この先の人生を考えると
シャルルの店は、最近王都の貴族の間で人気の店だ。
それほど大きくもない店に入ると、店主のシャルルが笑顔でこちらへ向かって歩いてきた。
「ソフィア様、本日はご来店ありがとうございます。早速仮縫いをさせていただきますので
こちらへどうぞ。」
店主のシャルルに促され仮縫い用の別室に入ると、お針子たちが一斉に礼をする。
「本日はよろしくおねがいしますね」
「ソフィア様、ご要望がございましたら何なりとお申し付けください」
あれやこれやと注文を出して一部やり直してもらったりしながらも無事に終了した。
結構立ちっぱなしで疲れたのとお腹も空いてきたので屋敷へ戻ることにした。
屋敷に帰って遅めの昼食を済ませて部屋に戻る。ソファーにもたれかかって休んでいると、開けた窓から蝶が舞い込んできた。光の加減なのか虹色に見えるその蝶はなにか言いたげに私の周りをひらひら飛ぶとまた窓から出て行った。
婚約・・・結婚・・・
家同士の決めたことでこの国では普通の事。庶民は自由に相手を選べるが、家によっては親同士が決める習慣もまだ残っていたりする。
私はこのまま婚約して結婚してこの先の人生を贅沢に暮らすだけになるんだろうか。
そんな人生は本当に楽しいのだろうか。
そんなことお父様やお母さまに言ったらびっくりされてしまうから言わないけど。
侍女が湯あみの用意ができたと声をかけてきたのでゆっくり入浴することにした。