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婚約者

 今日は、婚約者となるアルバート王子が訪ねてくる日になっている。

 先ぶれが王子到着の知らせを持ってきたので両親と一緒に玄関外で待っていると、ほどなくして立派な馬車が到着した。

 馬車から降りてきた男性は背が高く、腰には剣を帯びている。金色の髪と翡翠色の瞳をしており王妃さまによく似た顔をしている。

 この人が第二王子で私の婚約者でもあるアルバート王子だ。


「アルバート様、ようこそおいで下さいました」


 お父様が挨拶の言葉を述べ私たちは深く礼をする。


「ソフィア、久しいな」


「ご無沙汰しておりますアルバート様」


 執事が皆をガーデンへ誘うと、お茶の用意ができていた。王子の付き人達は王子に椅子を引き護衛は少し離れたところで待機している。


 今日は薔薇のジャムをふんだんに使ったビスケットや桃のジュレ、色とりどりの小さなケーキ、鶏肉とハーブをサンドしたパンなど茶菓子と軽食も用意されている。

 甘いものが多いため、お茶は椿の茎から作られるやや渋みの強い紅茶が出された。


「もうすぐ婚約式だが、何か困っていることはないか?」


 アルバート王子が問いかけてきた。


「いいえ、ドレスも仕上がりを待つばかりですし、特にございません」

「活発な性格のソフィアが退屈しないか心配ではある」


 そういいながらも悪戯っぽく目元が笑っているのはどうしてなのか。


「アルバート様、私はもう小さな子供ではありません。野山を駆けたり致しませんよ」


 アルバート王子とは幼少期によく一緒に遊んだが、王宮の裏手の山で走り回って洞穴に入ったら出口がわからなくなり、大々的に捜索隊が出たことがあった。あるときは、木登りをしているところを侍女たちに大声で叱られたりしたがそれは何年も前の話。流石に17歳になってまでそんなことはしないってば。


「そうだといいがな。ついていった私までとばっちりでまた父王に尻を叩かれるのはごめんだからな」


 そういうと、その場にいた全員が笑いに包まれた。

 私は恥ずかしすぎる昔の話をされて顔から火が出そうになった。

 横目で待機している護衛の騎士を見ると彼らも笑いをこらえた顔をしているではないか!

 もう~!そういう話をみんなの前でするなんて絶対わざとですよね?と思いながら王子を上目遣いで

 睨むと、アルバート王子は笑いながら 「すまん、つい」 と謝るのだった。


 アルバート王子は第二王子でありながら、兄の第一王子を補佐すべく外交の役割を担っている。

 第一王子である皇太子は、軍部である騎士団、国内の傭兵団などを束ねる立場にあり、兄弟で役割分担をしながら、現王を支えている。


 外交を担う立場のため、外国からの特使を迎えることもあればアルバート王子が外国へ出向くことも多いため、一度国外へ行くと何か月も帰国しないことも多い。

 外交官としての能力は他国からも高く評価されており、多言語を操ることができる秀才でもある。


「来月の婚約の儀の前に王宮ではなく離宮を用意した。婚約の儀の後からソフィアと私はその離宮で暮らすことになるが、今日はソフィアとその離宮の下見へ行こうと思うが、これから出かけられるか?」


「王宮の中ではなく、離宮なのですか?」


 てっきり王宮の一区画で暮らすものと思っていたので面食らう。両親も困惑した顔をしている。


「そうだ。先々代の王が所有していた離宮だが、私たちのために修繕と改築をさせていた。離宮では不満か?」


「いいえ、アルバート様がお決めになったことでしたら私に意見などありません」

「とりあえず出かけようか」


 早速二人で王子の馬車に乗り離宮へ向かうのだった。






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