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メキシコ『アステカ武闘大会』潜入! ランキング売買の闇を追え!③


 不正疑惑のある剣士を視察するため、メキシコの『アステカ武闘大会』に一般客として潜入したチーム・バンドー。

 大会オープニングのエキシビションマッチでは、モデルから格闘家へと転身したリンの兄、ロビーが劇的な逆転勝利をあげた。


 だが、突然現れた警官から八百長と違法賭博の容疑をかけられ、両陣営は警察署に連行。

 リンとシルバはロビーに付き添う形となり、バンドー、クレア、ハインツは賞金稼ぎ仲間のハドソンとパクを迎えた5人体制で、剣術トーナメントの視察へと挑む。



 9月15日・11:00


 中南米の違法賭博元締め、レアンド・ゴメスの配下であるラファエル・バスケス。

 彼は故郷であるメキシコの『アステカ武闘大会』の剣術トーナメントという、比較的マイナーな賭博ターゲットを請け負っていた。


 世界中から注目の集まるアステカ武闘大会の格闘トーナメントは、賭博の商売敵も多く、わざわざ現地に赴く事は摘発の危険を高めかねない。

 組織は格闘トーナメントの賭博を本部であるアルゼンチンで仕切り、レベルがさほど高くなく、ベット先が多岐に渡る剣術トーナメントを、参加者と元締めがともに一攫千金を狙える「穴場」に育てようとしているのである。



「……控え室から話し声が聞こえる。コールはひとりじゃないらしいな。だが、タイミングは今しかない」


 約1時間後の12:00から始まる、剣術トーナメント第1回戦。

 バスケスの手駒であるモレノとコールの試合は第3試合であり、今を逃せばコールとの接触機会は見込めなかった。


「……すみません。コールさん、おられますか?」


 バスケスは声のトーンも変える事なく、軽いノックから控え室の様子を窺う。


「誰だ? コールはもうすぐ試合がある。大会関係者以外は来ないでくれ」


 返事をしたのはコールではなく、彼のセコンドとして待機しているチーム・HPの双頭リーダー、パク。

 バスケスはお構いなしにノックの強度を高め、彼一流のハッタリから物事を押し通した。


「関係者だよ。俺はラファエル・バスケス。中南米の賞金稼ぎで俺を知らない奴はいないはずだ」


 ラファエル・バスケス……バンドーから聞いた違法賭博の大物が、いきなりのご訪問である。

 パクとコールは顔を見合わせ深呼吸し、バスケスがひとりである事をドア窓から確認して控え室を開ける。 



「悪いが、イカサマには乗らないぜ。コールはあんたと違って、引退して堅気になる身だからな」


 作業服に野球帽、左頬の手術跡に塗られた僅かなファウンデーション……。

 チーム・バンドーからの情報ほぼそのままの風貌のバスケスは、声のトーンこそやくざ者らしいドスが効いているものの、パクが一見した所では格闘技好きなちょいワルオヤジといった印象だ。


「……フッ、分かっているさ。統一世界の危機を救った混合部隊のパク様とその仲間なんだろ? 俺がここに来た理由は、あんた達にその正反対の事を伝えるためだ」


 かつては軍の強硬派やフェリックス陣営と戦い、結果として正義の味方的な立ち位置となった、チーム・バンドーをはじめとする一部の賞金稼ぎ達。

 バスケスは彼等をからかう様な仕草を見せたが、フェリックスが裏稼業から撤退した事で、結局は違法賭博業界も得をしているのである。


「正反対とは……どういう事だ?」


 コールは思わず身を乗り出し、試合に集中出来る環境を早急に求めていた。


「……俺はあんたの対戦相手であるモレノから八百長を頼まれた。奴は体調不良を押して武闘大会に参加している様だが、地元の大会初参戦だけに無様な姿は見せられないらしい。せめて初戦だけは勝ってプライドを守れる様に、対戦相手を買収出来ないかと持ちかけられたのさ」


 バスケスのこの話は、実力に疑惑のあるモレノが売買したランキングを盾に参戦するための口実に過ぎない。

 だが、ここまであからさまに内実を語った上で実際に八百長を行えば、わざわざコールに顔を見せたバスケス自身にとっても自殺行為だろう。


「……俺だってバカじゃねえ。モレノのランキングはあんたより上みたいだが、今の奴はあんたに勝てるどころか、1ラウンド終了まで体力が持たねえだろう。ひと目で八百長だと分かる試合なんて危なくてやってられねえぜ。はした金で楽をしようと考える様な奴は、一度痛い目を見た方がいい」


 まさかの八百長撤退宣言。

 バスケス側としては当然、モレノの敗退方向で賭博を行うのだろうが、少なくともコールがトラブルに巻き込まれる事はなくなった。


「思い切り戦ってくれ。俺達の仕事にも、最低限通すべき筋ってもんがあるんでな」


 事態を思わぬ方向に振り回し、足早に控室を立ち去ったバスケス。

 

