表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/9

1話

カクヨムで書いてたやつです。

少し直したりしてありますが、大まかには一緒の話になります。

第1部勇者編のみです。

 俺さ。

 一昨日、仕事の帰りがけに女勇者拾ったんだわ。


 なにを言っているかわかんないって?


 そんなもん俺だって知らねぇよ。当事者の俺でさえぜんぜん分かんないんだから。

 当の本人が“自分は勇者だ”って言うんだから間違いないっしょ? 違うのかい?



 *†*:*†*




 一昨日は水曜日で、月末に当たっていたから珍しく二時間も残業しちゃったんだよな。


 うちの会社ってホワイトとは言い難いけど、ブラックって言うほどでもないのでオフホワイト企業って言われているんだわ。まぁ言っているのは俺だけだけど。

 就業は九時〜一八時で残業代もきっちり出るし有給休暇もちゃんとある。けれど給料は平均値以下ってレベル。仕事内容もそこそこレベルだから、まあこれは仕方ないね。


 最近じゃ、ある程度以上の給料を貰ってないと嫁どころか彼女だって出来ないって話みたいらしいな。御多分に漏れず俺にも嫁どころか彼女さえいないけどな。チクショウ。


 ついでに言えば会社の同僚以上の関係の男友だちの一人もいやしないし、ネットの向こう側にいるであろうネッ友とかいう誰かさんでさえ長続きしない関係しか築けない情けない男なんだよ、俺は。


 話は戻るけど、その日は家に帰ってから飯じゃ面倒だからって、会社の近くの居酒屋で同じく残業していた同期の池田、当然ながら嫁彼女なしと一杯引っ掛けながら飯にしたんだわ。

 そんときに何を食ったかまではさすがにもう忘れたよ。どうせワンコインのつまみと発泡酒と頭がガンガンする安焼酎だろうと思うけどな。



 なんだかんだで自宅のある最寄り駅に着いたのが二三時前後だったと思う。平日なのに結構呑んじゃってはっきりとは覚えてないんだけど。

 人の悪口と仕事の愚痴は悪酔いさせる酒の肴にはもってこいってこと。


 そんで、フラフラしながらも割増料金まで払ってタクシーなんて乗る余裕は俺にはないからさ、徒歩で二〇分の自宅まで駅から歩いていたんだわ。


 二三時も過ぎれば住宅街は静かなもんでね。たまにワンコに吠えられる程度だったんだけど、自宅まであと五分ぐらいのところで道路の真ん中で寝ている姉ちゃんがいるじゃない?

 むっちゃ犬に吠えられているしさ。なんか君子危うきに近寄らずって言うのが俺のモットーなんだけど、酔っていたせいかその寝ていた姉ちゃんに声かけてしまったんだわ。魔が差した、っていうやつな。


「ねえ、お嬢さん。大丈夫かい? こんなところで寝ていると危ないおっさんにつれてかれちゃうぜ?」


「う、ううん……はっ!! ここはどこだ?! 貴様何者だ?」


 何だこいつ? 昔はやったRPGの主人公みたいな格好のコスプレしてやがる、ってそのときは思ったな。


「ここ? 絵野田町二丁目だけど? で、俺は向井洋一、二六歳。しがないリーマン、独身彼女なしです。ついでに友達もいないですが、なにか?」


「えのだちょうにちょうめ? むかいよういち? 何だそれは? 聞いたことのない場所だ」


「いや。向井洋一は俺の名前だぞ。そんな地名あるわけねぇだろう? 酔っ払ってんのかい、お嬢ちゃん?」


 俺も結構酔っているし、もうそろそろ眠いしで、会話が適当になりかけてきていた。


「そう、そうか。済まない。わたしはエンデルバ王国の勇者エレンだ。魔王グソンを倒した際にやつの最期の反撃魔法によりこの異世界に飛ばされてしまったようだ……クソっ」


「? えんで……まあいいや。早くお嬢ちゃんも帰ったほうがいいよ。もう遅い時間だし、犬っころうるさいし」


 さっきまで吠えていたけど今はウーウー唸ってやがる。飼い主が家の中から怒鳴っていたからいう事聞いたんだな。あの雑魚犬、見た目より賢いみたいだ。へぇ~。


「……」

「それじゃ、俺はこれで。じゃね〜」


 手をフリフリして俺はその場を離れようとしたが、足が動かなかった。

 コスプレお嬢ちゃん……エレンだっけ、が俺の足をガッチリ掴んで離してくれない。


「なんだよ、離してくれよ~」

 さっきの口ぶりからしてエレンは酔っているのではなく、素で変なことを言っているようなので早々に俺はこいつから逃げたかった。


 チクショウ、やっぱり声なんてかけるんじゃなかったわ。


「た、頼みがあるのだが。向井殿、このわたしを助けていただけないだろうか? 勿論、何の報酬もなく助けろとはエンデルバの勇者の名にかけて言うつもりはない! わたしにできることなら何でも……夜伽であろうと、構わぬ」


 エレンはそう言うと両手を地につき頭を下げた。所謂土下座だ。


「イヤイヤイヤ!! 幾ら夜だからと言って天下の往来で土下座は止めて!? ね? もう分かったから、ほらっ、取り敢えず立って、ウチにおいで。もういいから! ね? ねっ?」


 雑魚犬の飼い主がさっきからチラチラとカーテンの隙間から覗いているんだよね。

 もうこれ以上此処には居られないわ。


 本当は嫌だけど、ものすっっっっごく嫌だけど、俺はエレンを自宅に連れて行くことにしたんさ。



ありがとうございました。

よかったら★評価、感想お願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