表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/132

70.ボス発見

 自動生成ダンジョンにたまにボスが現れるVRMMO。クローズドベータ版。

 ボスがお化け系っぽいので、無理しているえにしをどうにか帰らせるところである。

 苦手なものを無理にする事は無い、ましてやゲームである。


 ケイはシキにえにしを乗せて、緑火鳥居まで来ていた。


「素材はえにしさん持って帰ってよ、俺ら死ぬかもしれないし」

「いえ、せめて葡萄ぶどうと竹は皆さんが持っていた方がいいです」


 えにしはそう言ってケイの素材入れに葡萄ぶどうと竹を詰め込んだ。本当は桃も渡したそうだったが、貴重品なのでケイの方から断った。えにしは困り眉をさらに困らせ、後ろ髪引かれる様に緑火鳥居をくぐって町に戻っていった。



 えにしを送って探索を再開する。


「そっちはどういう集まりなんだ?」


 ジオが鉄人てつと達四人に問いかけると、それぞれから返事があった。


「ボス偵察して、とりあえず安全確保しながら撤退できればいいって感じだな」

「俺はスキル連携要員ですね。この人数を道敷大神ちしきのおおかみで運ぶのは無理なんで」

「僕は防御担当です」

「俺は例によって全滅時の保険」


 騎士の鉄人てつと、式神使いのソライロ、防御スキルのある術師の秀吾しゅうご、全滅時のペナルティ無効スキルの徒士かち影助えいすけであった。


 そして、ケイ達は見つけた八十禍やそまがつの情報を共有する。


「範囲が分かりづらい即死技かぁ……面倒だな」

「あ、噂をすれば」


 遠くに見えるのはケイの軽いトラウマ、黄泉軍よもついくさと思われる骸骨型八十禍やそまがつである。

 皆で頷き合う。検証開始である。


 秀吾しゅうごが術で撃つ。ダメージを食らった風ではあるが、一撃では倒せない様子である。変わりなくふらふらと歩いている。


「攻撃受けたらこっちにダッシュで向かってこないだけよしとするか」


 動かない敵に攻撃を仕掛けたら凶暴化、たまにある仕様である。

 続いて同一個体に試したのは、薬師くすしのサラによる爆弾である。


「うっそ、爆弾でも一撃じゃ無理なの!?」


 薬師くすしの爆弾は中距離で高攻撃力を誇り、術特性もあるだけに、この結果は脅威である。


「物理攻撃が効くかが分かんないのが怖い」

大薙おおなぎ行ってみるか」


 鉄人てつとがジョブスキルの中距離強攻撃を加えた所、倒した。物理攻撃は効くようである。

 人魂の様な直毘神なおひのかみが、赤い石を置いて行った。


「物理が効くなら、掴まれさえしなければ忍者のジョブスキルで必殺できると思う」

「まぁ八十禍やそまがつ対策は追々だな、ボスの姿も見ずに誰か落ちても困るし」


 骸骨型八十禍やそまがつは動きが遅いので、障害物として注意だけ払って進む方針である。


 ケイとサラの連携スキルがあるので、ほぼボスまで一直線に進む事ができる。鳥居をくぐるたび、スキルに表示される黒い炎は濃くなっていった。



「暗っ!」


 エリアに着いた最初の感想がこれである。


月読つくよみのスキル持ちさんですかね?」

月読つくよみのスキルならもうちょっと真っ暗いと思うけど……」


 他ならぬ影助えいすけの申告である。


 三階層。鬱蒼うっそうと茂る森と曇天で、周囲は暗い。


「ボスエリアここだよな?」

「多分、スキル消しちゃってて分かんないけど」


 ボスに不意打ちを掛けられても困るので、ケイ達の目立ちすぎる連携スキルは鳥居をくぐる前に消している。


「ボスはどこだ?」

「ちょっと上から見てみる」


 ジオが飛ぶように木に登って行った。


「え!? あれボス!?」


 そしてジオが叫んだのが聞こえ、飛び降りてきた。


「見つけたか?」

「どっちです?」


 ジオは尋ねる仲間たちに軽く手を振る。


「ここからでも見えると思う。あれ」


 指したのは斜め上である。


 ボスの姿を認めて動揺が走る。


 暗雲の中に霞むように、巨大な白い彫像が立っていた。

 古代の衣装を着た女神像である。

 恐らくこれが巨人型ボスなのだ。


 雷光で森の中が一瞬照らされた。

 同時に、森の木立に紛れて、赤く光る目を持つ黒い人影がゆっくりと立ち上がった。

 道中見かけた厄介な骸骨型の敵、今回のボスの眷族、八十禍やそまがつと思われる。


 再び閃光が光り、雷鳴がとどろく。


「よし緑火鳥居を探そう。そこを拠点に攻撃パターンを見る」


 緑火鳥居、いつでも町まで退却できる場所である。

 ジオが指示した。


「ケイ、ちょっと離れてスキルで先導してくれ。多分雷攻撃あると思うから」

「まじかー」


 ケイのスキルは目立つ。最初にボスに攻撃されるとしたらケイである。


 秀吾しゅうごが軽く手を上げた。


「僕がケイさんの防御担当しましょうか?」

「いや、敵のスキルの予備動作が分からないと秀吾しゅうごさんのMPが無駄打ちになるので」


 いざというとき味方全員守れるスキルである。温存しておきたい気持ちが先に出る。

 ケイはジオにブーイングしてはいたが、状況はよく分かっている。


 言っている間にも稲光が光り、雷鳴がとどろいている。ケイが拍手かしわでを打った。


「『けまくもかしこき 見守り給う神々に しこみしこみまおす』」


猿田彦さるたひこのかみ   支加わかちくわえ


 ケイは先導すべくシキを進めたが、ふと皆に声をかけた。


「……こんなに八十禍やそまがつ居たっけ?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