 彼ならば恐らく、モレノがランキングを売買した経緯と証拠を握っているだろう。

 しかしながら、お尋ね者のバスケスが自ら賞金稼ぎ組合や警察と接点を持つはずがなく、パクは彼の後ろ姿を苦々しく見送る事しか出来なかった。



 9月15日・11:15


「驚いたぜ。ジェイムズ・ハドソンと言えばそのライフスタイルも含めて、俺達黒人剣士の憧れなんだ。わざわざ俺なんかを訪ねてくれるなんて感激だよ」


 ランキング売買の疑惑があるコロンビア出身の剣士、アレハンドロ・カイセードは、ハドソンの急な訪問を疑う事もなく歓迎している。

 

 総合的にヨーロッパの白人が幅を利かせる剣士ランキングで、黒人剣士の最上位として意地を見せているハドソン。

 彼の自由奔放なキャラクターは、若い黒人が悪の道に走らなくても本音を貫ける……そんな希望を与えていた。


「チームメイトのコールの引退試合を観に来たんだが、あんたは今大会の参加者で2番目にランキングが高いから注目していたのさ。1番はコレーアって奴らしいが、俺はラテン系特有の小ずるさみてえなもんが苦手でな。応援するならやっぱ同じ黒人だぜ」


 一聴した限りでは、ハドソンの言葉は黒人同士の仲間意識を全面に押し出した激励であり、昨日のガイドへの恨み節も僅かに滲んでいる。

 だが、彼は巧みにコレーアの名前を出しており、カイセードがランキング売買に関するボロを出すためのトラップも仕掛けているとみていいだろう。


「……コレーア? 奴は大した実績もない、たまたま上手くやっただけの男さ。 一緒にしないでくれ。もし対戦する事があれば、俺がキャリアの差を見せつけてやるよ」


 カイセードはコレーアの名前を出されるや否や、明らかに顔をしかめて面白くない素振りを見せていた。

 

 やはり彼は、自身とコレーアのランキングの背景を隠しているに違いない。

 だが、『ラ・マシア』のワルを密告してランキングの2段上げに成功したコレーアを妬んではいるものの、これら一連の行為が組合の規約に違反するという後ろめたさには触れられない。

 

「……カイセード、俺はあんたを応援したくてここに来たのは事実なんだが、実は理由はそれだけじゃねえんだ。まずはさっき名前を出したコレーアについて、少し訊きたい事がある」


 ハドソンは敢えてカイセードの疑惑を脇に置き、彼を安心させながら、コレーアのランキング売買の裏付けを急ぐ。


「あんたはランキングでもそこそこ名前を売りながら、一時期賞金稼ぎを引退してスペインの運送会社に転職しようとしていたよな? だが、あんたが転職しようとしていた運送会社とその上層部が長年悪行を重ねていた事が判明し、あんたは働く前から悪党の一味だと誤解された……」


 相手の立場に寄り添いながら、ハドソンは自身がカイセードの味方であると思わせている。

 自分を詮索しないハドソンを前にして、カイセードはその安心感からか、今まで溜まっていた鬱憤(うっぷん)を吐き出していた。


「そうなんだよ! 俺は腰痛が酷くて、これからも剣士を続けられるのか悩んでいたんだ。だからただ、南米の同胞が多くて稼ぎも良さそうな会社で働いてみようとしただけなんだよ。なのに警察の奴等は、俺がコロンビア出身の黒人だからって、根っからの悪党みたいな目で見やがるんだ!」


 世界屈指の麻薬大国と言われた20世紀から、その汚名をなかなか返上出来ないコロンビア。

 しかしながら、カイセードにはスイスで成功したサッカー選手の息子として、非行に走る事なく新たな故郷の治安を守ってきたという自負がある。


「俺は失礼がない様に、ここに来る前にあんたの事を調べさせてもらったよ。あんたは先日引退した、ファビアン・フレイという剣士の弟分として長年コンビを組み、スイスでは実力派として知られていた。武闘大会参戦は今回が初めてらしいが、そこは何か理由があったのか?」


 組合から得た情報をもとに質問を浴びせるハドソンに応対すべきか、少しばかり間を置いて身体を硬直させるカイセード。

 

 だが、今のハドソンはコレーアの情報を引き出すために自分に質問しているのだろう。 

 そう考えたカイセードは呼吸を整え、伝えてもいい情報を慎重に選んで口を開いた。


「……フレイの兄貴には世話になったよ。俺の親父は有名なサッカー選手だったから、ガキの頃の俺は調子に乗っていたんだ。俺が本気を出せば、喧嘩やスポーツで負ける訳がないとね。だが、剣士になりたての頃、ひとりでマフィアを追い出そうとして逆に捕まった俺を、フレイの兄貴が助けてくれたのさ」


