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buddy ~絆の物語~ スピンオフ 暗躍する番犬編  作者: AYANO


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4/4

対決 後編

体育祭の全プログラムが終了し、生徒もまばらにしかいなくなった頃、競技場の用具などを置いている部屋に、buddyの6人と新聞部の山田を含む男4人、そしてなぜか隼斗のクラスメイトが野次馬で集まっていた。


「おい山田。お前たちが負けたら、金輪際二度とこの2人に関わるな。わかったかっ」

「藤堂くん、ずいぶん自信満々だけど、そんなこと言っていいんですか?」

「ふんっ、誰が来ようが俺たちが絶対に勝つ‼」


部屋の中央には、明日香の胸の高さほどの台が置いてある。

その台を挟む形で両者は睨み合っていた。正確には睨んでいたのは隼斗だけで、他の5人は完全に巻き込まれていた。


「それじゃあ、俺たちの先鋒は.....竣亮だ!」

「えー.....隼斗くん、やっぱり僕もやるの?」

「当たり前だろっ。大丈夫、竣亮だってそれなりに鍛えてるんだからさ」

そう言われて竣亮は、渋々前に出てくる。


「竣亮、がんばって!」

「無理しないでね竣亮っ」


明日香と深尋の声援を受けた竣亮は、少し照れ臭そうにしていた。


「ふっふっふっ.......それでは国分くんの相手は、僕がしましょう!」

相手側は早速、新聞部の山田が出てきた。竣亮相手なら勝てると思ったのだろう。


これから両者は、腕相撲対決をすることになっていた。


そして竣亮と山田がガッチリと手を握る。

審判役は、その辺にいたクラスメイトにお願いした。


「Ready...........go!」

パタンッ。

「え......?」

「勝者、国分!」


山田はあっけないほど弱かった。彼は男性にしてはヒョロヒョロで、ペン以上の重たいものが持てそうにない程の細腕だ。

山田からしたら、竣亮は自分と互角だと思っていた。しかし結果は竣亮の圧勝。瞬殺だった。

それもそうだろう。buddyは高校生になってから、本格的な筋力トレーニングを開始していたので、一見細く見えても、まぁまぁ筋肉も筋力もある。


それを隠して、次の対戦へと移る。

「次鋒は.....この葉山僚だ!」

僚は他校生にもかかわらず巻き込まれてしまい、最初はどうしようかと思っていたが、新聞部のしつこさには隼斗と同様に嫌悪感を抱いたので、この勝負に乗ることにした。


僚はかぶっていた黒のキャップを取ると、それをポンっと明日香の頭にかぶせる。


「悪い、明日香。それ持ってて」

「う.....うん.....」


僚がキャップを取ると、野次馬で残っていた女子が色めき立つ。中にはスマホを向けて撮影しているのもいた。

しかしそんなことはお構いなしに、僚は相手の男を見ていた。

(市木以上にチャラそうな奴だな。初対面だけど.......なんかムカつく)


