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69.ボス捜索中

「ぞんび!! ゾンビが居ます!」

「ゾンビ??」


 森の中、ケイはえにしが声を殺して叫んだのを聞き返した。


 自動生成ダンジョンに敵やボスが配置されるオーソドックスなダンジョン探索VRMMO。クローズドベータ版。

 ソライロのスキルやケイとサラの連携スキルは、ボスの位置を示すものでもある。

 ダンジョン内でたびたびスキルを使っていた所、新しいボスが出た事が確定したので、偵察に来ている所である。


 現在のメンバーはケイ、ジオ、サラ、えにし

 狩衣かりぎぬとスーツと甚平じんべえとエルフの集団である。

 ケイとサラの連携スキルに表示される黒い炎、そして見慣れない八十禍やそまがつは、ボスエリアが近い事を示していた。


 一同、発見者のえにしが指す影を見つめる。

 木々の間。ほぼ豆粒の、人影と言われればそうかなぁという真っ黒い影があった。よーーく見ていると数秒に一歩という動きで歩いている。


「……あれですか?」

「術師のジョブスキルで望遠できるんです」


 八十禍やそまがつを呼び寄せるケイとサラの連携スキルは掛けっぱなしだが、向こうがこっちに向かってくる気配はない。

 挑発が効かないのか、見えていないのかは不明である。


 ジオが首をかしげながら当たりを付ける。


「ゾンビっていうと……黄泉軍よもついくさかな? 丁度いいや。ケイ、ちょっと行って反応範囲とか攻撃手段とか確認してきてくれるか?」


「おう」


 ジオは挑発スキルがあって機動力に優れたケイが適任と判断した。


 ケイがシキに乗って回り込み、正面から近づいていく。相手は全く反応しない。


 敵はやや俯き気味の黒い影の様な人型。おそらく八十禍やそまがつ。体格は骨と皮ばかり。

 それが判別できるぐらいに近づいたとき、不意にケイは首を掴まれ持ち上げられた。八十禍やそまがつは、今度ははっきりケイを見ていた。

 眼窩に溶鉄の様な火が燃え、温度の高低のせいか瞳があるように見える。鼻腔と口腔に青白い炎が燃えていた。


「!」


 遠くで見ていたジオ達も驚く。

 腕の長さよりは明らかに離れているのである。攻撃範囲が欺瞞ぎまんされている。

 腕の代わりに、ケイの首には黒っぽい霧のような物が巻き付いている。


 ケイは器物型式神で抵抗していたが、急に力が抜けたように動かなくなった。

 そのまま離され、地面に落とされたが全く動かない。連携スキルの火の玉が消えている。

 いつの間にかHPが尽きていた。


「ケイ! シキで戻ってこい!」


 少し呆然とした後、ジオが叫ぶ。

 ほぼ同時に気付いたらしく、シキがケイを咥え上げた。しかし途端に動きを止める。

 もがいているが、動けないようである。


「まさか式神もやられるのか!?」


 サラがそれを見て飛び出した。


「サラさん! 二次被害が!」


 ジオが止める間にシキが消えた。ケイのHPMPは0である。


「MP回復させる! シキ使って全力で攻撃範囲から逃げて!」


 サラは言うなりケイにMPポーションを投げた。範囲回復である。


 再び現れたシキがケイを咥えて駆けだす。

 サラもそれに飛び乗った。

 サラは振り向くが、八十禍やそまがつは追ってこない。いや、追ってきているのかもしれないが、動きがゆっくり過ぎて分からない。


「びっくりしたー」

「こっちのセリフだ。マジでサラさんに感謝しろ」

「それはほんと助かった。ありがと」

「いやべつに」


 ケイはまだちらちら森の方を気にしている。

 落ち着いたところでサラに蘇生されたのである。


「掴まれても声出せないだけでダメージも無いから余裕こいてたらいきなり即死したんだ。

 びっくりしたけど気を取り直してシキに指示したらシキもやられちゃうし。ほんと焦った」


 蘇生は口にHP回復薬を入れないといけないのだが、式神使いはHPが無くなっていてもMPが残っていれば騎獣型式神は消えない。

 サラはそれに賭けたのである。


「すいません、サラさん。本当は僕が遠距離攻撃で援護しないといけなかったのに……」


「いや全然。攻撃なら爆弾投げる手もあるんで。

 ……あの、えにしさん、大丈夫ですか?」


 VRで顔色は見えないが、あまり具合が良くなさそうである。


「すいません、ホラーゲームちょっと思い出しちゃって……」

「ああ……」


 そのまんま、ホラーゲームのいわゆるキルモーションでよく見るやつであった。

 血や骨折表現こそないが、吊るされてじたばたしていた知り合いが急にだらんとして動かなくなるのはVRだと結構ショッキングである。そのため、VRゲームの多くは最低でも12歳以上推奨であった。それより年上の人でも無理なものは無理である。


えにしさん、戻りましょう」

「え、でも」

「ほら、私も前回の偵察で戻ったし」


 それでも渋るえにしを見かねて、ジオが提案した。


「あー……じゃあケイ、サラさん。もう一回連携スキル使ってもらえます?」



「次の次までにこの人達と合流できなかった時。またはこの人達がボスエリアの偵察に乗り気じゃなかった時は帰る。そういうことで」


「……はい……すみません……」


 近くのエリアを通りかかったパーティーの居る位置がケイ達の連携スキルに反映されている。

 ケイ達はそれと合流すべくエリア移動している所である。


「お、結構近くに出た」


 エリアを跨いだ先。エリア内のプレイヤーは割合に近かった。

 やや高台に居た向こうのパーティーが先に気付く。


「お、ケイとジオ。ボス行く予定ねぇ?」


 ボスの偵察に繰り出していた鉄人てつと達であった。


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