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6.ダンジョンの仕様

 純和風(?)VRMMOベータテスト。


 スキルの検証が進まない。

 そうだダンジョンに行こう。


 というわけで町からダンジョンまで歩く道すがら、ジオが他の三人に基本的な所を伝える。


 今の所、ダンジョンは全五階層。


 1つの階層には複数のエリアがある。1エリアはおよそ数km四方。

 エリアの端は絶壁になっていて見えない壁で通れないようになっており、それ以上進めないようになっている。かなり古典的な仕様である。

 この辺りは(M)規模(M)人数同時参加型(O)ンラインと言うよりは(M)数人参加型(O)ンラインに近い。


 このエリア同士をつなぐのが鳥居の形のワープゾーンである。

 ワープゾーンは一方通行である。次のエリアで敵に囲まれて「あ、やべっ」となっても引き返すのは不可能。そこは某自動生成ダンジョンのゲームに似ている。



 階層を上がるごとに地形と敵の難易度が増すと言われている。


 町からダンジョンに行くワープゾーンにまとまって入れる最大人数が四人。


 鳥居のそばには木札を掛けた場所がある。

 練習場の木札と一緒で、同じ木札に触った人が同じエリアに入れる。


 この最初に一緒に入る四人がパーティーの基本単位となる。


「ダンジョンに入る時はパーティー単位、四人一組でランダムなエリアに飛ばされるようです。複数パーティで同時に同じ階層に入っても、狙って合流は難しいと言われています」


 ダンジョン内には味方となるパーティーも居るはずなのだが、パーティー単位でバラバラのエリアからスタートする事で合流を難しくしている様だ。


 ちなみに意図しないプレイヤーと遭遇する事もあるはずだが、PKプレイヤーキルは仕様上不可。

 攻撃判定がない。

 ただし敵の擦り付けは可能である。


「各エリアには必ず『別の階層に向かう鳥居』、『同じ階層の別エリアに向かう鳥居』、『町に戻る鳥居』の3種類があると言われています」


「ええっと、つまり毎回町に戻れるんですか?」

「戻れます。ただしマップが広いので簡単にはいかない、という設計ですね」


 町に戻った場合、次からは攻略した階層から始めるか、一階層から始めるかを選ぶことができる。

 その場合、先頭の人が攻略中だった階層に行くが、エリアは全く別物になっている。入るたびにエリアがランダム生成されると言われている。


 ハック&スラッシュ。戦闘重視型のゲームである。


「そして五階層のどこかにはボスエリア直通の鳥居があります。ただし他にも『偶然くぐった変哲のない鳥居の先がボスエリア』みたいな事もあるらしいんです」


「えっと……つまり?」

「ボスがランダム出現すんの!?」


 ケイが驚いた声を上げた。えにしかなめも同感である。


「今のところ、ボスは四階層にまで進出してくる事が判明してる」


 フットワークの軽いボスである。


「ボスを倒すと、しばらくの期間は安全にダンジョンを探索できるようになる。上階はアイテムや経験値が豊富だからレベルアップに最適」

「なるほど」


「ちなみにボスエリアから脱出した場合は一階層からやり直しらしいです」

「ボスエリアからも帰れるんですか?!」


 リトライ前提のレイドボス。戦闘重視型のゲームである。



「HPが0になって1分経過すると、強制的に町に戻されます。町に戻った段階で経験値ペナルティが発生します」


 町に戻ってLv1の状態になり。3日後、正確には72時間後にペナルティが解除され、元のレベルに戻る。

 弱体化中も経験値は得られるのでレベルも上がる。特にレベル1になっているから順調にレベルが上がる……様に見える。


 しかし、弱体化中に稼いだ経験値は元のレベルに戻った時に本来の累積経験値に統合される。つまり低レベル状態で手に入る微々たる経験値では、本来のレベルはなかなか上がらない。

