た事もないような絶世の美女だな」


女性社員1「うわぁ…凄いキレイ…」

女性社員2「もしかしてあれじゃない…?佳奈子さんより数倍キレイで可愛らしい人じゃない…?」


私が働くようになったその会社に、

確かに私より数倍キレイな女性社員が1人入ってきたのだ。


名前は畑野根 華菜。

私より1つ年上ながら、

その美しさはどうでも認めさせられてしまう。


私は悔しくてやり切れなくなってしまった。

それまで私の周りになついていた男性社員は

みんな彼女の元へ行くようになり、

私への評価は少しずつ落ち始め、

今までの人気を全部彼女に持っていかれた。


これも女性特有の衝動なのか。

「それ程の美しさを得たんだからもうイイじゃないか」

なんて言われそうなものだがどうしても気が済まず…


「彼女よりも美しくなりたい…そして彼女よりも優位に立って、これまで通り、自分の周りを自分の美しさで支配したい…」


そう言う突起的な感情が私を突き動かして、

私は又あのバーへ走っていた。


(カクテルバーで無心)


佳奈子「あ、居た!ルアさん!」


そして店内で、

前と同じ席に座って飲んでいたルアさんを見つけるや否や、

私は一足飛びで彼女の元へ駆け寄り、

自分の正直な気持ちをまた告白して彼女に無心していた。


佳奈子「お願いします!前みたいなお薬、もう1度だけ私に下さい!…いや、今度は前よりもっと美しくなれるお薬を頂けたらと正直に思ってます!お願いします、下さい!」


もうはたから見れば私は狂ってるように見えただろうか。

ルアさんは私を嗜めながらこう言った。


ルア「フフ、そろそろ来られる頃だとは思ってました。ですが佳奈子さん、ここで1つ忠告させて頂きますが、今のあなたはただ欲望に突っ走り、周りが見えておらず、足元の土台さえ崩そうとしておられるようです。そんな状態ながらただ美しさだけを求めようとするのは、あなたの身を滅ぼす事に繋がり兼ねませんよ?」


佳奈子「…え?」


ルア「一体何があったんです?あなたはもう充分な美しさを手に入れたのに、それ以上にまだ欲しいものがあるんですか?」


それから私はポソポソと会社での事を言った。

自分より美しい彼女が現れた事。

それにどうしても我慢できず、ついこれまでの理想を追う余り、

もう少しだけ理想の自分の夢に浸って居たかった事。


私が美魔女と呼ばれるようになった迄の経過は

そのとき少し横へ置き、隠したままで、

ただ純粋な夢と理想、そこから生まれるちょっとした

我儘と欲望だけを彼女に伝えていた。


でもそこで1つ驚かされた。


佳奈子「えぇ!?そ、そうなんですか!?」


ルア「ええ。その華菜さんは、きっと私のヒーラー教室に通われてた方ですね」


なんと、私に強烈な嫉妬を覚えさせた

あの畑野根 華菜は、ルアさんの顧客の1人。


更にルアさんは、私にくれたような錠剤と

同じような薬を彼女にもあげていたようで、

その彼女にあげた薬は私が貰ったあの錠剤よりも

もっと効果が華やかで大きく、私以上の美女に生まれ変われる

そんな強力な効果を持つ薬だったらしい。


佳奈子「ど、どおりで彼女が綺麗な筈だ…」


私もあの神秘的な生まれ変わりの体験を経験していたのもあり、

華菜がルアさんのお陰であれ程の美を手に入れた事には納得できた。


そうなると、別の欲望が湧いてくる。


佳奈子「ル、ルアさん。でしたらお願いです。華菜さんにあげたそのお薬を、私にもくれませんか?」


華菜が貰って飲んだそのお薬を、

私もどうしても欲しいとルアさんに無心した。


同じ薬を貰うのだから、華菜と同じぐらいの美人になれる…

本当は彼女より優位に立つほど美しくなりたかったが、

私はただ焦っていたのでそれでも良いとした。


でもルアさんは…


ルア「フフ、それは出来ません。華菜さんの場合はもともと器量が美しく、肌に問題も無かったので、あのお薬を差し上げる事が出来たのです。あなたの場合は生来アトピーに悩まされてきた事もあり、おそらく彼女が飲んだのと同じ薬を飲めばあなたの肌に更なる負担がかかってしまい、あなたにとって良くない結果がもたらされる事になるでしょう」


