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83.四階層、イレギュラー発生

 自動生成ダンジョンの中にたまにボスが現れるVRMMO。クローズドベータ版。

 ケイ、ジオ、しゅんようという珍しい取り合わせで四階層を探索中である。


 以前苦戦した洞窟内での戦闘も、しゅん達が一閃して終了である。


「このオタマジャクシみたいな赤い火の玉、迷路の案内はしてくれないんだよな……」


 ケイが器物型式神で火の玉を突きながら言った。マップを表示しているだけのスキルなので当たり判定はない。


 ケイ自身のスキル。エリア移動のための鳥居の位置を示す火の玉のことである。

 四階層では一部の火の玉が尻尾が付いたように伸びている。その尻尾は鳥居に続く道や洞窟の入り口を表してはいるようなのだが、内部の案内まではしてくれないようである。

 

「高低差の大きいマップだけど、鳥居までは絶対に徒歩で行けるルートがあるってのは聞いてると思うけど。

 ダンジョン生成では最初に正解ルートを作って、その後にランダムに脇道を作ってるって説があるんだ。

 四階層では洞窟内部は入り組んではいるけど、要は広い通路に障害物が置かれてる感じで、行き止まりで立ち往生ってのは少ない。

 この尻尾で指示された場所の洞窟なり登り口なりからは、ほぼ確実に鳥居まで行けるはずだ」


「へぇー」


 と、ここでしゅん拍手かしわでを打った。


「……『けまくもかしこき 見守り給う神々に しこみしこみまおす』」


建御雷神たけみかづちのかみ   建御雷たけみかづち


 ケイの背後、壁から出てきた入道を一撃である。


「わぁ……俺この前散々追い回されたのに……」


 ジオと離れ離れになった後に襲ってきた八十禍やそまがつである。


「こいつ動きは鈍いけど、HP高いしでかいし動くとき音がしないし、術系入ってないと攻撃効きづらいし、結構洞窟で出て来ると厄介なんだよな」



 しゅんの話を聞いていたらジオ達が戻って来た。


「やはりこの先の明るいのは溶岩でした。こっちは溶岩が出てて通れません。遠回りするしかないでしょう」


 先行していたようとジオが説明する。


「溶岩の先に左側から来て奥に伸びてる通路があったんで、そっちから回れるんじゃないかと思います」


 ケイとしゅんが来た通路を思い出している。


「ちょっと戻った所に左に行く通路あったよな?」


 鳥居の方向が分かっているというだけでも、多少は探索が楽な様である。


 ジオが先に立った。


「俺が先行きます。見えた通路、幅が狭くなってて罠アイコンあったんで」

「助かります」


 罠を発見できるのは忍者と特定のスキルだけである。



 ジオを先頭に進みながらしゅんが言った。


「ちょっと期待してるんだよな。ケイ達、新ボスとの遭遇率高いじゃん」

「そうかな? サラとの連携してる時は黒火に従って動いてるだけだし……どうだっけ? ジオ」


 しゅんにそう言われて、ケイはジオを見た。


「言われてみれば最初に伊吹山の主(仮)と思兼神おもいかねのかみにぶつかったな。

 ……えにしさんかな? あの人、妙に引きがいい時があるから、バグの検出ができないかと思って招待したところもあるんだよな」


「ええ?!」


「冗談冗談、多分試行回数が多かったせいだと思う」

「試行回数?」


「ケイのスキルがあれば、普通の人が鳥居探すのに四苦八苦してる間にすいすいエリアを進めちゃうだろ。

 特にレベル低いとボスエリアに着きやすくなるって説が出てるし。それで最初の内にボスエリア引き当てがちだったんじゃないかな」


「このスキルってそんなに違い出るもんなの?」


 しゅんが茶々を入れる。


「言ったろー、普通ならここに来るまでに食糧消費してるって」


 ピンと来ないケイである。

 紫苑しおんも自分のスキルの有用性がいまいち分かってなかったので、そういうものかもしれない。


「あー、ケイはアイテムの狼煙のろし使った事ありませんよね」

「うん」


「普通はダンジョン探索に必須です。手分けしてバラバラに鳥居を捜索するんですよ。木に登ったり騎獣で走り回ったり。

 それで別行動している時に鳥居を見つけたら狼煙のろしをあげて集合するわけです」


「四階層の洞窟の中で狼煙のろし使うとファンシーな煙突みたいになるな」


 しゅんの実際に使った感想である。

 白みがかった淡い色のほわほわした煙、というか浮く綿飴みたいなのが出てくるらしい。

 多少視界が悪くなるが、酸欠やむせは無い仕様である。

 煙は自動的に洞窟の入り口まで流れていくため、迷子になった時も使えるそうである。


「え、それ皆そうなの?」

「だいたいそうだと思いますよ」


狼煙のろし実装される前は集合場所決めて連絡とってたから滅茶苦茶時間かかった。

 狼煙のろし狼煙のろしでアイテム枠潰すし」


「だからフル装備でボスに挑めたこと、ほとんど無かったんですよね」


「まぁ五階層は見晴らしがいいから最近は狼煙のろしと食糧は省くことあるよな。八岐大蛇やまたのおろち戦からは五階層に高頻度で行けるようになったからボスエリアに突入できるようになったってのもあるんだ」


「へー」

「あ、蜘蛛だ」


 ジオが一行を制止した。

 罠が実装されて以来、蜘蛛の巣は罠扱いになってアイコンが見えるようになったそうである。

 罠を解除して飛びかかって来た蜘蛛型八十禍やそまがつをサクッと退治する。


「以前はこれ見れなくてやられたよな」


 あまり昔ではないが、妙な懐かしさがあってケイが呟く。


「お、あれ鳥居じゃないか?」


 しゅんの指したのは、やや開けた場所。下方に広がる空洞の先である。

 近付いて見てみると、確かに赤火鳥居であった。

 皆で鳥居を覗くと、全員無言になった。


「……五階層ってこんな人工物があるんですか?」


 ジオが鳥居の先を指しながらしゅんように尋ねた。


「いや! 五階層は普通は海だよ! やっぱケイ達なんか持ってるって!」

「こういうのは見た事ないですねぇ」


 イレギュラーが起きたらしい。

 五つの炎が燃える赤火鳥居。

 その先に見えたのは、東洋風の建物である。


「……夜の神社?? の渡り廊下??」


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