僚の相手はジャージをだらだらと着ているような男で、市木とはまた違ったチャラさを感じさせるような男だった。


「この人めっちゃイケメンじゃん!藤堂の幼馴染ってみんなレベルたけーな」

「.......どうも」


僚は自分のことをジロジロと見てくるこの男に虫唾が走る。

それでも台の上でお互い手を握り合って構える。


「Ready...........go!」

合図と同時にグッと力を入れ、左側に倒そうとするが、さすがに先ほどの山田のようにはいかない。それでも僚はなんとなく「イケる」と思っていた。


そしてさらに力を入れると、ぱたんっと相手の手の甲が台の上についていた。

「勝者、.........イケメンくん!」

僚の名前を忘れてしまった審判はとっさにそう言ったが、勝ちは勝ちだ。


「やったあ!僚!」

「僚!スゴイ!」


竣亮の時は、あまりにもあっけなさ過ぎて言葉が出なかった明日香と深尋も、僚が勝った時には素直に喜んでいた。

そしてそれを見て羨ましがる野次馬のクラスメイトたち。

その場はちょっとしたカオスと化していた。


「山田ぁ、もう諦めてもいいんだぞ?」

「ふんっ藤堂くん。まだ勝負はついていないさ」

なぜか山田は自信たっぷりだ。


「それじゃあこっちの副将は、誠だ!」

隼斗に名前を呼ばれた誠は、とてもめんどくさそうに前に出てきた。


「誠!がんばれー!」

「絶対勝ってね、誠!」


明日香と深尋は、何のために勝負をしているのかイマイチわかっていなかったが、とりあえず自分の仲間を応援することにしていた。


「そっちがその気なら、こっちはこの人に出てもらう!」

山田がバーンっと手を上げて出てきたのは、バレー部の元エースの男だった。


「おおい!山田!そいつは新聞部じゃねえだろっ!」

「やだな藤堂くん。考えてもごらんよ。僕たち文化部のヒョロヒョロがさ、君たちのようなガタイのいい男に勝てると思う?これくらいのハンデいいだろ?」

ハンデを貰う立場の山田がずいぶんとエラそうだ。

しかし、意外にも誠はこれを素直に受け入れた。


「いいのか?誠」

「ああ。それに、ハンデもらって負ける方がダメージが大きいだろ」

誠は相手にも聞こえるようにそう言うと、静かに準備をする。

こう見えて誠もちょっと怒っていたらしい。その雰囲気は、付き合いの長い5人にしかわからないものだった。


相手はバレー部の元エースなだけあって、181cmの誠よりも5cm背が高く、体格的にはほぼ互角だった。

両者がガッチリと手を組む。


「Ready...........go!」

誠がグッと力を入れるよりも先に相手が力を入れてきた。そのため誠は少し押されてしまう。


「誠ー!がんばれー!」

「誠!行け!」


仲間の声援を受け、誠は右側に傾きかけていた自分の腕を、なんとか正面にまで戻した。しかし、体格差があまりない相手のため、なかなか強い。

ちょっとでも力を抜くと、一気に倒されてしまう。


その時「誠くん!がんばって!」という声が聞こえた。

その声は誠が大好きな美里の声だった。

実行委員の仕事が終わった美里は、隼斗たちが腕相撲で勝負をしているというのを聞いて、ここまでやってきた。


美里の応援を貰った誠はパワー全開だ。

「フンッ」

一気に気合を入れ、少しずつ腕を左側に傾けていくと、最後は相手のスタミナ切れで勝負あり。


「勝者、崎元!」

「わあああ!誠!やったあ!」

「誠!カッコイイー!」

「誠くん......!」


明日香と深尋のそばには、いつの間にか美里も混じっていて、女子3人から熱い声援を受けた誠に、周りの男子から羨望の眼差しが向けられていた。


「さて、次が最後だけど、どうする?」

「むむむっ......!やるに決まっているだろう!」

「おおっ山田!お前も男だったんだな!」

「くぅ~っ!バカにしてっ。大将戦は我々の勝ちだ!これで勝ったなら取材を受けてもらうぞ!」

もはや、ハンデではなく傍若無人な要求をする山田。見苦しいぞ山田。


しかし隼斗はこれまで全戦全勝で気分が良かったため、それをあっさり受け入れる。それでいいのか⁉隼斗!


「こっちの大将は、もちろんこの俺だ!」

隼斗はバーンっと胸を張って前に出る。それを見た山田は不敵な笑みを見せる。

「ふふふ、藤堂くん。これまでの勝負はほんのお遊びだよ。これが本当の勝負だ!」

山田がそう言って出てきたのは、柔道部の元部長だった。


「んなっ......!」

「こらー!山田ー!卑怯だぞー!」


呆気にとられる隼斗のそばで、深尋が山田に文句を言っている。それも呼び捨てで。


「お嬢さん、勝負に卑怯はつきものですよ」

「こんなことをして勝って嬉しいの⁉」

「藤堂くんがあなた方への取材をお許しいただけるのなら、勝負せずに済みますよ?どうですか?」


さっきまで及び腰だった山田とは打って変わって、急に立ち居振る舞いが堂々としている。よほどこの勝負に自信があるらしい。


すると明日香が隼斗に耳打ちをする。その明日香の言葉を聞いた隼斗の顔が、みるみると明るくなっていく。


「本当だな?明日香。約束だぞ」

「うん、絶対。約束」


藤堂姉弟で話がまとまると、隼斗は急にやる気を出して勝負をすることにした。


台の上でガッチリと手を握る両者。隼斗はその手を握った感触だけで、すでに負けそうだった。それくらい相手の圧を感じた。


「Ready...........go!」

合図とともに隼斗の腕が右側に倒される。すんでのところでそれをこらえた隼斗は、自身の体勢を立て直し、なんとか五分五分へ持ち込もうとするが、さすが元柔道部。筋力が半端ない。