そう言って断固、その薬を私にくれる事はしなかった。

でもそれを聞いて私は段々腹が立ってきた。


なんだか華菜との間に大きな差をつけられたようで、

それに人知れずアトピーに悩まされ続けてきた

私自身が馬鹿にされているかのように思え、

「ここでも私はこんな事で悩まされ続けなきゃならないのか」

と自分が背負わされた宿命のようなものにも怒りを覚え、

もう訳が分からなくなって気がつけば、

ルアさんを怒鳴りつけていたようだ。


佳奈子「なんでアンタにそんなこと言われなきゃいけないのよ!私がこれまでどれだけ悩んできたかアンタ知ってるの!?」


そんな愚痴から始まり…


佳奈子「アンタはただその薬を売って、儲ける事が出来たらそれでイイじゃないの!お金は今の私に出来る限り幾らでも出すから、とっととあの子に渡した薬を私にも売りなさいよ!」


ルアさん自身を馬鹿にするような事まで言ってしまった。

言ってから少し後悔したが、でも私は引き下がらなかった。

それが自分の追い求め続けてきた夢だと知っていたから。


そして、その様子を見定めたのかルアさんは…


ルア「ふぅ。分かりました。それではあなたのご要望にお応えしましょう」


そう言ってまたバッグから瓶入りの錠剤のような物を取り出し、

それを私に勧めてこう言った。


ルア「これが華菜さんにもお勧めした『Molted Remains』と言う特製のお薬で、これを飲めばその人の内側から絶大的な美が引き出され、その人が本来持つ筈の美しさより、更に数倍の美しさを身にまとわせる事ができます」


佳奈子「ほ、本当ですか…!?」


こんな時でもそう聞かされただけで私の心は喜び踊った。

でも彼女はやはり私に忠告してきた。


ルア「良いですか、佳奈子さん。その人が本来持つ筈の美しさより数倍の美しさを備えさせると言う事は、それだけその人の肌に負担をかける事になり、もしかするとあなたの場合それだけで体が耐えきれず、想像以上の悲惨な目に遭ってしまうかもしれない…と言う事なんですよ?それでも本当に良いのですか?」


かなり怖い事を言われていたが、

それでも美に執着してしまった私の心はもう変わらず…


佳奈子「…はい、それでも私は大丈夫です」


と応えてしまった。


ルア「…そうですか。まぁあなたが決める人生です。私は強制しませんし、顧客の方がどうしても欲しいと言われるなら先程あなたも言われたように、私はそれを提供するだけ。どうぞ、お飲み下さい」


そう言って、私はその瓶入りの錠剤を彼女から貰った。


ト書き〈佳奈子の自宅・オチ〉


でもそれから僅か数日後。

私はルアが言った通りの運命を辿る事になってしまった。


あの薬を飲み始めてから

私は少し顔に痛みを覚えるようになり、

少し不安になったので実家に戻っていた。


そして朝起きて、洗面台の鏡の前に立った時…


佳奈子「ギ…ギャアアァア!!」


顔の皮膚がただれ落ち、

中から血みどろになった筋肉がむき出しの状態で

まるでゾンビのような顔になった私が、こちらを向いて立っていた。


父親「ど、どうした佳奈子!?」


叫び声を聞いて驚いた私の両親は、すぐ洗面所まで走ってきた。

そして…


父親「う、うわあ!だ、誰だお前は!」


母親「ど、どっから入ってきたの!?バ、バケモノォ!」


と私に向かって言った。

どうやら実の子である事も分からない程

私の姿はおぞましく、

もう取り返しのつかない状態にまでなっていたのだろう。


ト書き〈佳奈子の実家を外から眺めながら〉


ルア「だから言ったのに。悲惨な運命を辿る事になるって。私は佳奈子の理想と欲望から生まれた生霊。その夢を叶える為だけに現れたけど、彼女は私の純粋な期待には応えてくれなかったようね」


ルア「フフ、私が何も知らないとでも思ってたのかしら。あれだけ自分の美しさにより他人を馬鹿にし蹂躙し、その幸せを奪わないように言っておいたのに。彼女はその約束を簡単に破り、すっかり欲望だらけの女に成り果てていた。過ぎた野心は身を滅ぼす…まさにその通りになったわね」


少しでも楽しんで頂き、読んだ方の心の糧になれば幸いです。

サクッと読める幻想小説です(^^♪

お暇な時にでもぜひどうぞ♬

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