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126.対建御雷神戦 天鳥船対策

 前衛ほぼ全員やられて戻ってきたので、皆でシアタールームに集まってボス戦の再検討である。


 冒頭はほぼ想定通りだった。


 そして紫苑しおんのスキルが炸裂したシーンである。

 当たれば大ダメージ確定だったのだが。


天鳥船あまのとりふねって何なんだよ……」


 敵味方を一瞬でエリア内のどこかに移動させるスキルと推測される。


「流石に追尾できないか」


 紫苑しおんのスキルにも追尾性能が付与されていたが、発動後だったためかスキルの軌道はボスを追っていない。

 移動していた先は術師が遠見で確認しないといけない洋上の浅瀬である。


「これで周囲を巻き込んで一気に有利な場所に移動されちゃうのがね……」

「後衛と分断されたのが痛い」

「ボスの移動に巻き込まれた人結構多いですけど、効果範囲割り出せます? ボスの至近距離に居た人だけですかね?」


「私、この岩の上に居たけど皆と一緒に飛ばされました。この辺までは効果範囲のはずです」

 かなめがレコードで示した。

「結構広いな」

「後衛が遠巻きにしてわざと巻き込まれて一緒に飛ぶって事もできなくもなさそう」


「ここに逃げられた場合、陸地から瑞穂みずほ祖神おやがみ届きそう?」


 聞かれた鉄人てつとがレコードの角度を調整しておおよその距離を測る。


「んー……ああ、島の端まで寄れば届くな。何だかんだ言って効果範囲広いし」


 黄泉津大神よもつのおおかみ戦で距離はかなり確認したので、鉄人てつとの目測は信用できる。


「それなら海上に居るボスに瑞穂みずほ祖神おやがみで一方的にダメージを与えることはできるわけだ」

「そんな何度も沖に行くかね? 次は島の反対側とかじゃない?」


「それは否定しないけど、九階層って暗礁だらけなんだ。ていうかほとんど暗礁でたまに深みと島がある感じ。だから歩いて渡れるけど深い所のやつに急に襲われたりする。

 確率的に浅瀬に飛ぶんじゃないかな。ボスに有利だし」


 一方でボスが凪枯ながれのスキルを回避したシーンである。


天鳥船あまのとりふねは連続して使うこと、できると思う?」

「見る限り結構MPの消耗大きいみたいだ。多用してくることはないと思う」

「クールタイムとか必要なのかも」

天鳥船あまのとりふね……甘いのトリュフね」


 貫名かんなが机に置いたのはトリュフチョコレート。手に持っているのは謎の物体。ヨウショウロ。トリュフの仲間のキノコである。どちらもゲーム中にもあるらしい。そしてこれを言うためだけに持って来たようだ。


