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124.対建御雷神戦 天鳥船

 ばしゃっとケイは突然膝上まで水にぬれた。


「……ここどこ……?」


 足下あしもとこそ浅いが、目の前は見渡す限りの大海原である。




「っ!? 消えた!?」


 一方、後衛組は混乱していた。


 ボスにスキル攻撃が直撃した。

 しかし光の柱が消える頃にはボスと前衛組が消えていたのである。


 最初に我に返ったのはアンである。すかさず上空に術の矢を撃った。

 アン自身の追尾スキルでボスのいる方向が分かるはずである。


「あっち!」


 手を遠眼鏡の様にする。術師の遠見のスキルである。

 アンの指す方に目を凝らした鉄人てつとが呟いた。

「あれもしかしてケイのスキルの火の玉か?」


「居ました! 全員遠浅の沖に移動してます!」

 その時、スキル表示が現れた。


建御雷神たけみかづちのかみ   建御雷たけみかづち

建御雷神たけみかづちのかみ   建御雷たけみかづち


「まずいまずいまずい」

「どっちのスキルか分かんないけど戦闘が続いてる!」

「何か同時に出てなかった?」


天鳥船あまのとりふねって! そういうスキルか!?」

「どんなんだい!?!?」


 恐らく敵味方含めたエリア内瞬間移動スキル。今回はボスが緊急回避に使ったようである。




「いぎゃ!」


 ケイが小さく悲鳴をあげた。多少離れていても水中を伝って電撃を食らう。

 とっさにボスと切り結んだのはしゅんだった。

 双方、スキル、建御雷たけみかづち。ボスとしゅん、両方の電撃が辺りを走り、じりじりとHPとMPが減っていくが、しゅんの方が断然消耗が速い。


 紫苑しおん凪枯ながれはMPを使い果たし行動不能。そのままでは溺れるのでシキが拾い上げたが、そこまでであった。

 水で囲まれたここでは逃げ切れない。


 しゅんは鍔迫り合いを強引に解いて距離をとった。

「どーなってんだこれ!? ここどこ??」

 ケイが自分のスキルの火の玉の位置を確認し、困惑しているしゅんに答えた。

支加わかちくわえで表示される鳥居の位置が大きく向こうに移動してる……多分俺らが移動した!」


 紫苑しおんがシキの背中からケイに声をかける。

「MP使い果たした俺は放っていい!」

 シキに同乗している凪枯ながれが返す。

影助えいすけが夜の食国おすくに使ってるから紫苑しおんが居なくなると真夜中の海でボス戦することになるよ」


 瑞穂みずほ祖神おやがみ八十禍やそまがつが転がってきたことから分かる通り、このエリアには普通に八十禍やそまがつが出てくる。

 夜の食国おすくにはエリアが月夜に変わる代わりに八十禍やそまがつの動きを止めるスキルである。暗闇で非常に視界が悪くなるため、紫苑しおんのパッシブスキル、好天により相殺そうさいしている。

 こうして海で戦っている以上、紫苑しおんがやられると真っ暗になる。


「それならケイはスキル切った方がいい! 特に建御雷たけみかづちみたいなスキルが夜の食国おすくにがかかった水中の敵にどう影響するか分かってないし!」


「あ、そうか、解除! 解除!」

 ケイがスキルを解除した。


 夜の食国おすくに、広範囲の敵を静止させるスキルだが、ちょっとした刺激で動き出す。

 ケイのスキルはエリア内の出口と味方の位置を火の玉で表示する代わりに八十禍やそまがつを引き寄せる。エリアの出口の方向が分かっている以上、今は必要ない。


 さて既に最初の一撃の余波で前衛組は軒並み感電していた。

 感電。動きが鈍り、動くたびにダメージを受ける状態異常である。


建御雷神たけみかづちのかみ   立氷たちひ


「うおっとぉ!」


 海中から飛び出す針山を避けた赤裸裸せきらら豪登ごうとがバランスを崩す。海底に足をとられたようである。


「目の横タップして、八意思兼やごころおもいかねの設定いじってください! 海底が見えるようになる!」


 スキルの本来の使い手であるジオが指示を出す。

 八意思兼やごころおもいかね、攻撃の軌道や地形など、戦闘中の多くのデータが見れるがその分使い方が難しい。


「……ワイヤーフレーム?」


 設定をいじって海底を見えるようにしたケイの感想である。ちなみに表示形式は複数ある。


「逃げられそうですか?」

 かなめがタップで視界を操作しながらジオに尋ねた。



「……全員で足止めすれば一人ぐらいはあるいは……」


 水に浸かっていても建御雷たけみかづちの速度は落ちない。

 むしろその気になれば水面を跳ぶ。


 しゅんが自分に言い聞かせるように方針を述べた。

天狗あまつきつねが降ってくるまで粘って、天鳥船あまのとりふねが反応するかだけでも確認したい」

「なるほど」


 先ほどのボスは紫苑しおんの高火力スキルを緊急回避するように天鳥船あまのとりふねを使ってきた。凪枯ながれのスキルは少し時間を置いた隕石落下。この後少ししたら降って来る。

 そこで発動しないなら天鳥船あまのとりふねはクールタイムか何かしらの条件が必要という事になる。


「それなら影助えいすけは後衛と合流して撤退開始してもらった方がいいんじゃないか?

 多分後衛組はこっちの状況分かんないと思うから」

「じゃあシキに乗ってってもらうか。やられると困る紫苑しおん凪枯ながれも一緒でいい?」

「そういう事なら任されるけど……」



 空から高く響く風切り音の様な音が聞こえてきた。凪枯ながれ天狗あまつきつねである。

 ほぼ同時に拍手かしわでが鳴った。


「『けまくもかしこき 見守り給う神々に しこみしこみまおす』

 二神連携!」


【二神連携   布都御霊剣ふつのみたまのつるぎ


 MPの消耗に構わずしゅんようは全力である。天鳥船あまのとりふねの使用条件を見極めるなら他のスキルで躱されては困る。


「?」


 ケイは急に体が軽くなったように感じた。積極的に補助に入る。ボスの搭載しているAIが疑似視覚を使っているので、目隠しになるだけでも効果はある。

 赤裸裸せきらら、レイも付かず離れず攻撃を加えて注意を引いている。それを見て気づいた。


「……感電が治ってる?」


 轟音が近づいてくる頃、再び包囲が完成しようとしていた。

 しかし前衛の足元に電撃が走る。


建御雷神たけみかづちのかみ   立氷たちひ


「爆弾行きます!」

 ジオの複数投擲。ボスの設置スキル立氷たちひは発生前は罠扱い。忍者の範囲攻撃で潰せる。

 立氷たちひは爆発で一掃されたが、一瞬視界が奪われる。


建御雷神たけみかづちのかみ   建御雷たけみかづち


「っ!!」


 赤裸裸せきららが真正面からボスの攻撃を受け止めた。しかし視界の効かないところで高威力の攻撃を至近距離で受け止めたのである。体勢が崩れてボスに押されるように大きく後退し、味方との間に距離が開く。

 距離を詰めようとしゅん達が動き出した時である。


建御雷神たけみかづちのかみ   速日はやひ


「!」


 しゅんも持っている建御雷たけみかづちLv1スキル。いわゆる飛ぶ斬撃である。

 赤裸裸せきらら達の後を追いかけた面々が斬撃を受け止めるのに一瞬足が止まる。


建御雷神たけみかづちのかみ   建御雷たけみかづち


 ボスのスキル表示とほぼ同時に隕石が落下した。


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