表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/132

86.ボスエリアの黒火鳥居

 自動生成ダンジョンの中にたまにボスが現れるVRMMO。クローズドベータ版。

 偵察も兼ねて侵入したエリアでボスを発見したが、いつもと違って逃げるのが難しい仕様である。


 広間の窓から入り込んでくる八十禍やそまがつを相手に、ケイはシキに乗って球場ほどもある広間を駆け回っていた。頭の上にはふわふわ明るい火の玉が燃える。マップ表示兼八十禍やそまがつ寄せ効果のあるケイのスキルである。


 広間の柱は数十メートルの間隔を開けて正方形に配置された巨大な四本が一揃いになっている。

 四隅に四本ずつ、四方の壁に四本ずつ、中央に四本、と、追ってくる八十禍やそまがつを撒くには事欠かない。


 そうしてケイはボス戦に乱入してくる八十禍やそまがつの大群を自分に集中させつつ、上手く距離をとっている。


 狙いはしゅんとボスの一騎打ちを邪魔しない事。本命の狙いは、隠形おんぎょうで姿を消したジオの一撃必殺である。


 以前、鬼型ボスで出てきた思兼神おもいかねのかみがジオの攻撃を優先的に防いだ。鬼型大禍おおまがつには忍者の確殺攻撃が効く可能性は高い。


 ジオも乱入してくる八十禍やそまがつに対処する素振りをしながら死角に回る。そこで忍者のジョブスキル、隠形おんぎょうを発動した。

 ボスは何かに気付いたように広間を見渡すが、ジオの位置は掴めていない様である。


 ジオはボスとの距離を一気に詰めた。とその時、ボスの空いた手が謎の板に伸びるのが見える。その手の動きでこの糸のかかった板が何に似てるか思い出した。


「皆跳べ! 地震が来る!」

「!?」


 その言葉を受けて、しゅん咄嗟とっさに後ろに跳ぶ。


 ジオも離れようとしたが、大きく地面を蹴った直後だったため一拍遅れた。低く、地鳴りに近い、唸るような弦の音が響き。地面が波打つ。

 跳んでも空気を伝播する音の波に叩きのめされ、倒れた拍子に波打つ地面に足を掬われる。


 須佐之男命すさのおのみことが持っているとすれば生弓いくゆみ生大刀いくたち

 そして腰にある糸のかかった板。古代の和琴わごんがモチーフであれば、恐らく天詔琴あめののりごとである。


「っ!」


 壁まで飛ばされたジオが呻いた。至近距離で食らったせいか、HPが半分以上削られている。回復しようとするが、揺れで体勢が立て直せず、ダメージによる行動制限で動作も鈍い。


 ケイはボスからは少し遠かったものの、吹き飛ばされたはずみに八十禍やそまがつの群れに突っ込んでしまい、集中攻撃を受けてあっさりやられていた。


 ようは衝撃でスキルが解除されたが、即座に体勢を立て直した。騎士なのでHPにはまだ余裕がある。


 しゅんは吹き飛ばされたものの、途中の柱に着地していた。最初に動いたのは彼である。


「『けまくもかしこき 見守り給う神々に しこみしこみまおす!』」


建御雷神たけみかづちのかみ   建御雷たけみかづち


 そのままボスに突っ込む。


「くそっ! 遅いか!!」


 ボスは手の空いた瞬間から動き出し、ジオに矢を放っていた。

 揺れで動きがままならない所を躱せるはずも無く、あっさりジオも倒された。


 しゅんはケイとジオを回復している暇はないと判断し、そのまま攻撃を続ける。


 ケイの誘導が外れた八十禍やそまがつを、ようが一人で薙ぎ払う。

 蛇型が一匹、薙ぎ払いを潜り抜けてしゅんに噛みついた。即座に切り捨てられるが、噛まれたしゅんの左腕がだらりと力を無くした。


しゅん!?」

「毒は左手だけ! 問題ない!」


 そのままボスと切り結ぶ。


「『けまくもかしこき 見守り給う神々に しこみしこみまおす!』」


経津主神ふつぬしのかみ   布都神ふつのかみ


 ようのスキルの熱線が広間を走る。

 地面に居る八十禍やそまがつが消滅し、ボスがダメージを避けようと跳躍しようとするのをしゅんが飛び込んで切りつけた。


 その一太刀でボスに電撃が走った。状態異常、感電である。

 次の瞬間、ボスが腕を大きく振った。見た事の無い動き。しゅんが身構える。


 しかし身構えた間に、広間内に居た八十禍やそまがつが扉の隙間や窓から逃げる様に居なくなった。

 同時にボスの姿が消え、その場に黒火を灯した鳥居が現れていた。


「……え……?」


 しゅんが目の前の鳥居を呆然と見つめる。

 黒火鳥居と言えばボスエリアに向かう鳥居である。そしてボスエリアはここである。


 いち早く気を取り直したのはようだった。


「ケイとジオを生き返らせましょう。回復薬残ってます?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