表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/132

53.ボス出現

「何々?!」


 地響きが辺りを取り巻く。


「ケイ! まだ鳥居見つけてない! 今スキル消されると困る! 囲まれる前に全力で走れ!

 赤裸裸せきららさん達! ケイから離れてください! 騎士でも止められるか分からない! 最悪巻き込まれる!」


「ええ!?」


 ジオが指示を言う間にも地響きが鳴り続けている。


 VRMMOクローズドベータ版。

 現在、ボスを偵察しにボスエリアに到達したケイ達三人組パーティーと赤裸裸せきらら達二人組パーティー、計五名。プラス、ケイのマップ表示スキルによればエリア内に居る不明なプレイヤーが二名。


 うっそうと茂る木々の隙間に巨大な影が動いた。

 崖が動いている。


「……蛇……?」


 あまりの巨大さに呆然とするケイ。

 しかもその後ろから、同じく巨大な蛇が鎌首をもたげた。

 ケイはそれを見た途端にシキを走らせる。最初にターゲットにされるのはスキルに挑発効果のあるケイだからである。


「何匹居んだよ!!」


 そう言うケイに、頭上から声が降って来た、ジオは木の上に居る様である。


「頭は八つ! 八岐大蛇やまたのおろちだ!」

「マジか!?」


 それが合図だったかのように複数の首が一斉に頭をもたげた。

 ケイの背後、近い場所で崖崩れのような凄まじい音がする。岩の転がる音、木々が折れ倒れる音。八岐大蛇やまたのおろちの首の一本が突っ込んできたのである。

 森を潰し、地面を抉って進んでくる。


赤裸裸せきららさんたち無事!?」

「お前より無事だ。ターゲットにされてるのお前だからな」


 ジオは言うまでもなく無事だった様である。

 ケイが後ろを振り返ると、鉄人てつとがヘビの頭に一撃加えたところであった。


「うわ硬っ!」

鉄人てつと!」


 ケイが言う間に、もう一方から赤裸裸せきららが切り付ける。蛇が大きくのたうって下がったので、攻撃に参加していた二人は加速して距離をとった。一時的にケイに並ぶ。


「やっぱ赤裸裸せきららさんぱねぇ」

「ああ、パッシブスキルかもしれません。私のスキル、須佐之男命すさのおのみことなので」

八岐大蛇やまたのおろち特効みたいなピンポイントスキルある!?」


 そういえば赤裸裸せきららさんのスキル知らなかったな、と思うと同時に、前にジオが須佐之男命すさのおのみことのパッシブスキルも分からないらしいと言っていた事を、ケイはふと思い出した。


 ケイは何かに気付いてシキの進路を変える。黒い影が落ちて来た。


「蛇の八十禍やそまがつが木の上に居る!」

「はぁ!? 厄介な」

「倒しましょう」


 大薙ぎで仕留めようと鉄人てつと赤裸裸せきららが前に出た瞬間、ケイの左右から八岐大蛇やまたのおろちの頭が襲い掛かって来る。


「ケイ!」

「大丈夫避けられる!」


 ジオに返事をしながら背後から迫っていた八岐大蛇やまたのおろちを避ける。

 しかしそのまま首を振って薙ぎ払ってくるのはケイの想定外の動きである。身軽なジョブなら躱せるが、騎獣持ちは縦移動に弱い。

 二人分の拍手かしわでと声が響いた。


「『けまくもかしこき 見守り給う神々に しこみしこみまおす!』」


 大きくしなった胴体がケイに迫って来たところに、突進が割り込んだ。


「二神連携!」


【二神連携   布都御霊剣ふつのみたまのつるぎ


 白く輝く巨大な剣の一閃が八岐大蛇やまたのおろちを押し戻す。

 首が警戒したのか、鎌首をもたげて距離をとった。


「よおし!」

しゅん。今回は偵察ですから」

「はいはいっと」


 忍者の隠形おんぎょうだろうか。一人しかいないはずだが二人分の声が聞こえてくる。

 光が止むと白い鹿型の騎獣には二人乗っていた。


 一人は黒髪長髪、長身で白い羽織と黒い袴の武士。武器の大きさから恐らく騎士。

 一人は青髪のよくあるショートヘアー、やや小柄で現代の一般市民の様なフード付きパーカーと半ズボンとサンダル。山歩きしてたら怒られる服装なのはVRならではである。そして腰に刀を差している。おそらく徒士か忍者。


「あ……」


 青髪の方がケイを見て声を上げた。

 ケイは見覚えが無い。


「お世話になってます?」

「なぜ疑問形?」


 ケイは開口一番ツッコミを入れたが、知らないプレイヤーである。


かなめの身内で、ようしゅんです。ご挨拶は後程改めて、とりあえず脱出を優先しましょう」


 黒髪の方が自己紹介した。話が早い。


 ケイとしゅんようが並走する。


「緑火鳥居がこの先にあるから!」

「やっぱそれ例のスキルかー、すげー目立つ」


 頭上に術の軌跡が光り、木の上の蛇が撃ち落とされる。えにしの術である。

 鉄人てつとが頭上に声を上げた。


「ジオ! えにしさんもついてこれてるか?」

「むしろそっちが大丈夫か? 奥から進路方向に大蛇おろちの首伸びて来てるんだけど、見えてる?」

「見えてない! 指示ナビしてくれ! 地上じゃ見えないから!」


 その様子を見てしゅんようにたずねる。


「俺も上行こうか?」

しゅんはここに居なさい。連携スキル使いにくいから」


 再び八岐大蛇やまたのおろちの首がケイの方に向かってくる。位置関係から相手の動きがよく見える。余裕をもって躱せる。


「ケイ! そこ踏むな!」

「は?」


 ジオが言った瞬間にシキが小さく「ミ゛ャウ」と声を上げた。とらばさみ状の罠に引っかかって足が止まったのである。


「シキ! 戻れ!」


 式神を一旦消して罠を解除する。しかし、ケイには至近距離に迫った巨大な洞窟の様な大蛇おろちの顎を躱す方法は無い。

 顎が閉じられた。


「え……ケイ、食われた……?」

「リスポーン地点行きかなぁ……」

「一人用ゲームだと、食べられた人が何かすると出て来れる事が多いんですけどね……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