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14 最初から決めてた?

来ていただいてありがとうございます!



大きな広間に大勢の人達が集まっている。やがて国王陛下が現れると、それまで談笑していた人達が一斉に静まり返って礼をとった。


国王陛下との謁見は予定通りに行われた。褒章の希望を聞いて調整するのに少し時間がかかったみたい。すっごく緊張したけど、跪いてみんなの後ろにいて話を聞いてただけだから何とかなった、と思う。その日は朝から支度に追われて、簡単な打ち合わせもして、最終的にはアンジェと色違いのお揃いのドレスを着せてもらってここにいる。


「今回の魔王討伐、誠に大儀であった。我が国への脅威は完全に去った訳ではないが、国民への被害は大きく減少した。…………勇者ユリアンとその仲間達には望みの褒美をとらせる」


って感じで王様が私達のことを労ってくださってたと思う。緊張してあまり頭に入ってこなかったけど。


まずはユリアン。何と王都に近い領地を貰って、男爵の地位ももらってた!すごい!あのユリアンが貴族になっちゃった!領地経営に詳しい部下もつけてくれるんだって!


ヴァルターさんとアルバンは褒章と爵位を上げてもらってた。ええと、ヴァルターさんは準男爵で、アルバンは子爵だった。俺は伯爵になるって言ってたけど、以前の魔物退治の時の失敗が報告されて希望通りにはならなかったみたい。物凄く不貞腐れた顔してて、王様の側近(?)の人に睨まれてた。大丈夫なのかな?


アンジェと私は褒章金、金貨百枚……!こんなに貰っちゃっていいの?それからユリアンとアンジェは婚約することになった。ユリアンが国王様に申し出て許可を貰ってた。うわーこれでアンジェリアも貴族だね!私は小さな声で隣にいるアンジェリアにおめでとうって言った。アンジェ、嬉しそうに笑ってた。私も嬉しい。


最後に国王様はエーレンフリート殿下に望みを聞いた。事前にとにかく私は「はい」って頷いてればいいんだってエーレンには教えられてた。エーレンは私達と違って王族の列の一番端に立ってたんだけど、王様の前へ進み出て膝をついた。


「私の望みは国王陛下の臣となり、国を守っていくことです」



広い謁見の間にいた人達がざわついた。

「なんと!王位継承権を放棄とは……!」

「欲の無い……」

「魔王を倒したとあれば、次期国王にもなれる可能性があったというのに……」




「そしてここにいるフィリーネと婚姻を結びたく存じます」


この言葉に反応したのは主に貴族の女の人達だった。

「やっぱり……ずっと一緒にいらしたものね……」

「え?なんであんな娘と?いくら勇者のパーティーにいたからって」

「ただの平民の娘が……」

「でも王位に就けないなら……」

「え?でも、マルガレーテ様のことは?」

「ただの噂なんじゃない?」

「そうよね、国王陛下が認めてらっしゃるんだし」


それから、

「いや、これは美談ですぞ」

「魔王討伐の間に育まれた愛!!いいじゃないですか!」

「民衆受けしそうな話題ではありますなぁ」

等々色々な声が上がってる。


あ、あれ?なんか思ったてたよりも大騒ぎになってるんだけど、大丈夫なのかな、これ?




王様のそばにいた長い衣装の男の人が杖をついて床を鳴らすと、広間は静まり返った。

「認めよう。そなたには望み通り北方山岳地帯の領地を与える。フィリーネと共にその地を治めてゆくがよい。フィリーネの故郷で薬の研究をして暮らすという願いも叶うであろう」


「ありがたき幸せに存じます」

国王陛下が厳かに告げると、跪いていたエーレンは頭を下げてから、立ち上がって私の方へやって来た。そして私の手を取って立ち上がらせると膝をついて

「どうぞ私と婚姻を結んでください」

と指先に口付けた。

「はい」

って返事して頷いた……けど。え?エーレンが一緒に私の家の方に来てくれるの?お城を、王都を出ちゃっていいの?っていうか、これって事前にみんなに希望を聞いてたんだよね?エーレンっていつからこんな事考えてたの?


ものすごい拍手が起こって、私の戸惑いは掻き消されてしまった。私はエーレンフリート殿下に抱きしめられた。

「捕まえた。約束は守ったよ」

耳元で声がする……。驚いて顔を上げると、エーレンが今まで見たことが無いような優しい顔で私を見つめてた。


「一緒に君の故郷で生きよう」

本当にずっと一緒にいられるんだ。エーレンとずっと一緒に……。遅れて私はエーレンの求婚を受けたのだって実感が沸いてきた。嬉しくて涙が出てきた。エーレンと私は隣り合って一緒に国王陛下の前に再び跪いた。


私はエーレンと結婚することになった。ひとまずは婚約だけど。私の故郷の山の麓で一緒に暮らしていくことになった。全ての手筈はもう整ってた。私の故郷の北方連峰の麓の町に領主の館が建てられることになった。あの土地には元々領主様がいなかったから、そこをエーレンが治めることになったんだって。




今夜は王宮で舞踏会が開かれることになってるんだって。一応エーレンにも王族としての参加が義務づけられてて、私も一緒に参加することになった。私、ダンスなんて踊れないのにいいのかな?あと、王都でも魔王討伐のお祝いのお祭りが行われるんだって。勇者の凱旋パレードもやるって聞いた。ユリアン大変だよね。でも、実はもうずいぶん前から王都の人達には知れ渡ってて、お祭り騒ぎになってたみたい。そうだよね、みんな怖かったんだもんね。嬉しいよね。



アンジェと私はその後、また離宮で舞踏会の支度に大わらわになった。大変だったけど、二人一緒だったし緊張も解けてたからちょっとだけ楽しむことが出来た。








ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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