21 幸せな結婚式
来ていただいてありがとうございます!
結婚式の朝は穏やかな晴れの朝だった。
「うわぁ、何だか僕、父親の気分だよぉ」
ユリアンは今にも泣きそうな顔をしてる。
「もう!何言ってるのよ、ユリアン!それじゃあ、わたしがお母さんみたいになっちゃうじゃない!」
アンジェがぷりぷりと怒ってた。私は何だか可笑しくて笑っちゃった。家族はいないけど、ユリアンとアンジェがいてくれて良かったな。本当はお師匠様もいてくれたら、って思った。だけどお師匠様の性格だと何となく参列はしなかったかもって思い直した。
「フィリー!すっごく綺麗よ!」
「ありがとう。アンジェ」
私が用意してもらった結婚式のドレスはエーレンのお母さんのドレスを仕立て直してもらったものだった。とっても綺麗な真っ白なドレスだった。ふわふわで雲とか雪みたい。
エーレンの住んでる離宮には小さな祭壇のあるクリーム色のホールがある。ここには光の女神さまとクラウドエンド王国の最初の王様が祀られてるんだって。二人の姿を模した小さな綺麗な石像があるの。お二人はこのクラウドエンド王国を創った方々で、魔物がたくさんいたこの地を人が住めるようにしてくれたという伝説があるらしい。
王様や王妃様がいる王宮にはもっと大きな祭壇とホールがあって、王族は本来そちらで結婚式やお葬式をするんだけど、エーレンはそれを拒んでこちらで小さな結婚式をするって言った。
結婚式は故郷の山の麓の町では見たことがある。だから私も少しは知ってると思うんだけど、全然小さくないよ?大きい!広い!それにドレスが物凄く豪華!!白いベールも小さな花飾りのついたドレスも、小さな青い宝石が付いたアクセサリーも。
祭壇には天窓から光が射しこんでいて、ホールはとても厳かな空間になってた。冬なのにお花がたくさん飾ってあってとてもいい香りがしてる。準備をしてくれたのはパウエルさんや離宮の人達。みんな親切で良い人達ばかり。私はみんなにお礼を言った。参列してくれたのはパウエルさんと離宮の人達とユリアンとアンジェ。
「フィリー、綺麗だ」
エーレンは私に笑いかけて頬を撫でた。私達は手を繋いで祭壇のあるホールに一緒に入った。みんなが拍手で迎えてくれた。
結婚式は、祭壇にある石碑に二人で手を置いて誓いの言葉を言うだけ。これは故郷の山の麓の町でもどこでも同じで、必ずそういう祭壇が設置されてる場所があるんだって。町役場とか、町長さんとか領主様のお屋敷とか。
「私達は、互いに愛し合い、この先の時間と生命を永遠に共にしてゆきます。光の女神様と始祖の王の名の下にこれを誓います」
エーレンと私が一緒に誓いの言葉を言うと、光の女神さまの耳飾りとネックレス、最初の王様の額飾りが光を放った。そして天窓から虹色の光が降り注いだ。綺麗だなぁ。私はこういう風になるんだなぁって呑気に思って見てたんだけど、周りのみんなが凄く驚いてるのを見て、あれ?って思ってた。
そういえばあの光ってるのって、光石じゃないかな?女神様と最初の王様と光石がお祝いしてくれたのかなってあったかい気持ちになったんだ。
光が収まると、エーレンが私を見つめてるのに気が付いた。エーレンは私に口づけると
「これでやっとフィリーを独り占めできる」
って晴れやかに笑った。
その後は、ワゴンに乗せたちょっとした料理やお酒やお菓子、色とりどりの果物が入ったお茶が運ばれてきて、パーティーみたいになった。私は飾られてたお花を女の子達に手渡すように頼まれた。花嫁に花を貰うと良い縁談が来るっていう言い伝えがあるんだって。
「さて、後は頼んだぞ、パウエル」
「はいはい。分かってますよ。おめでとうございます。エーレンフリート様」
パウエルさんは嬉しそうに笑って一礼した。周りのみんなも笑ってた。私もとても嬉しくて幸せな気持ちになった。
「じゃあ、一足先に戻ってる。ユリアン、アンジェリア」
「?」
え?何のこと?エーレンは何を言ってるの?
「あーあ、とうとうフィリーを持ってかれちゃったねぇ……」
しんみりしてるユリアン。本当に今日はどうしちゃったの?
「もう、今日は何でそんななの?ユリアンは。別にずっと離れ離れになるわけじゃないでしょ?もう!フィリーおめでとう!次は私の番だからね。春には結婚式だから、絶対出席してね!」
「うん、アンジェ!絶対ね」
「行こう、フィリー」
エーレンが私の肩を抱いた。ほのかな光が私とエーレンを包んだ。え?これって転移魔法……。いったいどこへ行くの?
「じゃあ、ごゆっくりぃー」
手を振ってるみんなとユリアンの言葉を最後に私達はその場から消えたのだった。
ここまでお読みいただいてありがとうございます!