腕の力だけでは勝てないと思った隼斗は、足を思いっきり踏ん張る。すると、少しずつではあるが、徐々に両者の腕が正面へと戻されてきた。


「いけー!隼斗!山田をやっつけろー!」

「隼斗!がんばって!」


深尋の中で山田はすでに敵になっていた。

その勝負を当事者たちだけではなく、周りにいるクラスメイトたちも全員声を出して応援していた。


隼斗は6人の中でも、とりわけ男子4人の中でも、人一倍筋力トレーニングをしていた。その結果、握力や背筋の数値はメンバーの中でも飛び抜けて高かった。


その隼斗が全身の力を使って相手の腕を倒しにかかる。徐々に、徐々に、真綿で首を絞めるようにゆっくりと、確実に倒れていく。

隼斗も疲れているが、相手の疲れも相当なものだ。お互いの体力を奪い合いながら、隼斗は最後の力を振り絞る。そして.......


「勝者、藤堂!」

最後は相手が力尽き、勝負あり。隼斗の見事な逆転勝利となった。


「やった―隼斗!山田ざまぁみろー!」

「隼斗エライ!がんばった!」


明日香と深尋が喜んでいるそばで、男子4人もホッと一息つく。

実は隼斗以外の3人も、新聞部の取材を受けてほしくなかったので、勝負に勝てて安心していた。


こうして、明日香と深尋に取材をするという願いを絶たれた新聞部は、再び美少女探しに奔走することになった。


腕相撲対決が終わり、みんなが帰り支度をしていると、男子4人は野次馬のクラスメイトたちのところへ行き、何人かの生徒に話しかけている。


明日香も深尋もその行動が気にはなったが、美里がいたため、どうしてこうなったのかを説明していた。そのため、あの4人が何をしているのかわからなかった。


実は4人はクラスメイトの数人のスマホをチェックしていた。


「おい、お前があの2人を撮っていたの知っているんだぞ。今すぐ消せ」

「隼斗、ここの3人もだぞ。おら、さっさと出せ」

「あ、あと、この人もだよ隼斗くん。ほら、ちゃんと1枚残らず削除してね」

「あと君もね。俺にスマホ向けてたでしょ?盗撮はダメだよ」


僚、隼斗、竣亮、誠の4人は、この勝負が始まった時から、誰がスマホをこちらに向けているのかチェックしており、全員まとめて縛り上げていた。


そして全員のスマホからbuddyを撮った画像が削除された。


ちなみに、明日香が隼斗に耳打ちをした内容は、冬休みの英語の課題を全て手伝ってあげるというものだった。

明日香は英語の特進コースに行くくらい英語が得意だが、隼斗はその逆で、英語はてんでダメだった。

双子でも唯一それだけは全く似なかった。


明日香の提案は、英語が出来ない隼斗にしてみれば、喉から手が出るほど欲しいものだったのだ。

そのためには全身筋肉痛になってでも力を出し切って、勝利を掴む。それが藤堂隼斗という男だった。


そして隼斗を中心に、これからも番犬男子4人の暗躍は続く.......かもしれない。



~完~


※あとがき※

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

今回のエピソードは、番犬たちがどのように明日香と深尋を守っていたのか、ということを書いてみました。


本編では隼斗が中心となって番犬ぶりを発揮していたのですが、なかなか踏み込んだお話が書けなかったので、構想にあったものを形にしてみました。

ただ、深尋に関してはデリケートな話だったために、木南に丸投げした形になってしまいましたが、深尋の暴走を防ぎ、未来の恋人へ託したと思って頂けたらと思います( ̄▽ ̄)"


今後ともどうぞ、よろしくお願いいたします。


AYANO

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