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声劇台本

Space・F・Crumble

作者: cyxalis

声劇二人台本(10分)(女1:不定1)


叡智を求め新たな銀河に生命体をみつけ、交流を果たした太陽系銀河は、知らぬ間に滅びを目前に控えていた。

亜空間シャトルランによって気が触れる人々、細菌でもウイルスでもない何かに蝕まれる大地。

銀河間交流は終わりを告げる。


お題「女性」「山」「ラーメン」「バイク」「SF」

二人声劇台本(0:1:1)10分


N: ナレーション

女: 女性



---------------


N:「皇成(こうせい)8675年、太陽系銀河圏(ぎんがけん)が統一されてから300年。

未曾有(みぞう)の繁栄を遂げた皇成圏(こうせいけん)は、他の銀河圏に更なる叡智を求めて航銀河(こうぎんが)を繰り返し、遂に生命的活動が見られる銀河に辿りた。」


女「そして、お互いがお互いを知らぬ間に殺し合う結果になった。」


N:「紙をパラパラとめくる音が聞こえる。」


女「全てが電子機器で表示出来る世界において、こんな嗜好品(しこうひん)が残っているなんて。流石ね、お祖父様ったら。」


N:「たくさんの書物が散らばった部屋に女性が1人立っている。明かりのついてない部屋に月明かりが差し込む。」


女「でも、これだけ大切に集めていた物すら忘れてどこかへ行ってしまったわ。私が止めることも許さずに。」


女「気がついたら気が触れていた、なんて。どうしたら良いのかしら。どうしたら良かったの?天命を祈るしかないじゃない。」


N:「銀河間交流は人を狂わせた。幸せを感じられず渇望に身を灼かれる人が増え、何をしても満たされない気持ちから攻撃的になった。」


女「一度でも亜空間のシャトルランを経験したら、脳が壊れて幸せを感じられなくなってしまうだなんて。」


N:「40年前、遠い銀河へ辿り着くために、亜空間を使って長距離ワープする技術が開発された。全世界は、この技術がどれだけ安全なのかを持て(はや)し、亜空間を使う技術開発競争が盛んに行われた。」


女「最初は自律神経がちょっと狂っただけだと、ちゃんと治療して養生すれば、こんな鬱症状はどっかいってしまうって誰もが思ってたし、身体に何も損傷は見られなかった。亜空間移動自体は今までも使われて来た技術だったもの。」


N:「壁に掛けられた祖父の絵画を見ながら女性は呟く。」


女「終わりを見届けることしか出来ないの。でもちゃんと紡ぐわ。歴史をね。」


N:「コツリ。一度小さな足音を立てた後、女性は静かに去って行った。」


--------------------


N:「満天の夜空にたくさんの赤い流れ星が流れている。流星群の時間にはまだ早い。夜空の赤い光にチラチラ照らされて、街が燃えているようだ。」


女「エンジンが最後まで持つかしら。」


N:「女性がバイクに荷物を括り付けている。空飛ぶ車の開発以降、バイクは嗜好品(しこうひん)として高く取引されたが、そのほとんどが鑑賞品と化していて実用出来るものは少ない。」


女「お祖父様が好きだったバイクで、お祖父様が好きだった食べ物を持って、お祖父様を見届けに行きましょう。」


N:「ドドゥン、ドゥン、ドゥン。エンジン音を鳴らしてバイクが動き出す。女性が跨るとバイクは勢いよく走り出した。」


--------------------


N:「幾何学的(きかがくてき)にビルや建物で飾られた街中を、無骨なバイクが走っていく。人影も音もない静まり返ったゴーストタウンを星の光が赤く染める。」


N:「女性はバイクを走らせながら、携帯食を齧った。」


女「うーん。美味しくない。変な味。お祖父様はどうしてこんな物が好きだったのかしら。」


N:「包装紙を見やると、ラーメン味と書いてある。」


女「ラーメン味ねぇ……。昔を懐かしむのなら、育てた人参を齧った方がずっとリッチで素敵な気分になるのに。お祖父様もこんな誰も食べたことのない味をわざわざ作って大切に取っておくだなんて。」


女「なんか腹が立って来ちゃったわ。そうよ。汚染されてない土を集めて人参を育てるのが、どれだけ大変でも高尚(こうしょう)な趣味だと思っているのよ。お祖父様に言い聞かせてやらなくちゃ。」


N:「女性が走らせるバイクの先、巨大な円錐状の街と建造物が見えてくる。空母の着陸ポートだ。」


女「いつ見ても着陸ポートまであと目と鼻の先って思うの。でもまだまだ先なのよね。大き過ぎるのよ。」


N:「かつて富士山と呼ばれた街の天辺に、5つの柱が立ち銀河空母(ぎんがくうぼ)着陸ポートを支えている。」


N:「女性は包装紙を丁寧に畳んでポケットに入れた。」


--------------------


女「はぁ……。やっと着いた。くったくたよ!もぅ!!」


N:「腕を伸ばし女性は叫んだ。着陸ポートには壊れた船の残骸が散乱している。その一つに女性は腰掛ける。」


女「……。(AD)墓場のようだわ。」


N:「空には流れ星がいくつも流れている。大気圏を越えられず赤く燃え尽きてしまった船たちが流れ星のように見えているのだ。」


女「例え一粒の砂となっても、大気圏で燃え尽きたとしても、帰ってこれたのであれば幸せなことよ。そうよね?お祖父様。」


N:「女性はバイクに括り付けた荷物から人参を取り出すと、空に向かって振る。」


女「見てご覧なさいよ!この惑星で諦められてしまった植物の栽培に成功したわよ!貴方たちが何かを探して何処かに行ってしまった間に、バクテリアと土の再生に成功したんだから!」


女「あむっ、ガリッボリッ……、……ごくん。」


女「むぐ……生きていくわ、この惑星で。生きていけるわ、きっとね。」


N:「呟く女性の頭上に、流星群が(またた)いた。」




おしまい


イギリスの軍用バイク・トライアンフあたりをイメージしてください。

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