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58.ボス対策会議中

 VRMMOクローズドベータ版。

 ボスの偵察から帰って来て、レコードで確認している所である。


「なるほどね、罠にかかった結果がこの一大事か」


 小春(こはる)が納得するように頷いた。

 鉄人(てつと)もケイに同じ場面を見せてもらって頷いている。


「これは蛇恐怖症の人だったらトラウマだろ」


 鉄人(てつと)も現場にはいたが、実際呑まれたのはケイだけである。

 罠に引っかかって八岐大蛇(やまたのおろち)に呑み込まれてからの復帰エリアで蛇尽くしの場面である。

 蛇が苦手なサラはとっくに自主退場している。


「これ、蛇嫌いの人だと比礼(ひれ)持ってても出られないでしょ。緑火鳥居設置してあげるべきだって」


「消化液で町に戻れという温情なのでは?」

「それは温情ではなく究極の二択なんよ」


「これは騎獣持ちの人は呑まれたら辛いね」

「どう角度を変えてみても、よじ登らないと無理な段差だ」


 レコードはデータで保存されているため、映像の角度変更自由である。


「ケイのこれは……何……? これは……?」


 影助(えいすけ)を困惑させているのはケイが護符型式神の加速で、水切り石の様に水面を渡った場面である。


「式神使いならこれ出来る?!」


 途中で参加してきていたレイが目を輝かせて聞いて来た。


「練習すればできるんじゃないか? レイは天手力男(あめのたぢからお)で力は強いし」

「この人基準にしない方がいいです。少なくても俺は無理」


 ケイの返事をソライロがばっさり切った。


 BangRubyのテレキネ殺しに関する逸話の一つが、『水上なら追ってこれないだろうと逃げたテレキネシストが掴まれてその場に沈められた』である。

 サイコキネティックハンドで水面を叩いて水切り石のように移動する。物理挙動からやってやれない事は無いが、できて数歩、敵の眼前ではできんだろ。という技術で敵を追いかけて殴り掛かる程度の実力があるのがケイである。


 一方で話題は呑まれた場合の攻略方法に移っている。


「脱出しやすいのは……忍者かな? 身軽だし、水面歩行できるし」

「何それ知らない」


 声を上げたのはジオである。自分のジョブ特性で知らないのがあるのは衝撃である。


「忍者のジョブスキル水蜘蛛、町のその辺の池でも試せると思うよ」


「式神使いは対岸で九字切って動き止めたところを全力ダッシュが安定じゃないかな」

「九字……忘れてた……」


 ケイが項垂(うなだ)れた。気付いていればもっと安全に脱出できたかもしれない。式神使いだが陰陽師ではないのかもしれない。


 とりあえず今は八岐大蛇(やまたのおろち)対策である。


「とにかく首があっちこっち行っちゃうのが困るんですよね。追撃できない」

「首に登れば……って思ったけど赤裸裸(せきらら)さんは騎士だもんな」


 赤裸裸(せきらら)。須佐之男(すさのお)のスキル持ちのせいか八岐大蛇(やまたのおろち)のリアクションを見るに、攻撃がやたら効いている気配である。

 しかし、この戦闘のレコードを見ると、初撃を入れた時点で首の方が嫌がって避けられがちであった。

 騎獣持ちは縦移動が弱い仕様である。一度首が上がってしまうと、攻撃が届かなくなる。


「付け根殴ってればいいんじゃない?」

「次はそれで行ってみましょうか」


「忍者で首刈れないの?」


 忍者には一撃必殺のジョブスキルがある。決まればボスでも一撃のはずである。


「やってみたんだけど、でかいせいかジョブスキルが発動しない。どっかに弱点あるのかもしれないけど」


 そう言って出してきたレコードは八岐大蛇(やまたのおろち)の首の下にジオが逆さまになっていた。忍者は逆さ張り付きができるらしい。

 ケイが居ない間に、ジオ達も色々試してみていた様であった。



「鷹(よう)さん達の二神連携はどんな感じのスキルなの? こういうの見た事ないんだけど」


 布都御霊剣(ふつのみたまのつるぎ)のスキルである。

 尋ねられた瞬(しゅん)が返した。


「指定した人の武器がすごい強くなるだけだぞ。一定のダメージ受けると外れちゃうし」


 鷹(よう)が説明を引き継ぐ。


「有り体に言えばエンチャントですね。

 攻撃力を中心に全能力がアップして、見ての通り射程が伸びます。自分に掛ける事もできますよ」


「これ鷹(よう)さんの姿消えてるけどどうなってんの?」


「他の人に使うと、私達もその人の上から見下ろす視点で術師の術のような形で攻撃に参加できます。

 ドット絵時代のシューティングゲームで、主人公機が自動で動くゲームがありましたよね。プレイヤーが弾を撃つ方向とタイミングだけ指示して、敵や障害物を排除するゲーム。あんな感じです」


「あー、何となく分かった。RPG風で、歩き回る魔法使いの周りにバリア張るゲームあったよね。左スティックで魔法で、タッチペンでバリア張るやつ」


「それです」


 分からない人が九割ぐらい居たが、仕様は何となく分かった。強化を掛けた人にくっついて行って、射撃で参加できる。


 一方のジオはレコードの時間を計って首をかしげていた。


「状態異常回復が時間経過として……なんか半端だな、エリア移動すると短縮されるとか?」


 見ていたのはケイの状態異常の回復タイミングであった。


「なあなあジオ、経津主神(ふつぬしのかみ)ってどんな神様?」


「ん? ああ、古事記に出てないから説明し忘れたか。

 国譲りのメンバーって資料によって諸説あるって言ったろ?

 日本書紀の一説によると、建御雷(たけみかづち)と一緒に高天原から派遣された神様。天津甕星(あまつみかぼし)とやりあったのも恐らくこの二人。天津甕星(あまつみかぼし)の戦功は建葉槌(たてはづち)って神様にあったとも言われてるけど。

 建御雷(たけみかづち)と経津主神(ふつぬしのかみ)。どっちも伊邪那岐(いざなぎ)が火之迦具土(ひのかぐつち)を切り殺したのに関連して生まれた神様だとされる。資料によっては同一視されることもある。

 布都御霊剣(ふつのみたまのつるぎ)は建御雷(たけみかづち)の剣として出てくる事もあるんだけど、経津主神(ふつぬしのかみ)とも関係してそうな記述はあるみたいだ。

 建御雷(たけみかづち)の父親に当たる天之尾羽張(あめのおはばり)も剣だったり神様だったりするんで剣の神格化って言われたりするし」


「建御雷(たけみかづち)も剣だったりするのかな?」

「剣の神様って説はあるみたいだ。それでエンチャント系なのかもな」


 瞬(しゅん)のスキルは武器と全身に雷撃を纏って加速、射程の伸びた剣で攻撃するスキルである。


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