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28.対思兼神戦 包囲

「あっちか!」


 上空を斜めに飛ぶ術の軌跡が見える。アンの術である。

 ボスを追跡しているメンバーからの合図であった。


 と、森を走るケイとシキから少し距離をとって並走する影が見える。


 敵を移動不能にする伊邪那美いざなみのスキルの効果範囲から出たのである。八十禍やそまがつが動けるようになり、ケイ達を追ってくる。

 そっちに注視している内に、反対方向から襲い掛かる影があった。


 ケイは敵の動きは読んで防いだが、攻撃してくる方向は読めても手が足りない、何せ三方向から一斉に襲い掛かってくるのである。シキの威嚇とケイの護符型式神で相手の動きを止めるのが精一杯であった。


鉄人てつと!」

「上出来!」


 距離を開けて後ろから追ってきていた鉄人てつとが猛然と加速してきて大太刀を振りぬいた。

 三体の八十禍やそまがつを一刀両断とばかりに切り倒す。

 八十禍やそまがつが消えたのを確認しながら即座に速度を落とし、ケイに並んだ。


「なぁ、今俺とシキごと切らなかった?」


 味方攻撃は無いから心配は無用である。


「悪いがまた囮頼む」


 そう言いながら、鉄人てつとが再び速度を落とし、ケイから距離をとる。

 スキルで目立ちまくるケイを囮にし、騎士の鉄人てつとが高火力で叩き切る方針である。


「見えた! 赤裸裸せきららさん達だ!」


 木立の向こうに赤い鎧と白いヤギが見えた。




「囲まれます!」


 周囲を見渡したアンがスキルで敵の位置を確認し、赤裸裸せきららに告げた。


「なるほど、ボスが速度を落としたのはそのせいですね。

 囲まれる前に離脱しましょう。

 プランC、鉄人てつとさん達が間に合わなかった場合、ソライロさんのスキル効果範囲内に引きこもって体勢を立て直し、八十禍やそまがつを殲滅して動きやすくします。

 ボスが回復する前に叩けるかが勝負ですね」


 そこに拍手かしわでが響き、黒に近い赤茶の巨大猫と焦げ茶色い巨大馬が飛び込んできた。ケイ達である。


「『けまくもかしこき 見守り給う神々に しこみしこみまおす!』」


 鉄人てつと鹿毛坊かげぼうから飛び降りると同時に、スキルを発動する。


伊邪那岐命いざなぎのみこと   瑞穂みずほ祖神おやがみ


 伊邪那美いざなみと同一効果のスキル。

 八十禍やそまがつにだけ感じる地震が起こり、草木が進行を妨害し、強風が吹き荒れた。

 周囲を囲み始めていた敵の動きが止まる。


 突然の乱入者にも、ボスAIは対応する。

 ボスが狙ったのは八十禍やそまがつの動きを封じた鉄人てつとである。

 ボスが杖を突き入れるが、そこは鉄人てつとは騎士。

 すんでの所で大太刀で突きを受け止めた。


 赤裸裸せきららが突進して牽制に槍を振るう事で強引に距離を開けさせる。


「うわ戦闘になるとここ怖い」


 豪登ごうとに咥えられてぶらんぶらんしている小春こはるはのんきな事を言っている。


 アンが術を撃ち込んでボスの行動を阻害し、声を出した。


「包囲して! 逃がさないように」


 ケイがボスの前に回り込み、至近距離で振るわれたボスの杖を受け止め、押さえようとした。

 ボスは杖の逆の端で掬い上げるようにシキの首元を強く一打ちする。


「ギャンッ!」


 シキがケイごと、軽く後ろに飛ばされる、式神へのダメージによってケイのMPが大きく削れた。


 包囲を脱出しようとしたボスに、上から奇襲をかけた影があった。

 ボスは受け止めてダメージはなかったが、動きは止まる。


「カバーは忍者がやる」


 ジオはそう言って再び隠形おんぎょうで消えた。


「シキ! 包囲を手伝って!」

「みゃう!」


 これで伝わるので優秀なAIである。


 何とか少人数で包囲したところで、アンが鉄人てつとに声をかけた。


紫苑しおんは?」

「道中でやられた。回復中。数分耐えてくれ」


 赤裸裸せきらら小春こはるに声をかけた。


小春こはるさん、ボスの残りMPは?」

「63%ぐらいです」

「そろそろ行動制限が出てくる頃ですね、丁度いいかもしれません」


 全員でボスを囲んで打ち込むが、全てうまくいなされてしまう。

 戦況分析系スキルとAIの反応速度だから当然ではあるかもしれない。

 しかしボスはそのスキルを維持するために今もMPを消耗している。プレイヤーの狙いはそこにある。

 一方で打ちこむほどにMPダメージが蓄積して動きが鈍ってくるケイがぼやく。


「全然当たんねー」

「逃がさなきゃいい。最後はこっちが有利だ」


 隣の鉄人てつとがスキルを維持しながら返した。


 至近距離だとエフェクトが味方の目くらましになってしまうため、小春こはるが爆弾で援護できないのもある。

 何といってもどちらも決定打に欠けるのである。


 双方が事態が動くタイミングを計るように膠着こうちゃく状態になりつつあった。


 増援を待っているプレイヤーの方が有利、なはずである。


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