 カイセードにランキングを売った疑いのあるフレイは、かつてランキングのトップ50に入った事もあるスイス屈指の名剣士。

 兄貴分をリスペクトするカイセードの瞳にはいささかの曇りもなく、彼は自分が剣士として一人前に成長した証として、フレイからランキングを譲り受けた……そういう認識を持っているに違いない。


「フレイの兄貴は2年前にめでたく結婚したんだが、去年生まれてきた娘さんが身体に障がいを持っていたんだよ。行政からサポートを受けるためには、いつ何があるか分からない賞金稼ぎじゃなく、堅気の仕事をしないといけねえ。俺は兄貴の引退にちょっとした見舞い金も払ったし、賞金とヨーロッパ以外での実績も手にするために、それほどレベルの高くないアステカの剣士トーナメントに参加しようと思ったのさ」


 意図的がどうかはともかくとして、カイセードは見舞い金という言葉を使い、自身のランキング売買容疑はぼやかしている。

 

 とは言うものの、フレイと家族がスイスを離れ、より仕事や医療の充実した地域を必死に探していると考えればどうだろう?

 カイセードのこの言葉は、フレイが現在消息不明という組合の調査の裏付けにもなるはずだ。


「あんたが真っ直ぐな人間だと分かって良かったよ。そこでコレーアの登場だ。奴はあんたよりランキングが上だが、元はと言えばあんたが転職しようとしていた運送会社の親会社の人間なんだ。しかも2ヶ月前に剣士になったばかりなのに、下積みもなくランキング圏外からいきなり72位になった。おかしいと思わねえか?」


 ハドソンが本題に斬り込むと、カイセードの表情は俄然険しくなる。

 だが、自分はハドソンから信用を得ているという確信が彼の警戒心を解きほぐし、カイセードは遂に真実を解き放つ。


「……コレーア本人の素性までは分からねえが、奴にはドラッグ密輸に関与していた同僚がいたらしい。そして、そいつらを警察に売った。恐らく奴は警察と司法取引をして、2ヶ月間は剣士登録しながら奉仕活動でもしていたんだろう。売り飛ばした同僚がかなりのワルだったら、剣士デビューが許された時点でいきなり箔が付いてもおかしくねえからな」


 容疑確定に必要な情報がほぼ出揃い、両者の間にやや不自然な沈黙が流れる。

 ハドソンは不敵な笑みを浮かべ、悪意の感じられないカイセードを諭すための言葉を選び始めた。


「カイセード、よく聞いてくれ。この2ヶ月の間に、ランキングの75位にいたヤツェク・カミンスキーという剣士が引退した。だが、そいつは何らかの方法でコレーアと接触し、奴に敗れて引退するというシナリオで、コレーアに75位というランキングを売り渡した疑惑が持たれている。つまりだ、あんたが引退するフレイから円満に引き継いだ77位ランキングも、組合の規約に抵触する恐れがあるんだよ」


「何だって!? もうランキングは出てるじゃないか!」


 カイセードの驚きに、わざとらしさは窺えない。

 

 彼とフレイのパートナーシップはスイスの組合関係者ならよく知る所であり、互いにスパーリングで練習試合もこなしている。

 更にカイセードが一時離脱する前のランキングはともに近い順位であり、フレイが引退間際に組合に伝え受理された時点で、カイセードがこのランキングが自分のものと考えても不思議はないのだから。


「……新米剣士だけでなく、一度剣士を辞めた人間はランキング外からのスタートになる。例えばあんたが24位の俺を倒したとして、いきなり24位にはなれねえ。ランキング外からの躍進は、余程の新人豊作でもない限り90位台に入るだけだ。つまり、ランキング外から72位になったコレーアは、例えカミンスキーを倒し、大物のドラッグディーラーを捕まえていたとしても、本来90位台じゃなきゃおかしいのさ」


「…………」


 これまでの話しぶりからして、カイセード自身もフレイからランキングを譲り受けた事に一抹の不安はあったのかも知れない。

 前髪を掻きむしりながら、次の言葉が選べずに虚空を見つめている。


「まあ、あんたの場合は特殊なケースだ。多分スイスの組合が、あんた達の貢献度から細かいルールを適応しなかったんだろう。だが、運悪くあんたが悪党のいる会社に転職しようとしたから、コレーアと同列に疑われちまったのさ。俺から組合に説明してやるよ」


 ハドソンの厚意に胸をなで下ろすカイセード。

 彼の瞳に再び生気が戻り、間もなく始まる試合に向けた気合いも高まっていた。


「……実は俺達とチーム・バンドーは、ランキングを不正に買い取った疑いのある選手として、あんたとコレーア、そしてモレノって奴を調査しているんだよ。あんたは現時点でグレーに近いクロ扱いされているが、シロに近いグレーだと分かった。この大会で結果を残せば、恐らく今のランキングが認められるだろう」


