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56.状態異常百貨店

 VRMMOクローズドベータ版。辛くも逃げきって、全員ボスエリアから脱出した。

 三階層の青火鳥居をくぐったので、ここは二階層のはずである。


「周囲に警戒してください。ケイのスキルに八十禍やそまがつが寄ってきます」


 間髪入れずにジオが言った。

 続けて、ジオは赤裸裸せきららに尋ねる。


「状態異常って町に戻れば治ります?」

「治りますよ」


「状態異常にどんな種類があるか調べたいから、できれば治す前に薬師くすしかスキル持ちに見てもらいたいんですけど」


 それを聞いてシキの上で伸びているケイが力なく呟いた。


「鬼か」


 ケイの心配ではなく、状態異常の検証の相談だった様である。


「うーん……。ケイさんのHPも減ってますし、薬師くすしさんが状態異常を診断ができるかは分かりません。

 とりあえずこのエリア内に薬師さんが居なければ諦めた方がいいんじゃないですかね」


 ケイが使っているスキルは鳥居と味方の位置が分かる支加わかちくわえの方である。

 ボスから逃げ切る途中で、万が一はぐれた時に探せるようにこちらを使っていたのだった。

 スキルはこのエリア内に一組、別のパーティーが居る事を示していた。


「あ、やっぱりケイだ。おーい」


 向こうが気づいて手を振ってきた。居たのは紫苑しおん影助えいすけ、アン。どうやら敵を静止して狩るパターンで安全にアイテム収集に来ていたようだ。

 そして手を振っているのは小春こはるである。

 薬師で崩彦くえびこのかみスキル持ちの小春こはるである。



「なるほど、話は聞かせてもらった!」


 小春こはるが目を輝かせている。


「何か珍しい実験動物扱う目で見られてる気がするけど、やるならさっさとやってくれ」


 ケイはシキの上で干し布団状態である。恐らく複数の毒にやられていて動くこともままならない。残りHP30%ほど。


「状態異常が四つついてるね。HPの横のアイコンで分かる。視覚毒、マヒ毒、虚脱、出血毒だってさ」


 どうやら薬師はジョブスキルで状態異常が見える様である。


「どうせだから覚えたばかりのLv2スキル使ってみる!」

「いや、そこまで大仰おおぎょうなのは頼んでないんだけど」

「『けまくもかしこき 見守り給う神々に しこみしこみまおす!』」


崩彦くえびこのかみ   ことごとに天の下の事を知る】


 ケイは特に何か変わった気がしない。


「うん、四つ見える」

「ほんとだ」


 周囲の視界には変化があるようである。

 ケイもホワイトアウトしている視界で自分のHPMPゲージを確認すると、確かに状態異常と思しきマークが四つ付いていた。


 何だかんだ言って周りに来ていたメンバーが意見を交わす。


「瞳孔散大と筋弛緩か?」

「……何の蛇なんだろ?」

「ゲームですからね」

「ついこの間まで葡萄ぶどうの木じゃない木から葡萄ぶどう採れたからね」

「蛇の種類によって毒が違うなら見分ける方法とかあればいいんですけど」

「無いだろうなぁ、ランダムに何かの毒を食らう感じだったはずだ」


 このままだといつまでも放っておかれそうである。

 ケイが声を上げた。


「もういい? 治してほしいんだけど??」

「私状態異常の回復薬持ってないぞ。レシピも知らない」

「おい」


「とりあえず、HPだけでも回復しますね」


 見かねたえにし拍手かしわでを打った。


「『けまくもかしこき 見守り給う神々に しこみしこみまおす』」


大国主おおくにぬしのみこと   がま


「あれ? 今状態異常も消えなかった?」

「三つになってる」

「出血毒だけ消えた」

「HPの減少が止まったな。やっぱ出血毒がHP減少か」

「蒲の穂の止血作用って事??」

「やっぱもうちょっと色々検証しないか?」


 盛り上がる始末である。


「他人事だと思ってお前ら」

「いやいや、限られたリソースを有効活用するのに大事な検証だぞ」



「ところでさ、アレ、何だろ?」


 影助えいすけが盛り上がるメンバーに声をかけた。


「あれって?」


「あのアイコン、さっき急に見え出したんだ。

 タイミング的に小春こはるさんが使ったスキルに関係してる気がするんだけど」


 影助えいすけす方にジオが目を凝らす。


「罠のアイコンしか見えんけど」

「じゃあそれかな? 何で見えるようになったのかは分からないけど」


 それを受けて小春こはるが事もなげに言った。


「そうだよ、崩彦神くえびこのかみLv2スキル使うと全員にエリア内の罠と敵のHPMPが全部見えるようになるんだ。地味だし、使ってる間は私の最大MPが一時的に減るけど」


 すかさずケイがコメントする。


「お前それ神スキルだぞ」

「思わぬところから褒められが発生した?!」

「俺がこうなったレコード見たら分かる」


 小春こはるがそっちのレコードの内容の方に気をとられたため、これを機に緑火鳥居に向かう事になった。

 他に状態異常を検証する方法が思いつかなかったのもある。


 歩きながらふとアンが思い立った。


「罠って見えてれば忍者以外も解除できるんでしょうか?」

「丁度いいから試してみるか」


 影助えいすけが罠アイコンを武器で突いてみる。

 結論。見えていても忍者以外は罠を解除できない。忍者以外の武器に接触判定が無いのである。



 のんびり帰り道、緑火鳥居が見え、各々がスキルの実験などし始めた頃である。


「あ、治った」


 突然ケイの状態異常が完治した。

 ジオも横からケイのHP横の状態異常を確認する。


「ほんとだ……時間経過かな? 後でレコード見せて」


 一方、小春こはるよう達で盛り上がっている。


「うわー! 何これすごい! 薬師でも戦えるんじゃない!?」

「でもこれだと三人同時に消耗するんですよ」

「あ、ごめんごめん」


「あれ何やってんの?」


 でっかい白い剣のような光を振り回している小春こはるが見えた。


「視覚毒の状態異常って仲間がスキル使っても表示が見えないのか。

 しゅんようの連携スキル、布都御霊剣ふつのみたまのつるぎだってさ」


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