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99.五階層

 サラが呟いた。

 たまにボスが出てくる自動生成ダンジョン探索VRMMO。潮騒しおさいの音が穏やかな遠浅の海。ダンジョン五階層である。


「ここで水中の敵にやられてもめんどくさいから、とりあえず陸まで行きましょう」


 ジオが促した。

 忍者のジョブスキルで水面に立っている。


「おー」


 ケイは返事しながら膝ぐらいの波を蹴立てて移動する。


「おいもうちょい静かにしろ、シキを見習え、水中に引きずり込まれたら助けられないぞ」


 シキに乗っているのはサラとえにしである。

 水中からの接近は気付きにくい。後衛の二人は接近されると戦闘が難しい。シキに乗ってもらっている。


「ケイ大丈夫?」


 式神使いのケイも近距離戦闘が得意なジョブではない。


「んー多分? よう達について通るだけなら来たことあるんだけど、海歩くのは初めて」


 と、言ったそばからケイがつまづいて沈んだ。


「ケイ?」


 サラが声を掛けるが反応が無い。HPMPは減っていないから一撃で倒されたわけでもない。


「……そんなに深くないよな? おーい」


 ジオも覗き込むが、ケイは転んだまま海に沈んでいる形である。あぶくが浮かんでくる。


「……溺れてる?」

「……あ!」


 ジオが思い当たった。


 一方、ケイは砂の中の何かに足を挟まれた瞬間に行動制限にかかったように動けなくなっていた。


「何これ?! 河童?? 海に河童って居る?? 状態異常? 何か毒のある魚とか踏んだ??」


 ケイの疑問は泡になって消えた。水中だと声に出してもゲーム中の音声に反映されない仕様である。HP0時の視界が無くなっている時と同じである。

 不意に足を掴んでいた何かが消えた。途端に動けるようになる。


「ぷはぁ!」


 VRなので息が止まっていたわけではないが、思わず水面で息を吐く。

 サラがシキに指示して、ケイの足を掴んでいたものを攻撃させたのである。

 白いものがふわりと波間から浮かび上がってえにしに近づいた。直毘神なおひのかみである。


「二枚貝??」


 ケイの足を掴んでいたのは貝だった。

 貝はえにしに石を渡して海中に去って行った。


 ケイはシキに咥えられて海から上がり、砂浜に着いて休憩する。


「HPが減ってるのは溺れかけたからか」


 水中に一定時間居るとHPダメージになるようである。


猿田彦神さるだひこのかみ、貝に手を挟まれて溺れた事があるんだよな。こんなとこで神話再現しなくても……」

「歩いてただけだぞ。ジオこそ罠感知動かなかったのかよ」

「全然分からなかった。罠じゃなくて敵だからかな?」

「ええー……」


 とりあえず浜辺で小休憩を挟む。




「『けまくもかしこき 見守り給う神々に しこみしこみまおす』

 二神連携」


【二神連携   御前みさきつかたてまつらん】


 ケイとサラのスキルが発動され、頭上に火の玉が浮かび上がった途端、海が派手に飛沫しぶきを上げる。


「うわ……ほんとに餌やり中の生簀いけすみたいになってる」


 サラが感想を述べる。


「な、五階に来る前にスキル止めといてよかったろ?」

「あまり海に近づかないでくださいね、このメンバーだと引きずり込まれたら助けられないので」


 ケイのスキルの炎はエリア内の鳥居の位置を表示すると同時に八十禍やそまがつを誘引する。


 前回、ケイがよう達と来たときはスキルを使ったまま五階に入り、シキごと囲まれてピラニアに襲われる動物のような有様になった。

 そしてしゅんのスキルが電気漁の如く炸裂した。


 エリアと相性のいい高火力スキル持ちが居ないと割とリスクの高いエリアである。


「幸い黒火鳥居は近くにあるみたいだ」


 ジオが火の玉の位置を確認して言う。

 黒火鳥居。そう、スキルの表示から新手のボスが現れた様だったので偵察に来たのである。



 鳥居が建っていたのは島の小高い丘の中腹。日当たりのいい草地の中である。


 鳥居の向こうの風景には、大きな柱で支えられた長い階段。その最上階にはやはり大きな柱で支えられた神社っぽい建物がある。

 素人目には超巨大高床建築のような構造であった。


「……中古出雲大社……?」

「中古ってどゆこと??」


 ジオの呟きにケイが聞き返した。


「多分ケイの脳裏にある意味と違う。新品じゃないって意味の中古が出て来てるだろ」

「それ以外の意味の中古ってあったっけ?」


「この場合の中古は平安時代頃って意味。

 上古は……大体大化の改新頃より前の大昔、古墳時代とかもっと前のこと。逆に近古は鎌倉時代とか室町時代とかその辺。上古と近古の間だから中古」


「へー」


「今回はエリア内を軽く偵察だな。

 とりあえず最初はスキル消して目立たず行こう」


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