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132.オープンベータ

 ログインした先は木のログハウスの様な一室。


「こんにちは! この里の説明をするよ!」

「よー」

 足元には小型犬の様なぬいぐるみの様な狐と狸が居た。

 目の前の鏡には里のミニチュアみたいなものが映っていた。四方を山や海に囲まれている自然豊かな里である。


「この里の四方は春夏秋冬が巡っているんだ!」

「いつでも海山の旬の味覚だよー」

「この里では日本の神様の助けを借りて色んな敵と戦うよ!」

「敵は神様とか妖怪とか色々だよー」


「神様は荒魂あらみたまっていう戦いや災害の力もあるんだ!

 その力を安全に開放するためにこの里があるよ!」

「お仕事で疲れちゃった神様達がアバターで大暴れしてストレス発散する感じだよー」


 どこかで聞いたような説明である。


禍津日神まがつひのかみっていう姿で力を発散させてるよ! 見つけたらぜひ戦ってあげてね!」

「すっきりしたら直毘神なおひのかみになって帰っていくよー」


禍津日神まがつひのかみは大抵鳥居の向こう側に居るよ!」

「鳥居の向こうは迷子になりやすいよー皆はまよいのみやと呼んでるよー」


「力を与えてくれる神様もそれぞれ得意なことが違うよ! まよいのみやを導いてくれる神様や戦いが得意な神様がいるよ!」

「色々調べてみてねー」


「鏡に触るとジョブと神様を選べるよ!」

「色々試してみてねー」


 二匹がそう言うと鏡が里の映像から変わって普通の鏡になる。


「あれ!? ケイさんは前もここに来たことがある!?」

「そのままの姿がいいー? 変えるなら鏡に触ってくれれば色々説明するけどー」


 目の前の鏡には灰色がかって落ち着いた色の赤茶の髪。でかい白のヘッドホン、赤を基調とした狩衣。腰に巨大手甲鉤。


「シキ」


 呼び出したシキは前の通り。赤黒い毛並みの巨大猫である。

 心持ち不安そうな目はお役御免を恐れているのだろうか。

 ケイはシキをわしゃわしゃ撫でた。


「行くぞシキ」

「行くのー?」

「行くよー!」


 シキに声をかけたら、なぜか狸と狐が反応した。

 チュートリアル開始である。


 外に出ると小さなやしろの様な小屋がいくつも建っていた。人がやっと入れるぐらい。その小屋の中には様々な種類の八十禍やそまがつが待ち受けている。


「あれが八十禍やそまがつ! 荒魂あらみたまのカケラのカケラみたいなやつだよ! 強くはないよ!」

「神様は分身出来るからいっぱいいるよー攻撃しなければ動いてこないよー腕試ししてみてねー」

「狼、兎……蜘蛛くも百足むかではちへびかえる……初めて来た人泣くぞ」


 チュートリアルに混じってこれでもかと恐怖症あるあるの八十禍やそまがつが配置されている。


「無理に倒そうとしないでね!」

「倒せなかったら、後でその敵を避けるアイテムをあげるからねー」

「なるほど、ここで比礼ひれを渡すのか」


 恐怖症の人のための八十禍やそまがつ避けのアイテム、ここで渡すことにした様である。


「……バグ検出は大事だよな……」


 ケイは拍手かしわでを打った。


「『けまくもかしこき 見守り給う神々に しこみしこみまおす』…………お、レベル2まである」


猿田彦さるたひこのかみ   支加わかちくわえ


 ケイの頭上高くに火の玉が燃える。頭の近くには緑の火の玉がぽつんと浮かんでいた。

 狸と狐が話しかけてくる。


「それは出口を見つけるスキルだよ! 緑の火が町に行く出口を表してるよ!」

「今は動かないけどー、八十禍やそまがつはその火の玉に寄ってきちゃうから気を付けてねー」


 練習用ダンジョンの二の舞はなかった運営である。

 以前の練習用ダンジョンではケイのスキルで八十禍やそまがつが一斉に向かってきた。


「……君ら味方扱いなのか……」


 二匹の居る位置に金色の火の粉がふわふわしていた。


 実はほぼ練習用ダンジョンと同じ轍を踏んだ運営である。

 瑞穂みずほ祖神おやがみなど殺傷力が無いが範囲が広いスキルを使うと一斉に八十禍やそまがつが向かってくるという不具合が解消できず、お助けキャラとしてNPC二匹に戦闘力を追加していた。