「ありがとうハドソン、恩に着るよ!」


 このままランキングに無知でいれば、いつの日か恐喝や仲間内のトラブルに巻き込まれていたかも知れない。

 カイセードはハドソンの大きな手を握り、何度もうなずく様に頭を下げている。


「……だが、あんたと違ってコレーアとモレノには実力が伴わっていねえ。つまり八百長や違法賭博をやる可能性が高いんだよ。奴等と戦う事になった時、その筋の大物が接触してくるかも知れないから、すぐ俺達に知らせてくれ」


「分かった、俺だってフレイの兄貴のランキングは誰にも渡さねえよ!」


 幸いにして、カイセードの出番は第5試合。

 心身を整える時間はまだ十分に残されていた。



 9月15日・11:30


「……ベシーノだ。すまねえ、さっきのタレコミは間違いだったぜ。俺の故郷のアルゼンチンにもサルシードって格闘家がいてよ、八百長と違法賭博をやった噂はそっちだったんだ。今から警察署に行って話をするから、サルシードとあの若いのを解放してやってくれ。俺は前科者だし、相応の処分は受けるよ」


 バスケスの弟子であり、違法賭博の元締めであるレアンドロ・ゴメスの同胞であるチンピラ、ヘンツォ・ベシーノ。

 

 彼は多額の報酬と引き換えに、バスケスやゴメスの罪を肩代わりする役割を担っていた。

 加えて彼は八百長や違法賭博の前科を持っているため、警察はバスケス達以外の八百長や違法賭博の情報をベシーノに頼りきっていたのである。


「おいベシーノ、何て事をしてくれたんだ! サルシードの大ファンだった市長もおかんむりなんだぞ? 俺の顔に泥を塗りやがって……3ヶ月くらいぶち込んでやるからな!」


 レジェンド格闘家の一大スキャンダルが一転し、メキシコシティ警察組織の赤っ恥と化す。

 警察幹部達はがっくりとうなだれ、サルシード達への謝罪を誰に押し付けるかで大喧嘩を始めていた。

 


「これから出頭か。毎度の事とはいえ、すまんなベシーノ。奴等の機嫌が収まるまで大人しくしていてくれ」


「バスケスさん、俺とあんたの仲だ、気にしないでくれ。それより報酬ボーナスのバイク、楽しみにしてますぜ」


 格闘トーナメントに一時的な混乱と警戒をもたらしたバスケスの策を受け、メインアレーナにはサブアレーナの警備員と警官も動員された。

 これで格闘トーナメントに群がる商売敵の賭博屋は一掃され、逆に剣術トーナメントの八百長と違法賭博はやりやすくなるに違いない。


「……ベシーノ、コレーアは昨日の夜に自分で対戦相手を買収すると言ってから連絡がないんだが、大丈夫なのか?」


 周囲を見渡し、無意識のうちに小声でベシーノに訊ねるバスケス。

 彼自身が手を下さなければ検挙される不安はないものの、かつての仲間を売ってランキングを上げたコレーアの物怖じしない行動力は、賭博の専門家からも期待と警戒の両面で目をつけられていたのだ。


「コレーアの対戦相手であるアルバロ・マガジャネスは、昔奴からドラッグを買っていた弱みがあるらしいです。ただ、バスケスさんが会ったパクみたいな、少しばかり怪しい賞金稼ぎもいますからね。スパイみたいな奴等に見つからない様に、買収にドラッグをちらつかせるのはやめろと釘を刺しておきました」


 バスケスの不安を先回りして、ベシーノは既に効果的な一手を打っていた。

 バスケスは受話器の向こうで格好を崩し、とりあえず今日の時点でやるべき事はやり終えたと確信している。


「流石だな。ゴメスさんも、何故こんな優秀な奴をメキシコ駐在役にしたんだろうな? アルゼンチンで右腕に置いておけばいいものを」


「メキシコの方が飯が美味いですし、女も明るい。俺には合っていますよ、またいつか会いましょう」


 間もなく罪に問われようとしているベシーノに、違法賭博が日々の生活に密接しているバスケス。

 両者はそんな特異な背景を微塵も感じさせない明るさを見せているが、それはすなわち、中南米に犯罪が蔓延しきっている事の裏付けだった。



 9月15日・11:40


「……ま、色々あったけど、俺もサルシードさんもだいぶ本音でぶちギレたからスッキリしたよ。ジェシー、シルバ、付き添ってくれてありがとう。やっと俺も堂々たる勝者として取材を受けられるぜ!」 