 弱体化中に全滅するとLv1に戻り、最後にやられた72時間後に元のレベルに戻る。


 つまり元のレベルには戻るが、無理をすると弱体化期間が延びる仕様である。



 町の広場には大きな鳥居が緑の火をともしている。ダンジョンから町に帰還するとここに出るという。


 その広場を過ぎて町はずれにダンジョンに向かう鳥居群があるという。


「今回は最優先で帰還路を確保しつつ、空腹度が限界になるまで一階層を移動しようと思います」

「空腹度、あるんだ」


 ジオの説明を受けてケイが呟いた。某ローグライクゲームの金字塔っぽい印象である。


「厳密には満腹度。これが減ると行動制限がかかる。走れなくなったり動きが鈍くなったりする。あと回復速度も遅くなる。

 1エリアうろうろするだけならほとんど問題にはならないよ」


 えにしが首を傾げた。

「やっぱり満腹度を回復させるアイテムとかはあるんでしょうか?」


「素材の中には果物があるのでそれを食料扱いにできます。素材は後ろのウェストポーチみたいなとこに100個ぐらい入りますね。

 おにぎりとかの食品は一気に満腹度が回復しますけど、装備アイテム扱いですね」


「えーと……『素材』と『装備アイテム』があるんですか?」


「はい、素材にも単体でアイテムとして使える物もあるんですけど、素材は基本的に何かの材料にもなるみたいです。果物、石、枝なんかがあります。大抵は直毘神なおひのかみがくれます」


 横で聞いているケイが呟く。


「なんかアイテムがしょぼい……」


 えにしが続けてたずねた。


「装備アイテムというのは?」


「回復や一時強化バフアイテムも含めた素材以外全てのようです。素材入れに入らなくて腰回りに着けるんですが、最大10個まで持てます。素材と違ってやられてもロストしません。

 非表示状態ですがベルトの周りにくっつけてる感じですね。手で触ると感触がありますし、どのアイテムか表示されます」


「それってどこに何があるかは自分で把握してないとダメな、めんどくさいやつ?」


 思わずケイが口を挟むと、ジオが肩をすくめた。


「このゲーム、あんまりアイテムの種類無いんだよ。武器防具は壊れないから耐久度ないし」

「じゃあ必要なのって回復アイテムぐらい? 買ってくの?」


「初期製作時だと所持金がゼロなんだなこれが。

 中で拾えるアイテムでどうにかなる難易度だから多分大丈夫」


 と言ったところでジオが他の二人に向き直った。


「ただし、ダメージの大きさによって動きが鈍くなったり、視界が暗くなったり。最終的に動けなくなったりします。そうして重傷度を演出するシステムです。

 もちろん味方同士でHPMPは見えますが、ダメージを受けたら早めに教えてください」


「えー……ダメージでも動けなくなんの?」


 ケイがぼやいた。空腹度で動きが鈍るのはさっき聞いた通りである。


「被ダメージでチームワークが必須になるシステムだから協力要素のあるゲームで人気なんだよ」


 このゲームの自動回復では軽傷は回復しやすく、重傷は回復しにくくなるようになっている。

 そして、回復アイテムは自動回復力を補助するもの、という位置づけである。


 よってアイテムを使っても回復に数秒から数分時間がかかる。重ね掛けは無効。早く回復したければより効果の高い回復アイテムを使う必要がある。といった方向である。


「小まめに回復した方が安全だけど、回復アイテムは貴重というバランスですね。スキルだとMPと引き換えに早目にHPが回復するみたいですけど」


 ケイが聞いたことを反芻はんすうしながら尋ねる。


「んーと、自動回復ってことはやられても全滅しなければ回復する感じ?」


「いいや、HPが0だと自動回復しない。そのまま一分経つと味方が生きてても町に強制送還される。

 ゲーム内の処理に厳密に言うと、HP0だと100秒で回復が始まるので回復前に送還されちゃってるらしい。それを回復アイテムでブーストして蘇生するって形なんだ。

 回復アイテムを口に突っ込めばとりあえず蘇生はできる。食糧だとHP1だけど。

 重要なスキル持ちとかをダンジョン内に止めておくための緊急処置って感じだな。何にしても早目の回復が重要ってこと」


 食糧でも多少HPMPは回復するし蘇生もできる。薬師くすしがアイテムを使うと回復効果が高い。という情報はあるようだが、現在、このパーティーに薬師は居ない。


 回復役が居ても居なくても早目の対処が重要な仕様である。


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