貫名かんなさ~ん天鳥船あめのとりふね出てくる可能性、気付いてたなら言ってよ! 何か注意できたかもしんないじゃん」


 普段(しゅん)ようと一緒に居るせいか、建御雷たけみかづち戦で天鳥船あまのとりふねが出てくると思わなかったプレイヤーは多かった様である。

 ケイがジオを見た。ジオも前回、天鳥船あまのとりふねの事を思いついていたが言わなかったのを知っている。


「いや、どんな動きするか思いつかなかったから」


 貫名かんなが前回のジオとほとんど同じ事を言っていた。



 何はともあれ天鳥船あまのとりふねへの対策である。


「対策しないとさっきと同じく前衛が全員不利な場所に巻き込まれて全滅だが……」

えにしさん達に一緒に飛んでもらって地面作ってもらうのがベターな気がする。水中に居たら感電するし」


建御雷たけみかづち使ってる間は水の上も走れるけど、止まった途端沈むからそうそう深い所には移動しないと思う」


 普段から建御雷たけみかづちのスキルを使っているしゅんの意見である。


「そもボスって呼吸あるんだろうか?」

「沈めたら倒せたりする?」

「なるほど、荒魂鎮魂あらみたましずめだしな」


 貫名かんなのコメントをスルーして赤裸裸せきららが尋ねる。


貫名かんなさん塩乾玉しおふるたまとか無いです?」

煙玉けぶるたましか無いな~」


「しおふるたまってなんかおいしそうだけど多分違うんだろうな……」

 ケイが呟いたのにジオが返す。

「塩と玉子辺りを連想しただろ……。ふりかけとかじゃなくて海の神様が持ってる水位を下げるアイテムだよ」

「何その謎解きギミック不可避みたいなアイテム……」


「違う違う。瓊瓊杵尊ににぎのみことの子供たちの話。釣り針失くした事をどんなに謝っても許してくれない兄をらしめるのに海の神様が協力してくれた話に出てくるの。

 水位を上げる塩盈玉しおみつたまとセットで色々できる。多分元祖ざまぁ系エピソード?」


「元祖ざまぁ言うな」




天鳥船あまのとりふねはちょっと置いといて気になることがあるんですけど、途中で感電治ってません?」


「治ってる」


 レコードで確認してみてもボスのスキルで食らった感電の状態異常が途中で治っている。


「状態異常って勝手に治るの?」

「時間経過かな?」

「最初に食らった人が全員同時に治ってるから可能性高い」


 移動してすぐ、突然の瞬間移動に面食らっている間に全員攻撃の余波を食らって感電した。

 その後、天狗あまつきつねが降ってくるまでの時間稼ぎとして一致団結して攻勢に転じたところで全員一斉に回復している。


「以前に状態異常食らったときはもっと回復に時間かかった印象だけど」

「俺らはちょくちょく治ってる印象」


 しゅん達である。


「耐性みたいなのがあるのかな? しゅんは高レベル帯だし」

「白勾玉があるから状態異常耐性みたいなパラメータはあるはず」

「それにしたって赤裸裸せきららさんとか、最後の方の回復スピード早すぎませんか?」


 ジオと一緒に切られて感電してから、直後にしゅん達の攻撃に合わせる時にはもう回復しているように見える。


「ですよねぇ?」

 当の赤裸裸せきららも首をひねる。

赤裸裸せきららさんは割と状態異常耐性強い方だと思ったけど流石に早すぎる」

「戦闘中も耐性が付く?」

「ちょっと待って。それだと耐性高い順に回復するんじゃないか? 同時に回復してるのはおかしい」

「実は持続時間ランダムとか?」


 ケイはぼんやり以前似た会話をしたのを思い出していた。

 八岐大蛇やまたのおろちに最初にやられて帰る道中の事である。


「……布都御霊剣ふつのみたまのつるぎ?」

 それを聞いたジオが急にレコードを多窓に展開して確認し、ケイを振り返った。

「それだ多分」



「えー!! 布都御霊剣ふつのみたまのつるぎに状態異常回復効果あったならもっと作戦の幅広がったじゃん! 素戔嗚すさのお戦とか少名毘古那すくなびこな戦とかさ!」


 しゅんようをはじめ、頭を抱えてる面々である。


「いや、しゅんよう大国主おおくにぬし戦の主力だったから少名毘古那すくなびこなの方には割けなかったと思う」

「必中効果乗せられないから逃げ回られてるうちにMP切れてたんじゃないかな?」

「う~~、そういや俺が状態異常で困ってるとき大抵連携使えないこと多い……片手やられてたり」


 反省会している面々とは別にケイはジオを突いた。


「何でみんな布都御霊剣ふつのみたまのつるぎに状態異常回復効果があるのを当然の様に受け入れてんの? 俺が言うのもなんだけど割と脈絡なくない?」


「伝わってる布都御霊剣ふつのみたまのつるぎの神話がそんな感じだから。

 昔々、神武じんむ天皇の軍が熊の荒神に呪われて全員倒れた。そこに来たのが布都御霊剣ふつのみたまのつるぎを持った人。

 その人はお告げの夢を見た。建御雷たけみかづちが自分の剣を地上に下ろすと言っていて、それで家の倉を見てみたら夢の通りに置いてあったのが布都御霊剣ふつのみたまのつるぎ

 それでお告げに従って剣を届けに来た。その剣を渡すと熊は倒され一行は回復した。というエピソードがある」


「聖剣じゃん。布都御霊剣ふつのみたまのつるぎって今もあるの?」

「封印中らしい。神社に置いてあるのは複製品なんだってさ」

「……借りパク?」

「鹿島神宮にも置いてあるから借りパクじゃない。多分」




 一方、皆は真面目にボス対策を相談していた。


「やっぱ天鳥船あまのとりふねが不安要素だ。ボスは明らかにプレイヤーを分断して各個撃破できる性能だし」

「回復間に合わなかったら前衛総出でも壊滅しそうですからねぇ……」

「さっきの二の舞か……」

「レコードを見るに、後衛が居ないと削り切れない内に全滅すると思う」

「でも後衛ごと飛んだら絶対守り切れないぞ」

「短期決戦狙いなら薬師さん総出じゃなくても行けそうな気がするけど……何か方法思いつく? 何とかして天照あまてらす天狗あまつきつねぶち当てるぐらいまでしか思いつかないんだけど」

「術師の術で集中砲火したら足止めできない?」

「多少の目くらましにはなるかもしれないけど、建御雷たけみかづち使われたら術にぶつかっても突っ切られると思う。そういうスキルだし」

「大急ぎで回復してもう一回天照あまてらす撃ち込んだ方が速いんじゃないか? あるいはかえでさんに消費分散してもらって連発とか」

天照あまてらすの性能試した事あったんだけど、消費MPと引き換えの高威力攻撃なので使えるMPが増えても一撃の威力が上がるだけみたいだ。連発は無理」


 ジオがレコードとメンバーをしきりに確認する。


「ボスは意外と素戔嗚すさのおみたいに途中で後衛狙ってきたりしないから……分断されるのは避けられないとして……二、三段構えにしておくとか?」


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