 拳を交えた者同士にのみ宿る、奇妙な友情。

 勝利だけにとどまらず、サルシードを通じてメキシコ格闘界に太いパイプを築いたロビーのキャリアは、これから向上が期待出来る。


「私達は仕事に戻らないといけないから、今日はお祝いには参加出来そうにありません……。だから近いうちに家族皆でお祝いしましょう。でも、勝利の宴は程々にね!」


 無事に容疑が晴れ、大会期間中は取材攻勢が予想されるロビー。

 リンは彼の妹として、兄がメキシコの店で喜びのあまり乱痴気騒ぎ……などといった醜聞だけは避けたい所であった。



「……しかし、一体誰が何のためにこんな偽のスキャンダルを撒き散らしたんでしょう……?仮に嘘のタレコミをしたという男がバスケスやロペスの配下だったとして、大した時間稼ぎにはなっていませんよね? むしろ格闘トーナメントの警戒が厳しくなって、八百長や違法賭博がやりにくくなるはずなのに……」


 実質的にワイフと言ってもいいリンに対して、シルバは未だに丁寧な口調が抜けていない。

 だが、そこが彼の魅力でもあり、軍隊やチーム・バンドーの厳しい戦いを経験しても変わらない人柄は、リンにとっても自身の決断の正しさを証明している。


「ひょっとして賭博屋は、格闘トーナメントの仕事を強豪が出揃う明日からにして、今日の間に警戒を強化させる事で商売敵を締め出すつもりなのかも……あっ!? シルバ君、あの人達……?」


 何かに驚き、リンが指差す先には、アレーナの控え室に通じる非常口にたむろする3人の男達。

 その顔ぶれは、チーム・バンドー、中でもシルバとリンには因縁深いものであった。



「……ん? お前……もしかしてシルバか? 久しぶりだな。お前はトーナメントに出ないのか、残念だよ」


 格闘家として孤高のオーラを放つその男、エキセル・トーレス。

 彼はチーム・エスピノーザの一員として知られていたが、チーム解体後はプロ格闘家に転向し、『JED(ジェッド)トーレス』というリングネームで活躍している。(本編第41話参照)

 

「なんだてめぇら! もう俺達とは関係ねえだろ!」


 トーレスの隣で苛立ちを隠せない小柄な男は、ハビエル・ガジャルド。

 彼も元チーム・エスピノーザの一員であり、現在はサッカースクールの代表として、表向きは堅気の成功を収めていた。


「……元気だったかシルバ? その雰囲気じゃあ、幾分身軽な立場になったみてえだな。悪いが、トーレスにお前らの応援は要らねえぜ」


 3人の中で最後に口を開いたのは、ダビド・エスピノーザ。

 

 前科持ちとなってしまった現在は、所有しているロックバーとガジャルドのサッカースクールの共同経営に専念しており、トーレス、ガジャルドとともに幾分穏やかな雰囲気になっている。

 この3名のファーストネームの頭文字を合わせた言葉が、『JED』なのだ。


「……俺達は今、剣士のランキング不正とそれに伴う八百長や違法賭博の調査を頼まれているんだ。もうお前達につきまとう事はない、安心してくれ」


 因縁深い相手に対し、シルバは無難な対応でこの場をやり過ごそうと試みる。


 だが、チーム・バンドーは彼等に複雑な想いを抱えていた。

 ダビドの兄であるルベン・エスピノーザは凶悪なテロリストであり、その罪状から致し方ないとはいえ、彼が射殺される現場を制止出来なかったのである。(本編第66話参照)


「……兄貴の事なら、気に病む必要はねえぜ。奴はやり過ぎたんだ。弟の俺の手にも負えなかったからな」


 3人の肩先を静かに通り過ぎようとしていたシルバとリンは、その言葉を聞いて僅かばかり心が軽くなる様な感覚を覚えていた。

 だが、エスピノーザもこのまま大人しく余生を送るつもりはないらしい。


「シルバ、勘違いするなよ。俺はこのままじゃ終わらねえ。お前達が手を出せねえくらいビッグになってやるよ。トーレス、そろそろ出番だぜ。1回戦で格の違いを見せつけてやれ!」


 エスピノーザからその言葉を聞いたシルバは、むしろ安堵感すら漂わせる微笑みを浮かべ、リンとともに仲間達の待つサブアレーナ選手控え室へと急いだ。



 9月15・11:40


「ロビー達の八百長タレコミはガセだってさ! 今ケンちゃんとリンもこっちに向かってるよ!」


 シルバとリンが帰路についている頃、チーム・バンドーはコレーアの控え室付近を張り込み中。


 友人の容疑が早々に晴れ、シルバからの連絡を受けたバンドーの声も明るい。

 パクとハドソンからの連絡もあり、後はコレーアの尻尾を掴めば事の真相が見えてくるはずである。


「パクの話しぶりだと、コールがモレノに負ける事はまずないだろう。控え室に戻った後のモレノの仕事は逃げるだけだ。その前に待ち伏せしてランキング売買の詳細を問い詰めないとな」


