表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/132

52.ボスエリアへの順路

「これは……どう判断したらいいんだ?」


 二階層1エリア目。ケイたちの道案内スキルには黒い火が二つ。赤い火の玉と黄色い火の玉を取り巻いて揺れている。

 黒い火はボスの居る方向と推測されていた。しかしそれが二か所に灯っているのである。


「ボスは二体も居ないよな?」


 推測が外れていたのだろうか?

 ケイの問いかけに、しばらく黒い火を見ていたジオが口を開いた。


「多分、どっちに進んでもボスエリアに着くんじゃないかな? とりあえずどっちかの黒火を追ってみよう。確認しないと分からないし」

「じゃあなるべく二階層を進んでほしいな。三階層見晴らし悪くて緊張するし」


 ジオの推測に提案したのはサラである。

 黄色い火の玉は同階層の別エリアへ向かう鳥居の位置。赤い火の玉は上の階層へ向かう鳥居の位置である。

 基本的に低階層の方が難易度は低い。


 VRMMOクローズドベータ版。

 現在、ケイ達のパーティーはダンジョンでアイテム収集、兼、スキルの検証、兼、偵察である。

 元々ボスが低層に居る様だったら行ってみよう。程度の無理のない予定であった。


 黄色火鳥居をくぐると、赤い火の玉の黒火が薄くなる。

 一方で黄色い火の玉の黒火は消えた。

 ダンジョンのエリア間のつながりは複雑なようだ。


「なるほど、ボスが近づくと変化するのか」


 黒い火の灯っている方に向かう、黄色火鳥居を抜けた先のエリア。いよいよ赤い火の玉を取り巻いて黒々とした炎が立ち上った。


「次っぽいな」

「それなら、私ここで離脱しよっかな。偵察だけなら足手まといだろうし」


 サラはボス前に離脱するというのは元々皆で決めていた事である。

 ケイとサラの連携スキルの効果が連携相手が片方居なくなっても続くのかどうか、検証も兼ねている。


 ケイ達四人は緑火鳥居の前に居た。


「じゃあ、梨は貫名かんなさんに届けとくから」

「悪い、お使い頼んじゃって」

「ついでだからいいよ……無理しないでね」


 サラが気づかわしげに言って、緑火鳥居を抜ける。


 ケイ達三人はサラを見送った後、火の玉を確認する。見た感じは変わっていない。黒い火もそのまま灯っている。


「スキル、キャンセルされないな」


 しばらく見つめてジオが口に出した。


「一度スキルを出すと持続か。さすがにキャンセルしたら一人じゃ出せないだろうけど」


 ケイとサラの連携スキル、一度出せばサラがダンジョンから退場しても消えない。

 次はボスエリアの確認である。




 赤火鳥居を越えた先。スキルの黒い火がケイの頭上高くで燃えている。

 ここがボスエリアで間違いないようである。


「三階層ってこんな山だらけだったっけ?」


 木々の向こうに赤茶けた崖が横切っているように見える。


「ほとんど周囲が見えないな」


 見ればほぼ三方が崖で囲まれているような状況である。


「近くのエリアには人が居ないみたいですね」


 えにしがケイのスキルを確認している。


「緑火鳥居はあっちの方みたいです」


 えにしが指差したその時、何か地響きのような、大きなものが動く音がした。


「俺、囮になるか?」

「よし! 頼む! 俺ら遠巻きに緑火鳥居まで行くから」


 えにしが反射的にケイを止めようと口を開きかけたが、被せてジオが言い切った。

 感情的には味方を一人でおとりにするのは気が引けるが、まとまって居るとボスの突進で壊滅という事態がありうる。まだボスの姿すら見つけていないのである。



 ケイは先導して森を走り、たまに立ち止まる。ジオ達は木を伝って追いかけてきているはずである。

 ケイが何回目かに立ち止まった時。すぐ前方に金色の火の粉がちらつくのが見えた、方向からしてジオ達では無い。

 ボスを引き寄せて巻き込んだらまずい、と方向を変えようとしたところで遠くから声を掛けられた。


「ケイさんもボスエリア偵察ですかー?」

赤裸裸せきららさん!?」


 散歩ですかみたいな調子で声をかけてきたが、ここをボスエリアと知って来ているならむしろ一緒に居た方がいい。

 少し距離をとって声をかける。


赤裸裸せきららさんはどうしてここに?」


「ソライロさんのスキルで送ってもらいました。

 鉄人てつとさんと翡翠ひすいさんも来るはずなんですけど……トラブルかな?」


「トラブル?」


道敷大神ちしきのおおかみの仕様が変わったっぽいんですよ。

 以前は鳥居を出している間、MP消費しませんでしたよね」


「あー……仕様変更か……」


 少し離れてそんな会話をしていると赤裸裸せきららのすぐ近くに黒い火が燃えて、もう一人エリアにやってきた。鉄人てつとである。


赤裸裸せきららさん! 偵察中止だ!

 道敷大神ちしきのおおかみを人が通るとソライロがHP吸われて死ぬ! 翡翠ひすいさんに任せて撤退させた!」


「なるほど、了解しました。そういう仕様に変わったんですね」


 連絡のついた鉄人てつと達にケイが声をかける。


「じゃあ皆で緑火鳥居まで行く? うちは他にジオとえにしさん来てるけど」

「うお!? ケイ居たのか!? 何でボスエリアに!?」


 今気づいたようで鉄人てつとがケイに向き直る。


「連携スキルの検証でボスエリアまで来たんだよ」

「まだボスには遭遇してないのか?」

「ここがボスエリアなのは間違いないと思うんだけど……」


 と、頭上の黒い火の玉を見た。

 すると見ている前で新しい火の粉がエリア内に二つ降った。新しくプレイヤーが来たらしい。少し遠い位置である。


 ふと気配を感じてケイが振り返る。


「ケイ、木の上からボス見つけた。近い鳥居まで逃げるぞ」


 気配はジオだったらしい。隠形を使ってるので名前とHPMPバーしか見えない。

 同時に地響きのような音がし始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