 直前で小屋内とエリアを分断することを思いついて小屋の外まで追って来ない設定にし、事なきを得た。二匹の味方表示はその名残であった。


 敵を倒すと小さなやしろにあるアイテムをとれるようになる。


比礼ひれと素材アイテムだと比礼ひれの方がお得なんじゃないかと思ったけど、結構割に合うかな」


 石複数個や透明勾玉である。


「石や勾玉は自分を強化したり回復薬の材料にしたりできるよ!」

「素材だよー」


 そして何かとお世話になる葡萄ぶどうや竹や桃である。


葡萄ぶどうや桃は食べてもおいしいよ! 倒れてる人に食べさせてあげてね! 敵に投げるとびっくりすることが起こるよ!」

「竹はお薬を入れられるよー竹だけでも投げ付けると敵を足止めできるよー」

「お、おう」


 こんな感じでチュートリアル終了である。


「……HPは上がらずにMPと攻撃力だけ上がってるけど……こんないびつな上昇率だっけ? つーかレベルどこ??」




 プレイヤーの拠点は思った以上に人が来ていた。

 オープンベータ、それなりに盛況である。


 シキの上から見下ろすまでもなく知り合いに声を掛けられる。


「あ、よーやく来たな」

「こっちだってリアルの用事ぐらいあるよ」


「結局そのまんま式神使いで猿田彦さるだひこなんだな」

「最初に言ったじゃん、別に暴れる気は無いって」

 シキがケイの頭に顎を乗せてゴロゴロ言っている。


 ジオが説明しながら拠点を回る。


「アイテムはそのままだ。手に入れたボス勾玉はアルバムが出来てる。

 レベルはリセットされて研鑽性になった。使うほど消耗するほど能力値が上がってく奴。ただしキャラのジョブや神様の特性によって上がり幅に補正が入る」


「ああなるほど、思い切ったな」


「スキルレベルは上がったまま。ケイの場合はLv2、支加わかちくわえまで使える状態」

「ああ、さっき使ってみたらそうだったな」


「あと大きく変わったことがある」

「何?」

「純和風VRMMOじゃなくて和風VRMMOになった」

「それはどうでもいい」


「あとは神産巣日かみむすびのかみのスキル名が『枳佐貝きさがい蛤貝うむがい』になったとか」

「え、ああ長いし何か誤解されそうだもんな……」


「あとダンジョンの地形がランダムになった。って説があるけど未確認。一階層に海が来たりとか」

「それ一番重要だろ!?」


「オープンベータの客層は山菜採りVRって聞いてきた人が多いな」

「この運営がやりたかったのって本当にそれなのか?? 純和風詐欺の次は山菜採り詐欺とかやめてくれよ??」


 そんな感じで雑談を交えながら機能を確認していく。



「……えらいファンシーな模様の熊居たな……」


 他のプレイヤーとすれ違う事もしばしばある。


「熊だとサイズが実物と近いからな、プレイヤー咥えて運ぶときとかにトラウマとか起こしにくいように自然に無い配色になったらしい。ギンも狼だから青っぽくなってたぞ」


「おお……そんな事が……」


 広場まで来ると何人か知り合いが居る。


「あ! ケイようやく来た! 猿田彦さるたひこだよな!?」

「何? 何かあったの?」


「ケイはしばらく引っ張りだこだと思うぞ。ダンジョン案内できるスキルの人が思ったより少ないのと、スキル持ってても戦闘したくない人が多いみたいなんだ。ボスに挑戦するのにマッチングが難しい」


「なるほどね……いや猿田彦さるたひこで戦闘しないのは無理だろ」


「だから少ないんだよ。戦闘するなら戦闘系のスキルとりたいって人多いし。あとボス行くまでにちょっとダンジョン歩かないといけなくなった。素戔嗚すさのおのエリアみたいな感じ」


「もうボスに遭遇した人がいるって事?!」


建御雷たけみかづち経津主ふつぬしっぽい」

「………………連続!? 何かストレス溜まる事あったの神様!?」

「最近地震少ないからなぁ……過労じゃね?」


 言いながら大所帯で鳥居に向かう。


 とりあえず最初はいつもの通り、様子見の予定である。







純和風()VRMMOの運営とベータテスターがまた頭抱えてる


https://ncode.syosetu.com/n3974ik/



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