「モレノが八百長を断られても試合に出るって事は、負けても何らかの利益があるって事よね。アレーナからは出て行っても、分け前をもらうまではメキシコからいなくなったりはしないはずよ。組合の手も借りて、まずは滞在先を押さえるべきね」


 ハインツとクレアのやり取りを耳にして、バンドーにはひとつのアイディアが生まれていた。


 かつてシルバの両親の仇を追い詰めるため、バンドーはシルバとともにラテン系のワルに変装した事がある。(本編第44話参照)

 サモア系の血を引くバンドーとブラジルの血を引くシルバは、互いに浅黒い肌の持ち主であるため、東洋系の瞳をサングラスで隠せばラテン系と見分けがつかない。


「……俺とケンちゃんがバスケスの関係者を装って、モレノにコンタクトしてみるよ。奴が八百長と違法賭博に関与しているなら、バスケスの伝言だと言えば周囲を気にして控え室の中に入れてくれるはずだ。ハインツは俺達に隠れて待機、クレアは組合と協力してモレノの滞在先を押さえてくれ」


「3段階攻略か……そいつはおもしれえ。おっと、シルバとリンが間に合った様だな!」


 バンドーのアイディアに乗り気なハインツは、非常口の背後から射し込む明かりからチームメイトの姿を見出す。

 これで役者は勢揃いだ。



「遅くなりました! パクとハドソンのメールからモレノとカイセードは何とかなりそうですが、コレーアとはコンタクト出来ましたか?」


 エスピノーザ一行と別れてから、シルバはかなりのスピードでサブアレーナに駆けつける。

 仕事であるがゆえに、引き離されたリンも不満を漏らさず息を切らして到着。


「……それがさぁ、試合まではかなり時間があるはずなのに、俺達が来てからコレーアは一歩も控え室から出ないんだよ。デカい音でラジオをつけているから、中で何かしているとは思うんだけど、パクがバスケスと会っている時間とも重なっているから、中にコレーア以外の人がいるかどうかは分からない……」


 少し離れた位置にあるはずのメインアレーナから、今日一番の歓声が伝わってくる。

 優勝候補の登場か、それとも劇的なKOシーンがあったのか……。

 

 バンドー達は、かれこれ1時間近くも交代でコレーアを監視中。

 怪しまれない様に距離を取りつつ、なるべく物音を立てずに誰かを待つ素振りを演出してきたが、自然な張り込みが出来ているとは言い難く、格闘トーナメントに観客が集まっていた事が幸いだった。


「公式プログラムに載っているアルバロ・マガジャネスって奴が、コレーアの対戦相手に決まったらしい。この写真だと短髪にターバン姿だが、ラテン系は髭やアクセサリーなんかをしょっちゅう変えやがるからな。コレーアの控え室に他の関係者がいたとしても、八百長談合の証拠にはならねえぜ」


 ハインツは苦虫を噛み潰した様な表情を見せている。

 しかしながら、間もなく試合が始まるとなれば運営スタッフも控え室を頻繁に行き来し、不穏な動きはチェックされる様になるはず。

 

 タイムリミットの到来か、遂に控え室のドアノブが動く。

 チーム・バンドーは慌てて廊下の曲がり門から後ろに下がり、コレーアの死角にポジションを取った。



「…………」


 辺りを見回しながら控え室から出てきたのは、サングラス姿にウェーブのかかった長髪と革ジャンを合わせた、季節外れに暑苦しい風貌の男。

 この暑さの中でも革ジャンのポケットに左手首が入ったままであり、そこに何らかの秘密があるのかも知れない。


(あっ? タトゥーが……)


 シルバの背後に隠れていたリンは、男の左手首にあるドクロのタトゥーを瞬間的に確認。

 男は革ジャンの上からでも屈強な肉体が容易に想像出来るため、どうやらただの格闘技ファンではなさそうだ。



【剣術トーナメント、間もなく開幕致します。第1試合、第2試合の出場者は、サブアレーナ袖口にてご待機下さい】


 館内放送によるアナウンスで、手持ちぶさただった野次馬や出番の遅い選手はサブアレーナへと急行する。

 コレーアの出番は第7試合だが、やはりと言うべきか、彼は控え室から出てくる気配がない。


「コールとモレノの試合は第3試合だったよな? 俺達も観客になるか、行こうぜ」


 ハインツの言葉にうなずくバンドーとクレア。

 一方でリンはシルバに耳打ちし、自身の見たタトゥーの持ち主を特定しようと呼びかけていた。


「皆さん、先に行って下さい。ジェシーさんが何か手掛かりを見つけたみたいですから、自分達は協会と運営スタッフに話を訊いてみます」


「分かった。俺達の監視も上手くはなかったし、一部の選手達には怪しまれているかも知れない。ケンちゃん達も控え室を通るのはやめて、一回外に出てから運営に行った方がいいよ」


