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15.一気に三階層

 純和風(?)VRMMO。現在クローズドベータテスト中。


 五層あるダンジョン内を徘徊するボスを攻略するダンジョン攻略ものである。


 現在、四人パーティーでダンジョン一層1エリア目を散策中。広い草地。所々に丈の高い草木が生えるが、比較的見通しの良いエリアである。

 始まったばかりで分からない事も多いため、他のプレイヤーと会ったら積極的に情報交換が行われている。



 今は六人で赤い火の灯る鳥居に居る。

 鳥居の左右に火が二つ浮いていた。


「赤い火が上に浮いてたら上層、青い火が下に灯ってたら下層に向かう鳥居です。火の個数で向かう層を表してます」


 赤裸裸せきららが解説する。


「長く居ると自分がどの階層に居るか忘れがちです。特に一、二階層は似てるんで気をつけてください。

 一応二階層には沢があったり森が少し深くなってたりという特徴はあるのですが、うっかり三階層に入り込むと騎獣持ちさんはちょっと困るかもしれません。

 敵の傾向が変わるのは四階層からなんで、大苦戦するという事はないと思いますけど」


「そうなんですか?」


「基本的に階層が上がるごとに地形が立体的になっていくんですけど、三階層、たまに谷や崖があったりすると厄介なんですよ。

 騎士と式神使いだけですが、騎獣持ちは崖貼り付きの判定がシビアになっています」


 えにし赤裸裸せきららに尋ねる。


「崖貼り付きって、木登りの時に幹を垂直に走って上れるのと同じ仕様ですか?」

「ですです」


 ケイがジオに尋ねた。


「え、猪の時どうやって木に登ったのかと思ってたけど……皆、木を走って上れんの? 八十禍やそまがつをやり過ごすとか? 俺不利だったりする?」


 聞いたジオがあちゃーといった風に額に手をやる。


「まぁケイは必要ないよ。木に登らないといけない敵って少ないし。そういう強敵は木に登って来たり木をへし折ったりするし」


「そっか」

「木に登るのは地形を確認したり鳥居を探す時とかだよ」

「鳥居? え、ああそっか、普通はこのスキル無いんだ。あれ? 俺だけ別ゲーやってる?」


「……普通は鳥居探しで1エリア毎にかなり彷徨さまようんだ。複数エリア移動するなら食料とかかなり消耗するぞ」


 とにかく騎獣持ちは手足の内、3カ所接していないと落ちるのだという。ただしこのゲームには落下ダメージは無い。


「その分、騎獣は平地では移動速度が速くスタミナ切れも無いわけです。垂直面の接触判定と掴み判定などはまた違う判定になってますから、力技で崖も上れます。

 そして騎獣はナビゲーションAIで上り下りする場所が分かるみたいで、迷ったときは騎獣に任せるのも手ですね」


 赤裸裸せきららは一通り話して鳥居を向いた。


「私に言えるのはこんな所でしょうか。では、行きましょうか翡翠ひすいさん、豪登ごうと

「ほーい」


 赤裸裸せきららは後ろに翡翠ひすいを乗せ、騎獣を促して二階層に進んでいった。


 ゴートなんだ……と残された四人は思った。




「何これ木登りめっちゃ難しいんだけど!」


 ケイが木の幹に蝉のように張り付いたまま動けなくなっているその横で、えにしが二足歩行で幹に立って見守っている。


 その隣でジオと影助えいすけが話していた。


「どうします? ちょっと二層まで行ってみます?

 俺も二層までは行った事ありますけど、多分このメンバーなら大丈夫だと思います」


「大丈夫そうなら俺も出来るだけ先行ってみたいかな。次いつパーティー組めるか分かんないし」

「俺もー」


 ケイが幹から滑り降りてきた。


赤裸裸せきららさんも三層までは地形以外の難易度は大体一緒って言ってましたから大丈夫だと思います」


 えにしも付け加える様に賛意を示す。


 満場一致で、ちょっとだけ進んでみることにした。



 二階層。明るい森。心持ち一階層より木が多い程度の違いである。赤裸裸せきららが自分の居る階層が分からなくなりがちと言ったのもわかる。


「『けまくもかしこき 見守り給う神々に しこみしこみまおす』」


猿田彦さるたひこのかみ   道標みちしるべ


 様子見の為にスキルを消していたケイが、再びスキルを発動する。

 次のエリアに移動するための鳥居の位置が、浮かぶ火の玉で表示された。


「……青いの何だ?」


 いつもの火の玉に、見慣れない色が入っている。

 赤は上の層に向かう鳥居、緑は街に戻る鳥居、黄色は隣接エリアに向かう鳥居を示している。


「青は下の層に向かう鳥居じゃないかな? さっき赤裸裸せきららさんも言ってたし」


 今まで一層にしか居なかったので、出てこなかったのだと思われた。


「あ~、なるほど……こういうの見ると、確かに層を上がらないとスキルの全容が分からないとか起こりそうな気がするな……」


「書いといてくれりゃいいんだけどな……」


 ぼやくのはドレッドヘアー侍。影助えいすけ

 未だに自分のスキルの内容が分かっていないのである。


 火の玉を見上げてえにしが言った。


「緑の鳥居、遠いですね」


 ケイも見上げて唸る。


「全部遠いな。何なら三層に向かう赤い鳥居が一番近い」


 ジオが大雑把な方針を出した。


「……この辺でレベル上げしてみて、だめそうなら緑、大丈夫そうなら赤い鳥居に行ってみます?」



 そうして散策する事、数分。


八十禍やそまがつ少なくね?」

赤裸裸せきららさん達が倒しちゃったんじゃないか?」


 意気込んで二階層に入ったものの、一階層と比べて遭遇頻度が格段に低いのである。


 ジオが周囲を警戒しながら呟く。


「来るときはわーっと三方向から来るのは何なんだ……」


 一階層と代わり映えせず、敵の出現頻度だけが下がったという印象である。


「これもう三層まで行っちゃっていいんじゃねーかな。三体同時に来ても大丈夫だし」

「確かに、敵の強さはそこまで変わらないみたいですし」

「行っちゃう?」

「空腹度との兼ね合いもあるし。様子見で三層に入って、真っすぐ緑の鳥居目指すってのは?」

「じゃあ、そうしようか」


 思い切って三層に向かう事になった。


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