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63.対八岐大蛇戦 パターン

 VRMMOクローズドベータ版。

 現在ボス、八岐大蛇やまたのおろち攻略中である。

 おびき寄せて拘束し順調に攻撃していたが、誘導用のアイテムを八岐大蛇やまたのおろちに破壊されたのである。


 ケイは時間を稼ぐため、スキルを発動した状態で八岐大蛇やまたのおろちの首の間を飛び回っていた。

 高い所、すなわち八岐大蛇やまたのおろちの頭の上に派手な火の玉がふらふらしていたら他の頭の注意も引けるというものである。

 普段の式神使いはこうした動きはできないが、アイテムで一時的に力と瞬発力を上げた結果である。


 効果時間はおよそ3分。

 周囲の大蛇はまともに一撃喰らえば即死の攻撃力である。


崩彦くえびこのかみ   ことごとに天の下の事を知る】


 小春こはるの鑑定スキルで八岐大蛇やまたのおろちのHPMPが見えるようになった。先頭四頭はかなりダメージが蓄積している。

 これでケイは赤裸裸せきらら達の到着に気付いた。

 そこにジオの声が届く。


八塩折やしおり置き直した! ケイ下がれ!」

「了解!」


 八岐大蛇やまたのおろちの注意は既に誘引アイテム八塩折やしおりの酒の方に向いていた。


 しかし、途中に居る前衛を攻撃していたことから分かる通り、もののついでとばかりに目に付いたものを攻撃する事もある。

 ケイが離れようと注意を下に向けた所で、首の一本から高層ビルが吹っ飛んできた様な体当たりが来た。


「げ」


 その時、ケイにスキルが掛けられた。


高御たかみ産巣日むすびのかみ   還矢かえしや


 赤裸裸せきららのチームに入っていたかなめのスキルである。

 ケイに掛けられたこのスキルは、与えられたダメージと同割合でダメージを返す。

 この状態でケイが死んだら八岐大蛇やまたのおろちも死ぬわけである。普通のボスは気付いて攻撃を止める。


「うぎゃ!」

「ケイ!?」


 空中で体当たりをまともに受け、ケイは森の中に吹き飛ばされた。一撃でHPが尽きたらしく、途中で視界が暗転する。


 次にケイが目を開けた時は森の中。小春こはる赤裸裸せきららが見下ろしていた。

 しかしそれより気になったのが二人の後方である。


「あの……木の上、すげえ量の蛇居ない?」


影助えいすけさんと紫苑しおんさんのスキル併用で八十禍やそまがつが止まっています」


「ああ、なるほど……てか影助えいすけ達も来たんだ」


「起きたなら戻るよ。早くしないと豪登ごうとに咥えてってもらうぜ」

「お、おう」


 豪登ごうと赤裸裸せきららの愛馬ならぬ愛山羊である。小春こはる、我が物顔である。


 赤裸裸せきららは前衛チームに合流するために別れる。

 ケイと小春こはるがシキに乗って後衛チームに合流する途中、見ている前で八岐大蛇やまたのおろちの真ん中付近の頭が二頭ほど水竜巻に巻き込まれた。


 一頭は恐らく凪枯ながれのスキルで地面に落されている。

 立て直しに成功した様である。


「それにしても、ケイと相打ちした奴が今回の八岐大蛇やまたのおろち撃破一頭目だよ。知ってはいたけど、すごい硬さだね」


「やっぱ還矢かえしや、効果あったのか。躊躇ちゅうちょなく攻撃してきたから効かないかと思った……」


「八頭いるから一頭ぐらいどうってことないのかね」


 ゲームの仕様を考えるに、八岐大蛇やまたのおろちは八つの頭を全て倒さなければ討伐にならないはずである。

 よって即死攻撃への警戒を薄くしている可能性がある。巨体なので慣性の法則的に、途中で攻撃を止められなかったというのもあるかもしれないが。



 少し小高い木々の間、後衛チームが陣を張っていた。


「80秒経過」


 秀吾しゅうごのカウントアップを合図に、アンとかなめが拍手を打ってスキルの準備をする。


「『けまくもかしこき 見守り給う神々に しこみしこみまおす』」


「90秒経過。……5、4、3、2、1……」


建御名方たけみなかたのかみ   鹿児弓かごゆみ


高御たかみ産巣日むすびのかみ   神集かむつどえ


 味方の遠距離攻撃に命中効果を付与するスキル。そしてかなめが使ったのはスキル効果付与。アンの敵の位置が見えるスキルを周囲の術師に付与したのである。


 それを合図に構えた術師達の一斉射撃が、倒れた八岐大蛇やまたのおろちの頭に向かっていく。

 ゆっくり頭をもたげた八岐大蛇やまたのおろちが、術の集中攻撃を受けて再び沈黙する。復活と同時に再撃破(リスポーン  キル)、リスキルである。


「よし!」


 かなめがスキルを解いた。MPの消耗を抑えるためである。


 ゲームの仕様上、HP0になったボスは100秒で自動回復により復活する。


 前衛がHP0にした頭を、復活と同時に後衛が叩く戦法である。

 アンの命中スキルとかなめのコピーペーストスキルと秀吾しゅうごのカウントアップがあって成り立っている戦法である。

 その秀吾しゅうごも見える位置で倒されてくれなければカウントも何もない。敵をまとまった位置で倒せたからこそである。


「ケイさん! 大丈夫だったんですね」


 術師の狙撃に加わっていたえにしが声をかけてきた。

 翡翠ひすいは前衛の回復、というかMPの維持のために前線に居る様だ。


「私もそろそろアイテム渡しに行かなきゃかな? ケイ、シキ借りるよ?」

「おう、シキ、頼むぞ。やばそうだったら戻ってこいよ」

「みゃう」


 翡翠ひすいもソライロのギンを借りて戦場を駆け回っている。

 今回の戦場。式神使い単独で活きるところがあまりないのである。


 凪枯ながれに押さえ込まれていた一頭が倒され、水流に巻き込まれていた一頭が力尽きた。水流に一頭、まだHPが多めに残っているのが居る。


天照あまてらす大神おおみかみ   天照あまてらす


 紫苑しおんのスキルである。強力な攻撃力と引き換えに攻撃範囲が狭く、通常なら命中させるのは難しいが、水流に拘束されている今は絶好の機会だった様である。

 残り四頭。


 そこで八岐大蛇やまたのおろちの動きに変化があった。

 残りの頭が一斉に鎌首持ち上げたのである。


「何だ?」

「回避行動?」


 胴体の裏まで見えるぐらいに巨体を持ち上げ。そのまま落下してきた。


 質量兵器である。


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