 シルバとリンは控え室に到着したばかりだが、コレーアを監視していたバンドー達の仲間であると認識した者もいるに違いない。

 バンドーはふたりにアドバイスを残すと、手にしていたカップコーラを一気飲みする。


「うん、コーラはメキシコのが一番うまかったな!」

 


 9月15日・13:00


「それではこれより、剣術トーナメント第3試合を行います。赤コーナー、ラウール・モレーノ!」

 

 いよいよ第3試合。

 

 ランキング売買疑惑はあるが、現状記録としてコールより順位が上のモレノが赤コーナーからの登場。

 しかしながら、やはり彼は大舞台に見合う実力と経験値を持ち合わせていないらしく、過度の緊張から肩で息をする姿さえ見てとれた。


「青コーナー、ドワイト・コール!」


 中南米では堅実な実力派剣士として知られているコールに寄せられる歓声は、正体不明のランカーであるモレノより遥かに大きい。

 勝負事に目の肥えたメキシコの観客だけに、例え引退間際の大ベテランであってもコールの勝利は揺るがないといった印象である。


「……さて、どう出るか。剣術は格闘技と違って反則がバレやすい。モレノは敗退でも利益を出せるからくりがあるから参加したんだろうが、順当負けだと二束三文の配当にしかならねえ。1ラウンドを逃げ回って的中者を減らすつもりなのか?」


 ここまでの2試合を見る限り、ハインツの持論通りアステカ剣術トーナメントのレベルは高くない。

 現在剣士ランキング第1位である彼は勿論だが、バンドーやクレアを脅かす剣士も見当たらない中で、実績の抜きん出たコール相手ではモレノに勝機は見当たらなかった。


「モレノって確か、喘息持ちの噂もあるんだよね? 逃げ回るにもスタミナが要るし、反則覚悟でわざとバッティングして、コールだけ出血させて試合続行不可能を狙うのもアリじゃない?」


「……モレノがあんたと同じくらい、頭突きが強ければね」


 バンドーの推測はクレアに秒で返され、ハインツも必死に笑いを堪える。

 シルバとリンの調査の結果もまだ出ていないだけに、モレノが実力でコールと渡り合わなければ、チーム・バンドーも緊張感を維持するのは難しいだろう。

 


「ラウンド・ワン、ファイト!」

 

 大方の予想を裏切らない、静かな試合の立ち上がり。

 

 殆どの観客の関心事は、モレノという男の実力の程だろう。

 しかしながら、彼は緊張の糸をほぐすためにガードを固めながら深呼吸をするだけで、対峙しているコールよりも、セコンドについて後方待機しているパクの方が苛立ちを露にしていた。


「……やれやれ、コイツ本当に戦う気があるのかね?」


 巨体を屈ませながら通路を歩き、バンドーの隣に腰を下ろすハドソン。

 彼は自分が説得したコレーアに悪意がない事が判明し、ひと仕事を終えてリラックスした表情を見せている。


「どうした、カウンター狙いか? そもそもお前、試合が出来るコンディションなのか?」


 その気にさえなれば、いつでもラッシュをかけられるコール。

 彼はバスケスからも見限られたモレノに憐れみを感じつつ、序盤は不意打ちに備えて少しずつ間合いを詰めるにとどめていた。


「余計な心配は要らねえ……くっ!」


 モレノが返答した瞬間、コールは重心の力が抜けた隙を狙って相手を攻撃。

 ガードだけは盤石だったモレノは真っ正面でコールの剣を抑えたが、そのパワーを吸収しきれず左右にふらついている。


「がっ……ゲホゲホッ!」


 呼吸を乱した訳でもないのに、急遽相手から離れて激しく咳込むモレノ。

 どうやら彼が喘息持ちという噂は本当らしい。


「おいどうしたよ! お前ランキングに入っているんだろ? 体調が悪いなら参加すんなよ!」


 格闘トーナメント程ではないものの、決して安くはないチケット代を払った観客は、覇気の見えないモレノを一斉にブーイング。

 見かねたレフェリーもモレノに辞退を勧めるが、訳ありの剣士は首を大きく横に振った。


「コール、元々遠慮は要らねえ相手だ! 今大会の最短決着でも狙いな!」


 今にも素手でモレノと戦いそうなパクの檄を背中に受け、コールは相手の胸の防具を狙った突きをシンプルに繰り出していく。

 胸の防具を破壊された者は即敗退となり、恐らくは違法賭博に関わる者も得をしない、正義の選択と言って良いだろう。


「……ちっ、こんな負け方は……まずい!」


 誰もが勝利を狙うはずの武闘大会では聞き慣れない台詞だが、モレノは確かにそう言い残し、どうにかコールの突きをかわし続ける。

 素人丸出しなモレノの動きにかえってペースを乱されたコールは、やむなく相手の左肩の防具を斬り裂いて破壊した。


「ぐわっ……!」


 コールの正確な技術もあり、その悲鳴ほどにはモレノのダメージはない。

 だが、コールにポイント1が加算された事で初めて観客が沸き上がり、モレノに時間稼ぎは許されなくなる。


「何をやらかしたかは知らないが、欲を出さずに大人しく地下に隠れていれば良かったのにな!」


 臆病なくらいのガードにより致命傷だけは避けているものの、肩、腰、腹部とダメージが蓄積するモレノの上半身には限界が近づいている。

 もう一撃、肘の防具を破壊すれば、恐らくモレノは剣を構える握力すら失うに違いない。


「……とどめだ!」


 相手の右肘を狙うため、コールが下からアッパースウィングで剣を振り上げたその瞬間、それまで貝の様にガードで自身の顔面を隠していたモレノが、突然剣を前方に突き出してきた。


(何だと!? その体勢から俺の何処を狙うと言うんだ!?)


 モレノの剣はコールの左頬を大きく外れる軌道だが、コールの剣はノーガードのモレノの顎に近づいている。

 このままではモレノの首が斬り落とされかねない。


「えっ!? ヤバイよヤバイよ〜!」


 バンドーは何処かで聞いた事のある悲鳴を上げ、異様な雰囲気に飲まれるアレーナで、クレアをはじめとする女性客は咄嗟に両手で顔を覆った。


「くああぁぁっ……!」


 コールは全身全霊で腕の動きを制止しようと試み、硬直した上半身が下半身の自由を奪ってフロアに卒倒。

 天を仰いだ剣はモレノの顎に1cm程突き刺さったものの、ギリギリ首からは外れて大量出血を免れている。


「ストーップ! ストーップ!」


 レフェリーはステージドクターを連れ、慌てて試合を中断。

 鮮血が滴り落ちるモレノの止血作業が行われている間、コールは放心状態でアレーナの天井を眺めていた。



「馬鹿野郎! お前死にてえのかよ!?」


 類は友を呼ぶとは、まさにこの事か。

 パクとハドソンは周囲の目もはばからず、一目散にステージへと乱入する。


「……大丈夫だったの? あ〜良かった〜!」


 騒然とした空気の中で両目を開けたクレアは、モレノとコールが生きている事に安堵の声を上げていた。


「……只今の場面について、ご説明致します!」


 ステージドクターの治療が続く中、レフェリーはビデオで詳細を確認した後、マイクを取って話し始める。


「モレノ選手はコール選手の剣が自身の肘に当たる前に一矢(いっし)を報いようとしていましたが、その判断が自身のガードを解く結果となり、必死に剣を止めようとしたコール選手の攻撃が顎に入りました。しかしながら、コール選手に落ち度は全くなく、むしろモレノ選手の無謀な判断が招いたアクシデントです!」


 この時点で、モレノの勝機は完全に消失。

 当然の結果とはいえ、アレーナは落ち着きを取り戻していた。


「……従いまして、モレノ選手の負傷と両者のポイント差を考慮して試合再開はなし、ドクターストップによるコール選手の勝利となります! 1ラウンド3分05秒、勝者、ドワイト・コール!」


 カンカンカンカン……


 遅れて鳴り響く試合終了のゴング。

 終始不甲斐ない戦いぶりのモレノだったが、破れかぶれの闘志と顎の出血を見た観客から、最低限の拍手は送られている。


「後はバンドー達が何とかするだろう。コール、とんだ目に遭ったな。次の試合までゆっくり休みな」


 パクとハドソンはチームメイトに肩を貸し、客席のチーム・バンドーとアイコンタクトを交わす。

 その直後、コレーアの控え室から出てきた男の調査をしていたシルバとリンも合流し、チーム・バンドーは何やら小さく円陣を組んでいた。



「ランキング80位、加えて地元メキシコ出身ときている。モレノ君、君に期待していた観客もいたはずだ。しかし体調が悪いなら無理をしちゃいかんよ。この舞台に上がりたい者は沢山いるのだからね。それが観客やスポンサーだけではなく、新しい世代の剣士のためでもあるんだ」


 事情を知らないステージドクターとレフェリーは、大会の運営もモレノの心身も気遣っている。

 

 だが、今のモレノはそんな事は何処吹く風。

 命懸けの暴挙でバスケスの期待に見事応えた彼には、近いうちに大金が転がり込んで来る事が確実視されていたのだ。



  (続く)

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